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人生は残機ゼロ 第2回:ゲームはまさに自分を写す鏡だった『スペースパニック』
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人生は残機ゼロ 第2回:ゲームはまさに自分を写す鏡だった『スペースパニック』

2012-12-16 23:31
    人生残機はゼロ;スペースパニック


    あの頃は穴ばかり掘っていた気のする70年代末~80年代。

    ナントカ盛りの芽生えとか関係なくて、穴を掘っては埋めるゲームに打ち込んでました。まータマを発射したり穴をブチ開けたり、当時のゲームは男の子のハートをつかんだわけですね

    掘るゲームの日本代表といったら「ディグダグ」。地底に潜って掘り進み、モンスターを全滅させる超有名アクションです。敵に直接モリを打ち込んでポンプで破裂させてもいいけど(考えるとスプラッタ)もらえる点数がしょぼい。ぞろぞろ敵を誘導して、岩でまとめて潰して高得点を叩きだす戦略性が奥深いゲームでした。
     

     


    思い出に残ってるのが、自分が遊んだことより他人のプレイ。ウチの高校は原則的にゲーセン禁止でしたが、修学旅行の時だけは教師も見て見ぬフリ。九州の阿蘇山やらグラバー亭に行ったのは旅のしおり以上の記憶がなくて、宿泊した旅館でプレイしたゲーム、楽しかったなあ......しか覚えてない勢いでゲームコーナーに入り浸ってましたよ。

    そこで、ふだんゲームをやってるのを見たことない同級生が「ディグダグ」をやってた。コインも積んでないのに、何時間もプレイしっぱなし。スパってみると(後ろからスパイすること)やたらウマイ。5~6匹を1度にドン! っ岩石落としも連続で成功させてる。

    自分の計画性の無さに、生まれて初めて気づいたのがそのとき。目の前にいるプーカを破裂させたい、サッサと潰してしまおう。そんなズボラをせずに、ゲーム展開を組み立てる計算高さが足りないって思い知らされましたよ。その人、学生時代からバイトだのナンパだのよろしくやってるオトナだったね...(遠い目で)



    よりシンプルな思考の筆者には『平安京エイリアン』がお気に入り。プレイヤーは平安京を守る検非違使(平安時代の警官)になり、穴を掘ってエイリアンをハメて埋めてしまう。どこから突っ込んだらいいか分かんない設定ですが、外宇宙からやって来た異星人のインベーダーが横一列に並んで撃たれてた70年代末のゲームですから。

    東大生が作ったとウワサのこのゲーム(「ゲームセンターあらし」でもネタにされてました)、反射神経よりもアタマを使わせるのが売り。穴を掘るには何回かボタンを押さなきゃいけないので、エイリアンの動きを先読みして、敵が通りそうなルートに罠を仕掛けておく。

    それっぽいテクニックも次々と開発されました。自機の前後に穴を掘って待ち受けるのが「隠居掘り」、四方向に穴を掘っておく「秋葉掘り」、エイリアンが落ちた穴を埋めるのが間に合わない時にその手前に穴を掘る「伊藤掘り」などなど。

    でも、しょせん70年代のコンピュータ。ゲーム基板は生みの親ほど賢くなくて、すぐにパターンが見切れてしまう。じきにアドリブで乗り切れるようになり、100円で何時間も遊べるお小遣いに優しいゲームの出来上がり。ゲーセンからフェードアウトするのもわりと早かったですね。



    さて本題(遅い)。穴を掘る系で最もエキサイティングだったと信じてるのが、今回タイトルにした『スペースパニック』。その見かけは、まんまタテにした『平安京エイリアン』。穴を掘ってエイリアンを落として埋めるのも同じです。上から見下ろす画面だった平安京に対して、こちらはビル(?)を横から見た断面図。各フロアをつなぐ階段で上へ下へとエイリアンから逃げまわる。

    これが上下の概念が加わったことで、平安京とはひと味違った面白さ。タテ一直線になるよう穴を掘っておいて、エイリアンを2~3階分イッキに突き落とせばボーナスも入り、下にいるエイリアンの上に落とせば巻き添えにできる。敵をより効率よく片付け、安全に1匹ずつ処理すればいいのにボーナス狙いで自滅したり、遊び方というか死に方の幅が広がってドM心に火がついたもんです。

    このゲーム、少なくとも筆者の行けた範囲では、めったに見かけないレア物でした。やっと出会えたデパートの屋上にあった1台を、近所に立ち寄ったときは必ずプレイ。

    クラスの中でも遊んでるのが自分1人、誰とも面白さを分かち合えない...そんなひねくれた優越感も良かった。まだピコピコのPSG音源もなく、神経をかきむしるノイジーな電子音が宇宙にひとりぼっち感を強くする。酸素の残りもどんどん減り、もたついてるとタイムアップで窒息死。この絶望は、俺1人だけのもんだー!

    ネットで情報交換して、みんなで一緒に狩りをしたり趣向を凝らした村を行き来できるオンラインもメチャメチャ楽しい。でも、世界から自分だけ切り離された孤独のゲーマーだった体験は、あのひと気のない屋上でしか味わえないものだったんでしょうね。


    YouTube[ ディグダグ,平安京エイリアンスペースパニック

    (多根清史)

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2012/12/tane_ac_03.html
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