• このエントリーをはてなブックマークに追加
なぜアカデミー賞受賞映画、超大作映画を作ったVFXスタジオが倒産してしまうのか?
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

なぜアカデミー賞受賞映画、超大作映画を作ったVFXスタジオが倒産してしまうのか?

2013-03-11 21:03
    なぜアカデミー賞受賞映画、超大作映画を作ったVFXスタジオが倒産してしまうのか?


    先日、カリフォルニアのVFXスタジオが危機的状況に陥っていて、アーティスト達が悲鳴をあげているという話題をお伝えしました。映画がリリースされる度に、報じられる数億、数十億という巨額の製作費。にもかかわらず、どうしてVFXスタジオが倒産するのでしょう?

    海外の税助成がカリフォルニアの中堅スタジオを圧迫していることは理解出来ましたが、何故、大手ですら倒産してしまうのでしょうか? そこで今回は、何故、巨額の製作費が投じられる超大作映画のVFXを担当するスタジオでさえ倒産してしまうのか、というコラムがHollywood Reporterに掲載されていたので、ご紹介します。

    では、以下から詳細をどうぞ。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

      
    ---------------------------------------

    『トランスフォーマー』のロボットや『ライフ・オブ・パイ』のトラ、もはや、ボックスオフィスは映画スターやディレクターではなくVFXが左右する時代になりました。超大作映画は、世界中で活躍するVFXアーティスト達の、時に週70時間に及ぶ労働に支えられており、今や無くてはならない存在です。にもかかわらず、なぜVFSスタジオが倒産に陥ったり、オスカー会場付近でアーティスト達がデモ行進をして、業界が直面している悲惨な状況を訴えなくてはならないのでしょう?

    VFXの予算は映画制作の中でも大部分を占めます。その為、予算削減を狙う映画会社は、より低い価格での仕事をスタジオに求めます。しかし、スタジオはインフラストラクチャーに巨額の費用を投じなくてはなりません。VFXの入札が低価格になれば、インフラストラクチャーを維持するだけで赤字になってしまうこともあるのです。また、FVX会社の入札は固定価格。しかし、どんなに日数がかかろうと、追加の指示が入ろうと、監督が満足するまでつきあわなければなりません。

    監督は予算の事など考えずに複数のアイディアを出しては変更を言いつけ、頻繁に考えを変えます。そのような事が原因で、VFX会社はしばしば仕事をしているにも関わらず、赤字を出してしまったり、挙げ句、倒産してしまうこともあるのです。『アバター』に抜かれるまでは興行成績1位だった『タイタニック』は、製作費が約20億ドルあったにも関わらず、VFXを担当したデジタルドメインは赤字を出しています。

    加え、各地で実施されている税助成もVFX会社を荒廃させる要因です。スタジオは35パーセント、またはそれ以上のリベートを得るために、対象国にスタジオをこぞって作りました。その費用はスタジオの設立だけでなく、引っ越しを余儀なくされたアーティストの移住費も負担することになるので膨大になります。そして、これは金額だけの問題ではありません。今日、VFX業界ではアーティストが仕事を求め、6~9ヶ月毎に国をまたいで引っ越しすることが普通となっており、生活に多大なる影響を与えているのです。

    近年、幾つかのVFX会社が倒産や閉鎖に追い込まれました。スタジオは、このビジネスが如何に酷い状況かを良く知っています。ディズニーはブエナビスタビジュアルエフェクツ、イメージムーバーズ、ドリームクエストイメージーズ、シークレットラボ、ディズニーフィーチャーアニメーションインオーランド等、幾つかのVFXスタジオを買収、開設、そして閉鎖してきました。このような前例を見ると、昨年、ディズニーに買収されたばかりのインダストリアル ライト&マジックも、将来的にはどうなるのか分かりません。

    今日、映画は益々デジタルの世界で作られるようになりました。にもかかわらず、何故、VFXのスーパーバイザーがメインクレジットされないのでしょうか? 何故、『ライフ・オブ・パイ』のディレクターは、オスカースピーチで彼のエージェントや弁護士、そして台北に感謝の言葉を述べておきながら、VFXスーパーバイザーのビル・ウェストンホファー氏や、先日倒産したリズム&ヒューズのことには触れなかったのでしょうか?彼らは、映画の主要キャラクターであるトラや鯨、空や海を作り出し、受賞に大きく貢献したのです。そして、何故、クラウディオ・ミランダ氏は、シネマトグラフィー賞を受賞した時に、彼のイメージを映像化してくれたVFXアーティストについて触れなかったのでしょうか? また、何故、クエンティン・タランティーノ監督のスピーチは時間が長くとられていたのに、VFXチームのスピーチは途中で切られてしまったのでしょうか?

    VFX業界に属するアーティストは、自身を高く評価していないと言えます。彼らには、同業組合もユニオンもありません。代表する声もありません。私は、VFXという金の卵を産むガチョウをむざむざと殺したくありません。この業界は、仕事への正当なる対価を得るべきです。しかし、どうすればこの悪循環を断ち切れるのかは分からないのです。


    ---------------------------------------


    Why VFX Houses Lose Money on Big Movies (Guest Column) [via The Hollywood Reporter
    Youtube](画像)

    (中川真知子)

    関連記事

    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2013/03/why_are_vfx_studios_dieing.html
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。