第12回 あなたは殺気を放つ男に颯爽と「大便どうぞ」と言えるか?
女性の方はご存知でないかもしれぬが男子トイレには汎用性に富んだ通常の便器に加えて小便に特化した便器が備えられている。しかし私は大便に特化した便器も必要なのではないかと思う。
過日。出勤時。熱中症対策で水をガブ飲みした私は駅の公衆トイレへ駆け込んだ。列の最後尾に並び激しい尿意に耐えていると天恵、私の番。幸福中の不幸で、空いたのは小便器ではなく汎用性の高いタイプであった。躊躇した。というのも私のすぐ後ろに並んでいたのが、背中の肌に直接ファンシーなイラスト描いているような、広域で暴力を振るう団体に所属しているような男性。そんな男が大便を我慢しているとき特有の脂汗を流していたからだ。
今思えば男に順番を譲るのが正解であったろう。だがそれは結果論だ。尋常でない殺気を放つ堅気でない男に話しかけることなど何人にもできない。それに、万が一、彼が大便でなかったら最悪だ。たかだか小便を我慢するだけであれだけの殺気を公衆便所内に放出する人物に誤って「大便どうぞ」と言ったら…考えるだけで死ぬ。