間もなく公開される、『X-MEN』シリーズの最新作『ウルヴァリン:SAMURAI』。今回は、主人公のウルヴァリンと熾烈な戦いを繰り広げる矢志田信玄役を演じた、ハリウッドで大活躍する日本屈指の俳優、真田広之さんにインタビューして参りました。
本作のアクションシーンができるまで、そして、ハリウッドと日本映画の制作現場の違いなど、貴重なお話の数々は以下より。
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――『ウルヴァリン:SAMURAI』でのアクションシーンはどのように作られたのでしょうか?
真田広之(以下、真田):今回は振付の段階から参加しています。スタント・コーディネーター(アクションの振付師)達は日本的な動きも勉強しているんですが、日本人から見ると「ちょっと違うな」というところもあったりするんですよね。彼らはその辺を理解した上で、僕を尊重してくれて、意見を聞いてくれます。
そして、シーンやキャラクターに応じたアクションを一緒に作って、それを監督に見せ、そこに監督が「長すぎる」とか「もうちょっとテンポ良く」とか、具体的な意見を言い、完成した振りをヒュー(ジャックマン)に覚えてもらって......といった形で関わりました。
――真田さんが直接出ていないシーンのアクションにも関わったのでしょうか?
真田:最後のシーンは関わっていませんが、あれもスタントチームの動きにCGを合わせるといったものだったので、構え方や歩幅みたいなものは、スタントマンを集めて1日かけてワークショップをやりましたね。
正座からの立ち上がり方、帯を締めて刀を差した時の角度、歩幅、背筋の伸ばし方、目の配り方などを教えるワークショップを受けてもらってから、それぞれ現場でやってもらいました。ですから、全てのシーンに立ち会えたわけでは無くて、目の届かなかったところもありますね。
――アクションシーン以外の部分でもアドバイスはされたのでしょうか?
真田:脚本の段階で気になったところは全て監督に申し上げて、直してもらいました。ただ、原作になっているアメリカン・コミックのテイストがあり、映画シリーズのテイストもあって、どこにリアリティーを設定しているのか? という点もあるので、全てに対して「ありえない」と言ってしまうと成立しないわけです。
アメコミのエッセンスと、現代の日本と、今の日本人にとってもなかなか見ないような原風景のようなものをミックスして、「楽しめる日本像を作りたい」という監督の意向もあったので、それに応じたアレンジをしました。そういった中で、ここはOK、でもこれはムリ! と全否定することもありましたね(笑)。
――確かにフランク・ミラーが描いた原作はなかなか凄いですからね。
真田:今回は信玄のキャラクターがかなり原作とは違いますよね。名前は残っていますが、別人と言っていいと思います。僕はその辺も楽しみつつ芝居をしました。
ある意味、原作を知ってて映画を見る人にとっては良いサプライズもあり、オリジナルのキャラクターもあったりと、色々と入り交じっているので、その辺を楽しんでいただければという思いで演じましたね。
――ご自身の出ていないアクションシーンで凄いと感じたシーンはありますか?
真田:現場でちらちら覗いてたんですが、新幹線の上でのアクションはこのシリーズならでは、そして日本人には発想できないなというものだったので、面白かったです(笑)。
――X-MENもびっくりのジャンプをするヤクザとか......
真田:まさにショータイム! という感じでしたね。
――本作では沢山アドバイスをされたとのことですが、今後、役者以外の立場で映画に関わることも考えているのでしょうか?
真田:日本だけでやっていた時というのは、色んな方の勧めもあり、映画を撮るべきだと言われたりもして、そのための勉強もしていたんです。でも外国でやりだして、色んなシステム、色んな感性の監督と仕事をして、まだまだだなと思ったんです。
自分は俳優として色々吸収して、いずれ、これは自分じゃないと撮れないなという作品に出会えれば、その時がタイミングなんだと思います。これを撮るなら、あの人を起用して、このキャスト、このスタント・コーディネーターで......といった事を考えるのが意外と好きなんですよね。なので、監督というよりもプロデューサーのような立場が、もしかしたら自分には向いているんじゃないのかなと感じています。
現場でも、今回のようにアドバイスしたり、アレンジをしたりする事こそ楽しんでるよな、と自分を客観的に見て思うんです。醍醐味もあるし、それが上手くいった時に、自分が芝居する以上に喜びがあったりするので、毎回毎回、裏方精神が強すぎるのかもしれません。
でも、そういうポジションでいたほうが役者として楽なんです。気になることを無視して自分のパートだけをやって、お金をもらって帰ればいいんだ、みたいなのは無理なんですよ。だから、「やりたがり」ともよく言われるんですが、むしろそっちのほうが楽なんです。それで作品がより良くなって、間接的に自分のところに返ってくる......そんなスタンスが自分には向いている気がします。
そういう意味では、少年野球ではキャッチャーだったし、サッカーではキーパーだし、バレーボールではセッターだし、バンドではベースだし、結局「俺ってそういうポジションなんだな」って最近わかってきたんです(笑)。花型ピッチャーやホームランバッターにはなれない。バントヒットか犠牲フライで走者を帰すことに燃えるタイプなのかもしれません。
――ハリウッドと日本の映画の製作現場は何が一番大きく違うと感じますか?
