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【山口日昇と新・東京シュガーベイブ】会員No.2 浅香光代
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【山口日昇と新・東京シュガーベイブ】会員No.2 浅香光代

2013-06-10 00:16

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    「ラテンクオーター」でもやったし、女剣劇をアメリカで演ったのもアタシが最初

    浅香  今日はさ、スッピンもいいとこだけど、いいの?

    山口 先生、お写真撮らせていただきますけど、逆に大丈夫ですか?

    浅香  大丈夫!……あ、でも、いくらいい女で売ってるっていっても、眉毛ぐらい引かないといけないわね。(手鏡を見ながら)アタシ、あんまり普段化粧してないの。だいたいスッピンなんだよ。

    山口 さすがです!

    浅香  目張りはちょっと入れますけどね。みんなね、あんまり塗りすぎるから逆に老けて見えるんですよ。アタシはそう思うんですよ。

    山口 僕もそう思います!

    浅香  みんなダーッと厚手に塗ってるでしょ。アタシああいうの嫌いなんですよ。

    山口 僕も嫌いです! 先生、支度しながらで結構なので、始めてもいいですか?

    浅香  どうぞどうぞ。

    山口 先生、誕生日は2月20日ですよね。

    浅香  そう、アタシ2月20日生まれ。

    山口 アントニオ猪木、長嶋茂雄、志村けん、志賀直哉、石川啄木……と、いろんなジャンルの天才鬼才と同じ誕生日ですね。あ! それから左卜全もそうですね。♪やめてケレ、の。

    浅香  ああ、そう! 長嶋さんはね、ウチの師匠が明けても暮れても「長嶋、長嶋、3、3、3」って言ってたから、嫌ってほど焼きついてた。なんかあると「3」ってすぐ言っちゃうぐらいだったのよ。

    アタシね、NHKで頼まれてね、川上監督とアタシとふたりで野球の番組に出たことあんのよ。それでね、「浅香さん、ラジオでもやってくれませんか?」「テレビも準レギュラーでやってくれませんか?」って言われたの。

    山口 それは先生が野球の話をするんですか?

    浅香  野球の話ばっかり!

    山口 なんで先生が選ばれたんですか?

    浅香  派手だから!

    山口 あ、そういう理由!(笑)。

    浅香  それから野球のファンになってね。長嶋さんと赤坂の山王会館でちょうど会ったときは、アタシ思わず、「あ、3番だ! 長嶋さーん!」って言ったのよ、すれ違ったときに。「浅香光代です」って言ったら、「いやあ知ってますよ」って言われちゃってさあ。

    山口 赤坂といえば、先生は「ラテンクオーター」の舞台に出てたんですよね。

    浅香  やってましたよ!ずいぶん若いのによく知ってるねえ、「ラテンクオーター」なんて、アンタ。

    山口 力道山が刺された場所として知ってるだけですけどね。

    浅香  そうなの、「ラテンクオーター」で初めてアタシがやったの、女剣劇。あの時分はね、アタシずいぶん売れてましたからね、話があったのよ。

    『雪之丞』が演し物だから早替わりだけど、タチ役ばっかりだったのよ。で、ラテンクオーターには外人さんがたくさん来るでしょ。だから「また来年会いましょう」とかの英語ぐらいは知らないとマズいって言われてね。

    「アイ・ライク・カムバック・ネクスト・イヤー」かな? そんなひどい英語だったけど、それを覚えてね。で、あとはね、アタシがワッと客を指して「ユー!」って言うとさ、「オー、ナイス!」ってアタシに向かって客が言うわけ。それで「サンキュー!」って、それだけ言っとけばいいわけ。

    山口 グッドです!

    浅香  それでラストダンスの前にアタシが「ユー、OK?」って、それしか言えないからそう言うでしょ。そうすっと「ベリグー!」とかなんとか言われて、「サンキュー!」とかなんとか返してね。その程度でいいんですよ。なんでも「サンキュー!」って言ってりゃいいんだから。

    山口 気分は上向きな時代ですからね。

    浅香  あの時分だからね。それでアタシが客にネクタイピンを着けてあげるわけよ。それが話題になったの!

