『スーパーマン』=赤パンなんだよぉぉぉぉ!!
もうそろそろクリスマスなので、現実世界で巻き起こっている様々な争いはお休みするかと(勝手に)思いますが...ボクらのヒーロー『スーパーマン』のパンツを巡る戦いは、ホリデイ・シーズンとて休息はありません!
この記者、師走の忙しさでアタマがオカシくなったか!? とは思うなかれ。デイリー・プラネット...ではなくFox Newsによりますと、コミック・ブックからアニメ、実写版映画などなど、長年さまざまなメディアにおいて、ブルーの全身タイツの外側に履いていたあの伝統的な真っ赤なパンツは、次回の実写版映画『マン・オブ・スティール』と最新コミックでは、もうお目にかかれない模様です。
ホラ、これは『スーパーマン』で育ったワタシ達にとって、由々しき事態ではありませんか!? 以下でもっと掘り下げてみましょう。あ、パンツは上げたままでどうぞ。
ここで一旦、時計の針を1933年に戻してみましょう。『スーパーマン』の共同制作者であるジョー・シーゲルさんとジェリー・シャスターさんは、『スーパーマン』に赤パンをタイツの外に履かせるようなキャラクター・デザインに決定しました。
どうして多くのスーパーヒーローたちが同じような外履きパンツ姿を真似してきたのか、そしてナンでわざわざそんな選択肢をチョイスしたのか...? それは、30年代にそのスタイルがホットだったからではないんです。『スーパーマン』が外にブリーフを履く姿は、当時だってかなり奇妙であったハズなんです(モチロン常識的に今でも)。
スーパーヒーローについて業界で20年の間本を執筆し続けているグラント・モリソンさんは、カレの代表的な著作の中でこう綴っています。
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タイツの上にアンダーパンツを履かせる描き方は、1938年には通常以上のオトコらしい強さと持久力を表していました。マントや見世物師のようなブーツ、ベルトに身体ピッタリのスパンデックスは(たとえビックリ人間的なショウであったとしても)サーカスで使われた衣装で、『スーパーマン』の冒険においてパフォーマンスを強調して演出する助けになっていたんです。橋を持ち上げ、素手で機関車を止め、ゾウとレスリングをするなど、カーニヴァルの衣装のようなスパンデックスが、超絶的に屈強な怪力男を演出するのに一役買っていました。
シャスター氏は最初のスーパーヒーローを当時の文化で考えられる、強い男の理想となるような人物像と同じように着付けたのです。無意識の内に、尻絡みのジョークの的になるような位置づけにしてしまいましたが...。
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ということで、シャスターさんが初めてのスーパーヒーローを生み出し、アウトフィットをデザインした時、全くゼロの状態から始めたワケですが...カレの中で最強の男というイメージに一番近かったのが、サーカスの怪力男だったというコトなんです。
今となっては、当時のスタイルをキープしているサーカスや怪力男などはもういないので、カレらの格好を知る人は少なくなってきており、何故スーパーヒーローが外パンなのかの理由を知らない人も多くなっています。
では、もうタイツの外側にパンツを履かなくても良い頃合いでしょうか? いや、そんな事はありません。答えはNO! でしょう。だってこれまで80年という長~い期間、コミックブックやポップ・カルチャーはサーカスの怪力男がやっていたように、スーパーヒーローたちは外パンだというイメージでずーっとやって来たのです。
アニメ、テレビ実写版、映画、オモチャ、フィギュア、テレビゲームなどなどのマーケットも、無限に作られてきたであろう商品だって、この80年間あの赤パンを外に履いたモノを世に送り出してきました。『スーパーマン』はアイコンであり、あの衣装こそが『スーパーマン』なのです。
例えば、現在DCコミックスで連載中の『The New 52』というシリーズに登場する新『スーパーマン』がいます。でも今の時代、「あぁ、新しい『スーパーマン』は外パンしてないから、もうサーカスの怪力男には見えないな......こんなの価値がない!」と思うのは、世の中のホンのわずかだと思われス。しかし一方で「おぉ、『スーパーマン』のピチピチ・スーツが外パンしてないから、大人っぽいし男らしいじゃん!」と考える人も実は一握りなのではないでしょうか? 「赤パン無しじゃ、ナンかヘンじゃね?」というのが、多くの人にとっての自然な感想だと思うのです。
80年間、そういうデザインだという前提で『スーパーマン』に親しんできたワタシたちの目には、赤パンがないのはヘンに写ります。あの赤パンは『スーパーマン』の身体の一部なんですよね。DCが赤パンを廃止したとしても、オモチャやゲームなどで商売する側からしたら、『スーパーマン』を『スーパーマン』たらしめるあの赤パンがない商品を作って、ドレほど売れるのでしょうか?
