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第120回 取り返せない夏の思い出のウラガワ(3)
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第120回 取り返せない夏の思い出のウラガワ(3)

2016-10-25 15:15

    オンナのウラガワ ~名器大作戦~
    第120回 取り返せない夏の思い出のウラガワ(3)


    ◆もくじ◆

    ・取り返せない夏の思い出のウラガワ(3)

    ・最近の志麻子さん
     TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中 
     10/28(金)「岩井志麻子のもんげ~恐いHALLOWEEN NIGHT!!」開催
     10/29(土)NHK文化センター(梅田)講座「志麻子流 これがオンナの生きる道」開催
     「岩井志麻子の千夜玩具物語」連載中
     カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
     MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

    ・著者プロフィール

    ===

    にじむ水彩画みたいな夏の思い出をつづる今月。
    「可愛すぎるからオーディションを落ちてしまう」と岩井さんにいきなり語りかけてきた女は、何度も落ちている「常連」だった。
    彼女はあるアイドルの熱烈なファンで……。

    バックナンバーはこちらから↓
    http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

    2014年11月「「そんなプロもありか」な人達のウラガワ​
    12月「「殺人者」たちから聞いたウラガワ
    2015年1月「「大人の冬休みの日記」なウラガワ
    2月「「大人の冬休みの日記のつづき」なウラガワ
    3月「ベトナム愛人との旧正月のウラガワ
    4月「春の喜怒哀楽のウラガワ
    5月「韓国人夫の失踪届けを出したら……のウラガワ

    6月「ホラー作家まわりの怪異のウラガワ
    7月「異国の夏休みのウラガワ
    8月「そろそろ怖い目に遭う予感のウラガワ
    9月「秋風に謎めく過去のウラガワ
    10月「人生の秋を生きる女達のウラガワ
    11月「「結婚」に振り回される女達のウラガワ
    12月「出版業界の仕打ちのウラガワ」ほか
    2016年1月「会えなかったけど気になる女たちのウラガワ
    2月「接点がないのに気になる人たちのウラガワ
    3月「嘘をつかずにいられない人たちのウラガワ
    4月「春のおかしなお便りの数々のウラガワ
    5月「距離感のおかしい人たちのウラガワ
    6月「台湾から連れてこられたある女性のウラガワ
    7月「大人の夏の観察日記のウラガワ
    8月「大人だからわかる怖い話のウラガワ
    9月「『志麻子のヤバモンGO』なウラガワ

    ※上記以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

    2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
    2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

    ====

     すでに初冬の気配も漂っているのに、私は夏の思い出にとらわれている。
     それはついこの間までの夏ではなく、あまりにも遠ざかってしまった、若かったり幼かったりした頃の夏だ。

     不思議と、冬になるとそんな夏の思い出に浸ることはなくなる。私にとって秋は、昔の夏を思い出す季節だ。いつからそうなったかは、わからないけれど。

     といって、そんな強烈な一生忘れられないといったものではなく、なんとなく引っかかっている、なぜか忘れられないといった曖昧な雰囲気のものばかりだ。

     今月はそんな、とりたてて夏休みの絵日記に書くようなことではない、にじむ水彩画みたいな夏の思い出を書いてきた。もうじき、冬が来る。そうすると私は、遠い夏から解放される。冬が待ち遠しくもあり、寂しくもある。

                        ※

    「私がオーディションを落ちてばかりなのは、私が可愛すぎるからなの。会場にいる子の中では、いつもいつも私が一番可愛いのにっ」

     あるタレント志望の女は、真正面から私に噛みつきそうな距離と勢いで話し始めた。瞳孔が開いている、とでもいえばいいのか、見開いた目には、危ない光とどうしようもない黒々とした陰りが映っている。

     ──もう、十年近く昔になるか。ひと夏だけレギュラーだった番組で、素人参加と銘打ったオーディションの審査員をさせてもらった。

     直接スタジオにやってきた人を、原則としてみんな招き入れる。一次の審査は非公開で密室のスタジオ内でやるため、ちょっとこれは危ないなと思わせる人も混ざっていた。テレビに出られるのは、そこで合格した人達だけだ。

     当時はそれ以外にも、ちょくちょく地方のミスコンテストやイベントのコンパニオン採用試験会場などにも招かれるようになっていた。

     そうなると「やたらとオーディションを受けにくる」「なんでも参加したがる」出たがりさんと顔見知りになったりもする。

     ナホちゃんと呼ばれていた彼女も、その一人だった。収録を終えて局の近くのカフェで休憩していたら、いきなり話しかけてきた……どころか、何のことわりもなくいきなり目の前に座ったのだ。食べ散らかした自分のケーキの皿と、ジュースのグラスを持って。

     そうしてずるずるべちゃべちゃと残りを汚くむさぼりながら、ぺらぺらと話しかけてきた……というより、一方的な独り言を聞かされてしまった。

     
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