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【科学的考察】なぜ正義のヒーローの痛みより、悪者が受ける痛みに共感してしまうのか?
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【科学的考察】なぜ正義のヒーローの痛みより、悪者が受ける痛みに共感してしまうのか?

2013-10-24 23:30
    脳科学 痛み 共感


    いつも観ているテレビや映画に登場する悪役というのは、極悪非道な行いの結果、ヒーローから正義の鉄槌を下されます。我々からしたら、同情なんてしなくても良い存在として認識されますよね。

    しかし、時としてそうした悪役がボコボコにヤラれている様子を観た視聴者は、身体的にイタタタ...と、思わず我が身に感じてしまう事ってないでしょうか。

    今回は、ふと沸き起こった「なぜ正義のヒーローの痛みより、悪者が受ける痛みに共感してしまうのか?」という素朴な疑問について、脳科学的に考えてみたいと思います。

    おそらく皆さんも、かつてそんな感情が芽生えたことがあると思います。記憶の糸を手繰り寄せながら、読み進めてみて下さいね。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     
    たとえば『バットマン』にブン殴られるジョーカーやベイン、ハルクのブッ飛ばされるロキのように、時として彼らの受けている痛みを、自分のことのように共感してしまったこと...ありませんか?

    最近行われた研究で判って来たそうなのですが、こうした現象は突き詰めると、(保身のため)自分の敵を近くに置いておきたい、という心理に端を発するのだそうです。

    これはロサンゼルスに在る、南カリフォルニア大学ドーンサイフ・カレッジ・オブ・レターズ、アーツ・アンド・サイエンスの、ブレイン・アンド・クリティヴィティー・インスティチュート(脳と創造性研究所)の助教授を務めておられる、リサ・サラ・アズィーズ・ゼイダーさん(美人)が指揮した研究によって得られた結果で、私たちは敵が感じている痛みに深い注意を払い、場合によっては共感してしまうことが判りました。

    どっちかと言いますと、心理的に申し訳なく思うということではなく、人は生物学的に他者の肉体的な痛みを理解しようとするのだそうです。つまりそれがあたかも、自分がその痛みを感じているかのように思うのだとか。

    アズィーズ・ゼイダーさんによるプレス・リリースでのコメントでは...

    ---------------------------------------

    アクション映画で悪者が倒されているシーンを観ていて、絶命するその瞬間私たちは強烈に魅入ってしまいます。悪者が本当にダウンしているのか、顔を近づけて観察しようとします。それはこの次もまだ、こちらからの攻撃が必要になるのかどうかを見極めるのに、必要な行為なのです。


    ---------------------------------------

    なるほど、これは太古の昔に生き残りをかけて戦っていた頃の名残りなのでしょうかね。

    相手がまだ生きているのか、はたまたもう死んだのかを判断するために、自分が敵対する相手がどれくらい痛がっているのかを理解しようとした結果、攻撃した自分も痛みをバーチャルに生み出してしまうようです。まぁできる限りこんなアハ体験は、あんまりしたくないものですけれども...?

    大脳皮質の領域で、島皮質という部分があり、それと連携する前帯状皮質と、体性感覚皮質がこうした仮想の痛みを生み出します。さらには感情を抑制する部位と前頭葉の働きも加わって、他人が痛みに耐えている姿を自分に置き換えてしまうのがこの自然現象...アズィーズ・ゼイダーさんは、この一連の流れを「ペイン・メトリクス」と名付けています。

    神経科学者たちはかねてより、こうした働きが痛みの共感性を生むことを知っていたのですが、今回の新たな研究によって、この現象は特に...恐怖体験をしたがらないタイプの人たちに多いということも判ったそうです。つまり、常に身の安全を確保したい人たちってことですね。

    これは、白人とユダヤ人の男性ボランティアを被験者として迎え、2種類別々のビデオを観てもらい、fMRIで脳ミソの様子を観察した結果から判断されました。

    ビデオのひとつは、憎しみにあふれた反ユダヤ的なひとりの人間が苦しめられる内容。そしてもう片方は、反対に周りから好まれそうな人間が痛みに耐えるという内容のモノでした。

    結果は、被験者たちの「ペイン・メトリクス」は、反ユダヤの思想を持った人が苦しむ映像を観た時のようが、もう片方の時より活発になる傾向にあったそうなのです。

    これは、苦しんでいる登場人物が自分の敵だという体で動画を観て、相手にさらなる攻撃が必要かどうなのかを判断するために、脳の動きが活発になったのでしょうね。

    この研究に関わった人によるメモには...

    共感の名の下に、他者の苦境と痛みをシェアする経験の中で、社会的な結びつきが作られるのである。

    憎い相手が痛みに苦しむ様子を観るのもまた、潜在的な結果を残した。

    とも書かれたそうです。あまりポジティブではなく、「自分 vs 敵」という結びつきでしょうね。

    現代人の我々にも、自分の身の安全を確保するために、敵を完膚なきまでに叩きのめす野生の血が、絶えず流れているのかもしれません。皆さんもこんな仮想の痛みを感じた時には、この研究結果を思い出してみてください。

    Thinkstock/Getty Images


    Why do we feel the pain of bad guys more than the good guys?[io9]

    岡本玄介

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