かつて「最高にクール&クレイジーだぜ! SFをテーマにしたバンド/ミュージシャン11選」でご紹介しましたように、音楽(特にロック)とサイエンス・フィクションというのは非常に相性が良いジャンルでしたよね。
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ではそれが「サイエンス」だけで、「ノンフィクション」だったら相性はどうでしょうか?
...えぇ、それでもやっぱり相性バッチリなんです!
というワケで、欧米のミュージック・シーンに登場した、科学的なモチーフをジャケットにしたアルバムをランダムに22+最強のオマケ1選でお届けしたいと思います。みなさんがお好きな、またはコレクションに並んでいる1枚はありますでしょうか? さっそく以下でチェックしてみてください。
『狂気』:ピンク・フロイド
1973年に発表された、7枚目のスタジオ・アルバムです。
もうピンク・フロイドと言えばコレ! ってなくらい有名なプリズムのグラフィックです。デザインしたのは、イギリスのデザイン集団『ヒプノシス』。
『アンノウン・プレジャーズ』:ジョイ・ディヴィジョン
マンチェスターで結成された、ポストパンクのバンド、ジョイ・ディヴィジョン。ウィキペディアによりますと、このジャケットは、「初めて発見されたパルサーであるPSR B1919+21(旧名:CP 1919)の波形が用いられている。」とあります。
ちなみにパルサーとは、超新星爆発後に残った中性子星が放つ、パルス状の可視光線や電波の事。すっごくサイエンスしてますね。このジャケットが描かれた裏話を動画でどうぞ。
文字情報が一切ないジャケットですが、これがタトゥーとして人々の肌に刻まれたり、ファッションやお皿、靴のソールにまで流用されたりして、当時はかなりセンセーショナルなデザインだったのですね。
『トランスミッション』:ジョイ・ディヴィジョン
こっちもコズミックなテーマで、どこかの星雲がジャケットとなっています。
『X&Y』:コールドプレイ
このジャケットは、ブロックが1、隙間が0という2進コードで『X&Y』と表現されており、よっぽどテレックスやアマチュア無線に詳しい人じゃないと解読ができないデザインとなっています。デザインは、ケミカル・ブラザーズの『Push the Button』も手掛けたタッピン・ゴフトン氏によるものです。
『アポロ』:ブライアン・イーノ
イーノさんが作るアンビエント作品として人気の高い1枚であり、NASAの月面着陸の記録(アポロ計画)映画用に作曲された楽曲です。とても宇宙的なサウンドで、不思議でいて懐かしい感じもします。
内容もジャケ写も、アストロノミー的なサイエンスですね。
『ザ・セカンド・ロウ〜熱力学第二法則』:ミューズ
2012年のリリースなので、最近見かけた方も多いかもしれませんね。このジャケットは、「コネクトーム」と呼ばれる人間の脳ミソの神経接続部分のグラフィックなのだそうです。これこそサイエンス!って感じがします。ブロッコリーではありませんので、念のため。
『ディスノミア』:ドーン・オブ・ミディ
ロックというよりはJAZZYでもあり、エレクトロニックでもミニマリズムでも、プログレッシブな感じでもある、とても芸術性が高い音楽性を持っているバンドです。
ジャケットは、スイスのフォトグラファーであるファビアン・オエフナーさんが撮った作品で、ドリルにカラフルな絵の具を垂らし、高速回転でスピンさせた瞬間を収めたという物理的運動によって生まれたアートなのです。それを知るとこのジャケットは、音楽ととてもマッチしている気がしてくるから不思議です。
『イズ・ディス・イット』(アメリカ版):ザ・ストロークス
最初は女性のお尻付近を横から撮った、曲線美を強調する写真ジャケットだったのですが、アメリカではそれがエロいということで発売禁止となってしまい、こちらの泡箱で撮られた亜原子粒子がジャケットに。
超高熱の液体水素の中を通過した粒子が、こうした幾何学的な模様を生み出すのだそうです。難しいことは抜きにして、とても美しい自然美ですね。
