「ゲームでスーパーヒーローを演じると現実でも人助けをするようになる」という研究結果

スーパーマンのように空を飛ぶ真似をするだけで、私たちは街の人々を守るヒーローになることが出来るのでしょうか? 空を飛ぶ能力は責任感を強めるのでしょうか?

仮想空間でスーパーヒーローを演じると、現実社会でも、最低限一時的に人助けをするようになる傾向があるということを最新の研究結果が示したそうです。


仮想空間でスーパーヒーローになることで、人助けをする人間になるかどうかを調べるこの研究は、スタンフォード大学によって行われ、先日、PLOS ONEで発表されました。

被験者は4つのグループに分けられ、仮想空間のシミュレーションを体験。2つのグループは仮想空間の中で空を自在に飛べる能力を身につけ、残りのグループは同じ仮想空間の中でもヘリコプターの乗客になりました。そして、それぞれのサブグループに、糖尿病の子供を探してインシュリンを投与する、または街を空中散歩させるなどの異なるタスクを課しました。

次に、被験者がタスクを終わらせた後、彼らが仮想空間を体験する為に使っていた道具を外している間に、実験者が「誤って」ペン立てを倒します。すると、スーパーマンのようにシミュレーションの中で空を飛んだ被験者は、ヘリコプターに乗車していた被験者よりも明らかに早くペンを拾い上げる手伝いをした上に、拾い上げた数も多かったとのこと。

また、ヘリコプターのグループの内、6人は実験者を手伝おうともしなかったそうです。被験者の人助けをしたいという性向は全く考慮せずにグループ分けをしたにも関わらず、です。

研究者は、スーパーヒーローの空を飛ぶ能力が、被験者の人助けをしたいという気持ちにリンクしているのではないかと主張しています。
これらの結果を説明するひとつの仮説は、仮想空間の中で空を飛ぶ能力を身につけたという最も重要なコンセプトが、被験者にスーパーマンを代表とするスーパーヒーローのステレオタイプを連想させ、結果として現実の世界でも人助けをするという行動を促進させているのではないかというものです。 同様に、この能力を具体化することで、このようなコンセプト以上のことをする可能性もあるのです。最低限、一時的だとしても、被験者の自己概念や「誰かを助ける」というようなパワフルな方向にアイデンティティを持つかもしれないのです。
しかし、研究者達は、ヘリコプターのグループの被験者は自分で操縦出来るパイロットでは無く乗客であったこと、このシミュレーションの中でエージェントでは無くオブザーバーの立場であったことにより、この仮説に矛盾が生じる可能性があることにも示唆しています。論文では、この研究はヘリコプターの操縦士とスーパーパワーを持つ人、またはエージェンシーのシミュレーションをして、明らかな要因を探る必要があると提案しています。


Virtual Superheroes: Using Superpowers in Virtual Reality to Encourage Prosocial Behavior[PLoS ONE via mental_floss via io9

(中川真知子)