真田:予算以外で?(笑)
――そうですね、予算以外で(笑)。
真田:同じ部分もあるんですけど、撮り方としては、ふんだんにカメラを回しますよね。スタッフもキャストもユニオン(組合)がしっかりしてるので、権利として守られているところはあるんですが、「拘束時間はきっちり働いてもらうよ」ということでもあって、厳しく過酷な日々が待っているということになります。
ワンシーンを取る場合でも、日本のようにカットごとに撮ってハイ終わり、というものではなく、マスターショット(基本となる位置から撮影されたショット)、ミドル、それぞれのアップ、そしてまたアングルを変えて、マスターからミドル......という風に進めていくので、一日中、台本何ページあろうとも、最初から最後まで通しで撮影するんです。
それを一人のアップのシーンのために全員が何十回もやって疲れきった頃に、今度は自分のアップが来るなんていうこともあるので、その時にちゃんと心身共に維持できていないと通用しません。ですから、日本の現場よりタフですね。スタッフもキャストも、生き残るための肉体と精神力を維持していないといけないわけです。
その分、ふんだんに素材があるので、日本のように監督がやったりするのではなく、編集者が独立した形で編集をします。編集者の権利もしっかりあって、アーティストとして認められているんです。分業化されていますから、いくらでも料理できるように素材はふんだんに撮るわけですね。大変な反面、いいものができれば自分にもいいことですから、厳しさと喜びが同居していると思います。
日本は日本のカット撮りの良さ......テストを繰り返して、「本番一発勝負!」といった緊張感、昔ながらの良さもあるので、ハリウッドと日本のどちらがいいとは言えないですね。日本でも、先ほど話したような海外方式の素材の集め方をする監督も増えてきていますし、海外で実績を積んで、日本に戻って撮っている監督やカメラマンが今は多いです。なので、少しずつクロスオーバーしていくんじゃないかと感じています。
――最近は、本作のようなアメコミ原作のヒーローものがたくさん作られ、成功を収めていますが、今後アメコミに限らず、演じてみたい思うヒーローはいますか?
真田:ヒーローを演じたいか? と言われると、そうでもないんですよね。やっぱり、4番バッターは狙っていないというのがあるので(笑)。
でも日本にも色んなヒーローがいますし、今回のウルヴァリンもそうですが、単純なスーパーヒーローというよりは、人間が出るお芝居としての醍醐味が同居しているものであれば、なんでもやってみたいです。
ただやはり、どこかで正義のヒーローよりも曲者のほうがやりがいがあるといった思いがあります。台詞も正論を言ってるだけではつまんないし、それを照れずにやれる歳ではないし......みたいな感じですね(笑)。
真田さんがいなければ『ウルヴァリン:SAMURAI』は完成しなかった、と言っても過言ではないほど、作品内のアクションや日本描写の制作に深く関わっていたようですね。確かに本作では、アメコミ原作や映画シリーズ独特の雰囲気を壊さない絶妙なレベルで、ウルヴァリンが出会う不思議な世界としての「日本」が描かれていました。
そして、なんといっても驚いたのは、スクリーン上でも直接お会いしても(危うく会った瞬間に卒倒しかけたくらいに)超かっこいい真田さんが、自分は脇役や裏方に向いていると語ったこと。個人的には、俳優としてアクション山盛りで活躍してほしいとも思いますが、真田さんがプロデュースする作品も見てみたい! 今後の活躍がますます楽しみです。
『ウルヴァリン:SAMURAI』は9月13日(金)TOHOシネマズ日劇他全国ロードショー。3D/2D字幕版・日本語吹き替え版(一部地域を除く)同時公開。
配給:20世紀フォックス映画
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[『ウルヴァリン:SAMURAI』公式サイト]
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(傭兵ペンギン)
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