第21回 カーリー・グレイシー
暗い階段を降りると、そこには別の世界が広がっていた。本当は思っていたのと違うだけで、そこは初めから地下ではなく1階だったのだ。真っ暗だと思っていたのも僕の思い込みで、初めからそこにはカリフォルニアの太陽が燦々と注ぎ込んでいた。
思い込みというものは本当に景色を変えることがある。同じ景色でもその時の思い込んだ心情によって本当に色が変わる。僕はそのことをこの時に知った。燦々と太陽が注ぎ込む道場で、カーリーは光の中に立っているようだった。僕にはそう見えた気がした。
目が合った時にカーリーがくれた優しい笑顔を今でも忘れない。それまでの真っ暗な何かが、僕の心を覆った何かがその瞬間に風を受けて流れ始めた。カーリー・グレイシーの笑顔が僕を安心させてくれたのだ。一気に僕の心を覆った真っ暗な闇が、デンバーで一瞬にしてやって来て僕を覆いつくした真っ暗な何か……それが一気に動き始