    山口 先生、情景がちょっと浮かびづらいんですけど、要するにカタコト以前の英語で、外人の客を手玉に取ってたということですね。

    浅香  うん、そう! それで、女剣劇でアメリカ行ったのもアタシが初めてですよ。3ヶ月周ったの。サンフランシスコでしょ、サクラメントでしょ、それから……ハワイからずっと周ったんですよ。

    そしたらね、アタシ最初ね、サクラメントの国際劇場ってとこでやるっていうから、日本の国際劇場を想像してたの。だからね、白い着物でさ、頭オカッパさんで、それこそお人形さんみたいな格好して行ったら、これがアメリカ? 汚いとこねーって。大きいことは大きいのよ、だだっ広くて。でも日本人がオーナーだったの。

    汚い格好してさ、くわえタバコでさ、「おう、ちょっと待ってて」なんて言ってね。ほら、やっぱりアメリカは綺麗だってイメージしかなかったから。それでね、ホントにアテにならないと思った。

    「チケット預かってあげるよ」って言うわけよ。「預かる」っていうのはさ、日本人は「売ってくれる」って意味に取るじゃない。そしたらさ、アンタ、ホントに預かってるだけだったのよ、これが!

    山口 ダハハ。1枚たりとも売ってくれてなかった?

    浅香  1枚も売ってないの。ビックリしてね。2日か3日前にアメリカに入ったわけですよ。で、これじゃマズいってなってさ、それこそ老人ホーム……向こうでは老人ホームとは言わないんだよ。なんか違う呼び方でさ、太陽のホームとか、そんなような名前のとこに行ったの。

    山口 太陽のホーム! 和洋折衷!

    浅香  それで500人とかいるから、「みなさんご招待します」って言ったら、まだみんな62〜63歳で元気だから来るのよ。そうすれば埋まるじゃない。

    あとはラジオで、それこそいまのテレビショッピングみたいに「30分以内に応募してくれれば半額にします」とか、そんなこと言って宣伝してね。ともかくひどい目に遭ったけど、お客は入れたの。『瞼の母』を持ってったんだけど、「すごいな」って反響をもらってね。

    山口 あ、今日もかけてた演目ですね。

    浅香  そう。アメリカには20人ぐらい連れてったのかな。

    山口 先生は神田の生まれですよね。

    浅香  そう、神田生まれの浅草育ち。

    山口 生粋の江戸っ子ですね。先日、毒蝮三太夫さんに会ったら、下町にも階級があって、神田なんかは下町のエリートだって言ってましたね。

    浅香  だから気が合うのよ。すぐいいカッコしちゃってね。アタシもほら、派手だからね。この商売してるし、お通夜じゃないんだから、地味なのはやめてちょうだいって性質だからね。

    山口 先生は14歳で座長を務めましたけど、文字通り波乱万丈で、6歳で芸者の置屋さんに……。

    浅香  そう、行ったの。それで9つで……。

    山口 女優さんを目指した……。

    浅香  目指すっていうか、いまの時代にもあるけど、ウチの父親が株屋で大失敗しちゃってね。「自殺する」って騒ぎになっちゃったのよ。いい時期は人力の二輪で父親を引いてたぐらい儲かってたみたいなんだけどねえ。

    山口 ちなみにお父さんはいまでいうと、どのくらいの借金を背負ったんですか?

    浅香  自殺しようってんだから、相当でしょ。お客さんのお金をみんなパーにしちゃったんでしょうね。だから申し訳なくて。アタシは子どもの時分だから、詳しくはわかりませんけどね。

    山口 (小声で)僕もパーにしてしまったんですよねぇ。申し訳ないなぁ。

    浅香  それでね、父親が「生きてらんない」ってなったけど、ウチの母親は「首まで持ってかれないから」って言うんですよ。だから女中にまでなって働いたわけですよ……いま女中って言葉はないけどね。

    母親は福島の福島座っていう劇場のお嬢さんだったのね。そこで女学校出たっていうのはふたりしかいなくて、そのうちのひとりなの。

    山口 いわゆるインテリですね。

    浅香  そう、インテリもいいとこ。英語もしゃべれるの。その母親がね、「人生っていうものは無常の風が吹けば、お金を出すからもう少し生きたいって言っても生きられない。だから無常が来るまで頑張りましょう。子供たちがかわいそうだ」と説得するわけですよ。アタシは隣の部屋で聞いてましたよ。

    「じゃあ子供たちを芸者屋に養女にやりましょう。それでこの子たちにはきっといいことがある。頑張りましょう」とね。ウチの兄は犬を見ても怖がるくらいなんだけど、13歳のときに競馬の騎手の、遠い親戚の赤石孔っていう……これ有名なんですよ、初めてヨーロッパで騎手になった人で。

    母親がそこに連れてって弟子入りさせてね。姉は柳橋の芸者に養女じゃないけど、そういうようなことで配られちゃったの。

    山口 配られちゃった、というのもすごい表現ですね。

    浅香  で、アタシは大塚の芸者置き屋に置かれてね。学校は行ってたけど、アタシを芸者にするったって、まだ6つですからね。どうにもなんないわけでしょ。

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    最終更新日:2015-06-24 12:10
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