オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第61回 ベトナム愛人との旧正月のウラガワ【1】
◆もくじ◆
・ベトナム愛人との旧正月のウラガワ【1】
・最近の志麻子さん
3/8 「ニコニコ書店会議」@積文館書店八女店にゲスト出演
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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前回のラスト、「冬休みの日記を書くため、常夏の国に向かう」――。
十三年も続く仲というベトナムの愛人Vに会うため、旅立った岩井さん。
映画にもなった『チャイ・コイ trai cay』のモデルでもある、愛人Vとの関係。
ベトナム行きの飛行機の中で映画のDVDを観ながら色々と考えたのは……。
「最近になってしみじみ思うのは、欲望や憎しみよりも「寂しさ」が、最も付け込まれやすく利用されやすく、あっさり相手の嘘を信じてしまうってことよ」
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2013年7月「名器手術のウラガワ」
8月「エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ」
9月「エロとホラーと風俗嬢のウラガワ」
10月「風俗店のパーティーで聞いたウラガワ」
11月「エロ話のつもりが怖い話なウラガワ」
12月「風俗店の決起集会のウラガワ」
2014年1月「ベトナムはホーチミンでのウラガワ」
2月「ベトナムの愛人のウラガワ」
3月「永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~」
4月「浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ」
5月「韓国の絶倫男とのウラガワ」
6月「ソウルの新愛人のウラガワ」
7月「風俗嬢の順位競争のウラガワ」
8月「夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ」
9月「「大人の夏休みの日記」なウラガワ」
10月「その道のプロな男たちのウラガワ」
11月「「そんなプロもありか」な人達のウラガワ」
12月「「殺人者」たちから聞いたウラガワ」
2015年1月「「大人の冬休みの日記」なウラガワ
2015年2月「「大人の冬休みの日記のつづき」なウラガワ」
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十三年も続いているベトナム愛人のVとは、そんなに愛があるのかと聞いてくる人はあまりいない。そんなに体が合うのか、と聞きたがる人の方が多い。
普通はこういう場合、愛があるのかと聞くもんだろっ。と怒っても仕方ない。私のキャラおよび言動、そして何よりも私自身がベトナム愛人とのことを恋愛ではなく色事としてしか書いてないからね。
最初から彼に妻子があるのはわかっていたし、私もただの一度も彼と結婚したいと思ったことはない。むしろ、彼に志麻子と正式に結婚して日本へ行きたい、なんていわれたら困ると思っていた。
やはり野に置け蓮華草ではないが、彼は常夏の異国にいてこそ香しい果実であり、たくましく頼もしくセクシーな男だ。無理に摘み取って東京に連れて来たら、たちまち香りは失せ色もあせてしぼむのは目に見えていた。
現実的に、まったく言葉の通じない国では就職も困難だし、友達も簡単にはできないだろう。一日中、私と抱き合っているわけにもいかない。といって私がホーチミンに引っ越すなんて、さらに難しい。たまに行く街だからこそ、ホーチミンは永遠の楽園なのだ。
彼もまた、いつまでも非日常の恋人である私を望んでいる。これまたたまに会うからこそ、私はいつまでも楽しく優しいエロい女なのだ。
もちろん、異国の配偶者を日本に呼びよせたり、自ら外国に根を下ろして現地に溶け込み、堅実に楽しく暮らしている方達も多い。そもそも彼らと私達は、求めるものが違う。
Vには地に足のついた生活を、彼の愛し愛される家族と彼の国で続けてほしかった。私が無理に楽園を壊すなんてできないし、彼の妻やその家族に憎まれるのも怖い。
正式な婚姻関係を結んで同居する関係性だけが、ファミリーではない。そもそも妻から彼を奪う気など、最初からなかった。私は妻とその息子と幸せに笑う愛人を、ここで初めてこの言葉を使うが、愛している。
そんな私は一月の半ば、ホーチミンに発った。気分を盛り上げるため、羽田空港のラウンジでポータブルプレイヤーを使い、私の原作がもとになっている映画『チャイ・コイ trai cay』のDVDを見た。……盛り上がるつもりが、なんだか逆に哀しくなった。