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第74回 異国の夏休みのウラガワ【2】
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第74回 異国の夏休みのウラガワ【2】

2015-07-15 20:15

    オンナのウラガワ ~名器大作戦~
    第74回 
    異国の夏休みのウラガワ【2】

    ◆もくじ◆

    異国の夏休みのウラガワ【2】

    ・最近の志麻子さん
     8/23(日)「フェスボルタ アジア」出演決定
     角川ホラー文庫『現代百物語 妄執』発売されました!
     7/26(日)「オメ★コボシ31」開催! 豪華ゲスト決定
     8/7(金)「怪談ウォッチ志麻さんのもんげー恐い怪談ナイト2015」開催
     8/16(日)ふかわりょうさん主催ライブイベントに出演
     カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
     MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

    ・著者プロフィール

    ===
    今月は「異国の夏休みのウラガワ」として、南国の地で岩井さんが見聞きした、謎の日本人にまつわるエピソードをお届け。

    性の多様さが際立つ国、タイ。岩井さんが知り合った「マリン」は、初めて会ったときは男性だった。ゴーゴーボーイとデートするためにタイに通い詰めていたという。
    そして数年後、バンコクで再開したマリンは女になっていた。

    バックナンバーはこちらから↓
    http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

    2014年11月「「そんなプロもありか」な人達のウラガワ
    12月「「殺人者」たちから聞いたウラガワ
    2015年1月「
    「大人の冬休みの日記」なウラガワ
    2月「「大人の冬休みの日記のつづき」なウラガワ
    3月「ベトナム愛人との旧正月のウラガワ
    4月「春の喜怒哀楽のウラガワ
    5月「韓国人夫の失踪届けを出したら……のウラガワ
    6月「ホラー作家まわりの怪異のウラガワ

    ※上記以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

    2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
    2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

    ====

     すっかり夏になった。こんな歳になっても、そして会社勤めはしていなくても、もうすぐ夏休みだ~!とウキウキしてしまう。

     しかし夏の思い出は、いつだってどこかに悲しみや寂しさもある。夏の解放感や陽気さを愛しながらも、冬よりも暗く深い色の空や夜をも恋しがる。

     もう十四年も続いている、ベトナム愛人のV。彼に会いに行くのは、いつだって夏休みの旅行だし、永遠に続くひと夏の恋だ。

     そんな今月はベトナムに限らず、いつでも夏の国々の思い出を書いてみようと思った。
     そして書きだしてみれば、こんなに夏と常夏の国が好きなのに、どういう訳か楽しい話ではなく怖い話ばかりを思いだしてしまう。

     それもまた夏という季節と、夏しかない国の魅力でもある。私にとっては。

                        ※

     私のベトナム愛人Vとのことを書いた小説『trai cay(チャイ・コイ)』は、もちろんホーチミンを舞台にしているのだけれど。

     映画化されたときは、タイのバンコクに舞台を変えられた。そんな変更、私の役を川島なお美さんが演じたことに比べればどうてことないかもしれない。

     国や、その文化に体制に歴史は違っても、南国の空気感はよく似ている。映画の中では、とにかく私の好きな夏は青空を夢のようにきらめかせ、夜を幻のように輝かせていた。

     そんなタイにも、ベトナムほどではないにしてもけっこう行っている。タイの話をするとき必ず出てくるものの一つに、「長い名前」があるのはお約束だ。

     バンコクと呼ぶのは外国人だけで、タイ人は「天使の都」を意味するクルンテープと呼ぶ。実はこれはかなり省略した呼び名で、正式な名前はタイ人ですらちゃんといえる人が珍しいというくらい、長い。

     それは人間もで、タイ人の正式な名前はこれまたものすごく長い。公的な書類などのそれは別にして、普段はニックネームで呼び合う。家でも学校でも職場でも。

     だからかなり長く付き合っていても、親しくしていても、お互いに本名を知らないというのもある。誰にも本名を呼ばれたことがない、というのは普通だ。

     そのニックネームも一生ものなのにかなり適当で、色白だからウサギとか、お父さんが酒飲みだからビールとか、そんな感じだ。

     そしてタイを語る上で欠かせないのは、性の多様さだろう。目がくらむような美しいニューハーフのショーも有名だが、性転換の手術は受けず、持って生まれたのとは違う性を生きる人達も多い。

     日本でいうところのニューハーフはレディーボーイと呼ばれるが、男装している女はトムボーイと呼ばれている。あと、体もいじらず服装も持って生まれた性のそのまんまで、ただ言葉遣いやしぐさだけが違う性のそれという人達もいる。

     日本人ではあるけれど、いろいろタイ式の生き方をしている知り合いがいた。

     本名は知らない。ニックネームはマリン。日本の、好きなパチンコのキャラクターから取ったといっていた。

     初めてマリンに会ったのは十年近く前で、そのときはマリンは男だった。

     小太りの色白の、どこにでもいるような普通のオジサンだった。見た目だけは。
     おそらく、私よりちょっとだけ年上のはずだ。当時は日本で、タクシーの運転手をしていた。結婚歴はなく、老親と暮らしていて、唯一の楽しみがタイだった。

     ある情報誌の編集者の紹介で会ったのだが、マリンは見た目は普通のオジサンでも、心は女、いや、乙女とか少女といっていいものだった。

     マリンは女を求めてタイに来ていたのではなく、ゴーゴーボーイとデートするために通い詰めていたのだ。そして当時から、体も女になりたいとはいっていた。

     
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