『リメイン・イン・ライト』:トーキング・ヘッズ
MITの調査係ウォルター・ベンダー氏と、彼が率いるMITのメディア・ラボ・チームによって、コンピューターで顔が赤く塗られたというコラージュ作品がジャケットになっています。
ぜーんぜんサイエンスしていませんが、マサチューセッツ工科大学ってところがミソ。CG創世記初期のアートなので、コンピューター・サイエンスって事にしておきましょう。
『ブルー・マンデー』:ニュー・オーダー
前身のバンドであるジョイ・ディヴィジョン時代からデザインに関わっていたピーター・サヴィル氏による作品で、斬新なこの曲を聴いた時に、バンドが使用していたシーケンサーのフロッピー・ディスクをモチーフにしようと考えたのだそうです。
テキストが書かれていない代わりに、右端にあるカラーコードに対応する文字を当てはめると、タイトルが読める...という暗号も使われており、型抜き処理やインクの混合で黒を表現したことから、インク代と加工代で売れれば売れるほど印刷代が赤字になる、というコストパフォーマンス度外視のジャケットでした。
『VU』:ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
録音スタジオでよく見る、音量メーターを模したものかと思われますが、レッドゾーンまで針が振り切れると、その領域こそがヴェルヴェット・アンダーグラウンドなのだ...と主張しているようです。
サイエンスと言うよりは、オーディオ系のテクノロジー的なジャケットでしょうかね。
『放射能』:クラフトワーク
『ガイガー・カウンター』や『ウラニウム』といったサイエンス的なタイトルの曲も収録されていますが、原題の『Radio-Activity(英語)』はラジオ放送での活動という意味でも引っ掛けています。
なので『ラジオ・スターズ』や『トランジスター』といった曲も入っています。ということで、ジャケットに描かれているのは、ナチス政権の宣伝省が1930年代後半に導入した「国民ラジオ」DKE38型なんですって。
ついでなので、その他のジャケット写真もズラっとどうぞ。
『ソリッド・エアー』:ジョン・マーティン
直訳すると「固体の空気」ということで、そのタイトルをヴィジュアル化させたのが、「シュリーレン撮影法」で撮られたこの1枚です。
「シュリーレン撮影法」とは、透明な媒質の中で場所により屈折率が違うとき、その部分に縞模様やモヤ状の影が見える「シュリーレン現象」を写真に収める技術で、ピンホール・カメラや凹面鏡、高速度カメラなどの複雑な装置や機材を使い、それらの配置にも気を配りながら撮影をしなければいけません。
炎の上の空気の歪みや、弾丸を撃った時に空気が作る波紋などを収めるのが「シュリーレン撮影法」なのです。。なんだか難しいですが、かなり科学技術していますね。そして大変な苦労の末に生まれた写真だとお察ししますが...とっても地味です。
『イン・ユーテロ』:ニルヴァーナ
グランジ・ロックの寵児ニルヴァーナによる、「子宮の中」という意味のこのアルバム。
翼の生えた女性の天使像が写っていますが、解剖模型のようになっているところが聖なる者が持つ現実を表現しているかのようです。これはマーケティング的に作り上げられたニルヴァーナの前作での大成功と、実際に彼らが持つリアリティーとの比較(特にこのアルバムは前作より重くて暗い)でもあるかと思われます。
『ヒューマン』:デス
楽曲はゴリゴリのデス声でがなり立てていますが、演奏はプログレ要素も有り、かなりのテクニックを駆使している凄いバンドです。特にスレイヤー辺りを好むメタラー必聴の1枚デス。
『神々の戦い』:ラッシュ
1976年にリリースされた、脳ミソが描かれているこのアルバムは、聴きやすいプログレッシヴ・ロックを奏でるラッシュの1枚。スペース・オペラ的な大作主義は、このアルバムで懲りてしまったという、ある意味ターニング・ポイントとなってしまった作品なのだそうです。
『デス・マグネティック』:メタリカ