そしてもう一つ、外パンを穿くのに重要な理由があります。サーカスの怪力男は、あのスタイルを勝手気ままに始めたのではありません。怪力を見せるのだから、筋肉を見せるのは当然なのですが...タイツというのは筋肉の輪郭を強調して見せると同時に、(もし外パンがなければ)下半身のモッコリ部分も強調して見せてしまうコトになってしまいます。なので、パフォーマーにとってハレンチなコトにならないよう、タイツの外側にパンツを履くのは必然で必要なコトだったのです。
外パンを履かないからと言って、アーティスト側が意図的にイチモツ部分を描写するコトもないのですが、だからって「スーパーヒーローは隠す必要なんてないさ!」なんてコトにもなりません。
ではココで検証のお時間。従来の『スーパーマン』画像をご覧いただきましょう。
次に、『New 52 スーパーマン』をご覧ください。
どういうワケか、いつも赤くなっているべき場所が赤くないと、ついついソコに気がいってしまいませんか? 特に気にしたいワケでもないのに、強調を止めたトコロが逆に強調されてしまうという、逆転現象が起こってしまいます。何かしら脳科学的な理由なのでしょうけれども...。
マンガやイラストなら、描き方でまだどうにでもなるでしょう。しかし、実写版ともなると誤魔化しが効きません。では『スーパーマン リターンズ』の、ブランドン・ラウスさんを見てみましょう。
では、2013年公開予定の『Man of Steel』主役、ヘンリー・カヴィルさんは?
写真うつり(+ ご本人のサイズ)もあるかもしれませんが...ラウス版では、デッカいパンツで股間の強調が目立ちませんよね。しかしながら、カヴィル版のスーツはけっこうスーパーパワーに満ち溢れている感じがします。本来なら赤は目立つ色であるモノの、イチモツの大きさ云々ではなく『スーパーマン』のデザインとして、赤パンは自然なモノだというのがお判りかと思います。
ついでなので、フォトショップでカヴィル版に赤パン履かせてみました。簡単なモノで恐縮ですが比較してみてください。
いかがでしょうか? とまぁ、これらの画像を比較検討してみた限り、大昔に活躍したサーカスの怪力男たちは衣装の選び方に間違いがなかったと言っても良いでしょう。『スーパーマン』をデザインしたシーゲルさんとシャスターさんもまた、間違っていなかった、そしてスーパーヒーローたちに外パンというスタイルを定着させた功績も大きいと思われます。
現在DCコミックは80年の伝統を変えようとしています。怪力男にインスパイアーされた歴史あるコスチュームは、世界中で老若男女問わず親しまれてきた『スーパーマン』のデザインを...です。(常識的な)デカパンのマヌケさは無くなったモノの、反対にそのおかげで世界中の人達がこれまで考えなくても良かった『スーパーマン』のスーパーチンを気にするようになる可能性があるのです。
新しいのは悪いコトではありませんが、変えてはイケないラインというのはやっぱり在るはずです。しかし、ソレが赤パンだったというのは微妙過ぎる大発見かもしれません。
読者の皆さんは、赤パン有りと無し、ドチラのデザインがお好きでしょうか? 最後に、外履きブリーフ偉大なり! と叫んで締めたいと思います。
The War on Superman's Underpants[io9]
(岡本玄介)
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