第56回 あなたの美しい善意は悪魔を憐れむ歌に覆い隠される
過日。隠れ家的かつカフェ感覚でお洒落な店構えと無国籍創作料理で最近人気の居酒屋に町内会的おっさんたちと繰り出した。私を含め5人。私を除く4人が喫煙者、全員加齢臭。さすがに人気店。満席。日本人らしくルールに乗っ取り、粛々と名簿に代表者と人数を記し、店頭に並ぶ私たち。しばらくして私たちの後ろに、隠れ家的な雰囲気を求めるカップルが並んだ。もちろん私たちと同様に粛々と記帳。すると「お客様もーしわけありません」ドラマHOTELの高嶋政伸の物真似をしながら接近してきた店員が、店内には2名席しか空いていない、経営的な視点から後から来たカップルを先に通したいがよろしいか?という意味のことをなぜか大変自信に満ちた口ぶりで私たちに告げた。私たちは快諾した。私たちに感謝する素振りもなく店内へ消えるカップル。それでいい。私たちの見返りを求めない善意が少子化打開に繋がったのだから。素晴らしい。