棺桶を中心に広がる磁界というのが、タイトルそのものですね。前作『セイント・アンガー』が実験的でファンの期待を裏切る出来栄えだったのがこたえたのか、このアルバムはメタリカらしさを取り戻し、パワフルなヘヴィ・ロックとなっています。
ちなみにですが、もっと前のアルバム『Load』では写真家アンドレス・セラーノ氏が自分の精液と牛の血を混ぜた液体がジャケ写になっています。続く『RELOAD』はご自身の尿と血液という...それもまぁ生理学的なサイエンスと言えなくもないかなと。
『LATTER DAYS:ベスト・オブ・レッド・ツェッペリン VOL.2』:レッド・ツェッペリン
ギタリストのジミー・ペイジさんがオカルトや黒魔術に傾倒していた、というウワサの真意はさておき...現代科学技術の粋を集めた宇宙船に乗り込むパイロットの格好をしたレッド・ツェッペリンの面々。
イギリス人の彼らがなんでNASAの宇宙服を着ているのかという疑問は持たないほうが良さそうです。
『スペース・ウォーク』:トミタ
作曲家、編曲家、シンセサイザー奏者でもある冨田さんは、テレビ番組やドラマ、アニメや童謡などなど、トンでもなく膨大な量の楽曲を作られた偉人です。詳しいことはウィキペディアに譲りますが、こちらのジャケットもまた、NASAの宇宙飛行士が描かれており、ゼロ・グラビティしちゃっています。楽曲もオッサン世代が子供の頃に「これぞ宇宙だ!」と感じたような音が散りばめられています。
「ザ・マインド・イズ・ア・テリブル・シング・トゥ・テイスト」:ミニストリー
1989年にリリースされた、インダストリアル・メタル・バンド、ミニストリーの4枚目のスタジオ・アルバム。頭蓋骨のレントゲン写真がジャケットになっていますね。デザイン同様に、音楽もカッコ良いものとなっています。YouTubeでフル・アルバムが聴けるので、ソチラもどうぞ。
『ディア・アゴニー』:ブレイキング・ベンジャミン
2009年にリリースされ、全米ビルボード・アルバム・チャートで最高4位にまで上り詰めたこの1枚ですが、こちらは頭蓋骨を輪切りにしたCTスキャン写真でしょうか。さすがに売れたアルバムだけあって、楽曲もカッコ良いので、ぜひとも聴いてみてください。
『おせっかい』:ピンク・フロイド
音波で波状が立った水に映った耳という、なんだかややこしいモチーフの写真は、ボブ・ドウリング氏によるもの。デザインは相変わらず『ヒプノシス』が手掛けました。
面白いことにウィキペディアでは、このジャケットについて「ジャケットのデザインとアルバムタイトルは、1971年8月の来日時の滞在ホテルで、バンドのメンバーがブレインストーミングを行い決定した。しかし、ジャケットのデザインは、バンドとヒプノシス双方ともにその出来に満足していない。」という情報が載っています。天下のピンク・フロイドでも、たまにはそんな事もあるんですねぇ。
オマケ:ボイジャーのゴールデンレコード
いつの日か、高度な知能を有する地球外生命体によって発見・解読されたら良いな、という人類のロマンと夢が詰まったこのレコードは、ジャケットに音声と動画の再生に必要な回転速度や、針の高さ、再生時間などが図解で描かれています。これこそが、史上最高の科学的デザインが施されたアルバム・ジャケットではないでしょうか?
ということで、オマケはちょっと究極すぎましたがサイエンスと音楽との相性が、おおよそアートという手法で見事に融合されていることがお解りいただけたのではないかと思います。
今回は、たったの22+1枚しか紹介していませんが、世の中にはもっとたくさんの科学的モチーフで描かれたデザインが存在するはずです。もしも読者のみなさんがご存知のアルバムがありましたら、ツィートやコメントで教えてくださいね!
The Best Science-inspired Album Covers Of All Time[io9]
(岡本玄介)
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