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長回しを使うと、まるで現実に起こっているものを見ているかのような緊張感を維持させることが出来るということで、様々な監督がここぞという場面でこの撮影方法を取り入れています。
しかし、この撮影は私たちが考えているよりも予算面でも、スタッフの体力面でも、技術面でも負担が大きいもの。そのため、長回しシーンが出て来ると「おお!」となるわけです。
今回はそんな映画の長回しの中でも、特に最高だと思われるものをSploidが取り上げていたので、コタクジャパンでも紹介したいと思います。
■『トゥモロー・ワールド』の乗用車襲撃シーン(4分)
長回しが多い『トゥモロー・ワールド』の中でも、一際複雑な技術を要した乗用車襲撃シーン。車の天井部分を外し、そこからクルー4人が車内を撮影。一連のシーンの撮影には12日間も要したそうです。
■『スネーク・アイズ』のボクシング・マッチシーン(12分)
ブライアン・デ・パルマ監督は長回しを好む監督ですが、特に素晴らしいのは、チンピラファッションに身を包んだニコラス・ケイジが、主要キャラクター達と次々に会話しつつ、ボクシング・マッチに向かう様子を後ろから追う13分の長回しシーンでしょう。映画の完成度は今イチですが、このシーンは圧巻です。
■『グッドフェローズ』のコパカバナ・ラウンジシーン(3分半)
マーティン・スコセッシ監督も、デ・パルマ監督同様に長回しが好きな監督です。中でも、マフィアに憧れた青年ヘンリーの人生を描いた『グッドフェローズ』の、長蛇の列が出来る超人気レストランに裏口から入っていく様子を長回しで撮影したものは見事。ギャングのメンバーとなったヘンリーの生き方を象徴しているシーンです。
■『ゼロ・グラビティ』のオープニングシーン(12分半)
アルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』の冒頭シーンの長回しでは、前半はゆっくりと宇宙の美しさと広さを見せ、そこから一気に宇宙飛行士に降り掛かった悲劇を高速で描いています。サンドラ・ブロックが宇宙に投げ出されたと同時に、視聴者もストーリーの中に放り込まれたような感覚に陥る迫力のあるシーンです。
■『ブギーナイツ』のリトル・ビル自殺シーン(3分)
『ブギーナイツ』は約3分に渡るオープニングの長回しが有名ですが、Cinefixが選んだのは、色魔な妻に頭を悩ませるリトル・ビルの自殺に至までを後ろから追ったシーン。リトル・ビルは、これまでにも何度も妻の浮気を目撃していたのにも関わらず、このシーンでは、浮気を目にした後のビルの姿をカメラがずっと追って行くことで、ビルは何かしようとしているのだということを視聴者に効果的に伝えています。
■『黒い罠』の爆発シーケンス(3分半)
予算と製作期間をオーバーする監督として映画業界では敬遠されがちだったオーソン・ウェールズが、そのレッテルを覆そうと、期間と予算を守ろうと必死になって作ったのが本作。冒頭のシーンは、メキシコ国境付近で爆弾を仕掛けられた車が、国境を越えてアメリカに入ったところで爆発するという一連の流れを、主人公の麻薬捜査間とその妻の紹介を含めて見せています。他の長回しとは異なり、カメラワークが大胆に変化するのが見所です。
■『ザ・プレイヤー』のオープニングショット(7分47秒)
オフ・スクリーンでの会話の後に発せられる「アクション!」のかけ声と共に映し出される壁の絵。そこから徐々に慌ただしい映画スタジオの様子が約8分の長回しで流れて行きます。
ハリウッドの重役として活躍するグリフィン・ミルや、映画界のヒエラルキーを効果的に見せているのは、即興の細切れ会話の数々。その中では、オーソン・ウェールズ監督の『黒い罠』や、アルフレッド・ヒッチコック監督の『ロープ』の長回しについても語られています。
■『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』の病院銃撃シーン(2分40秒)
派手な銃撃戦を得意とするジョン・ウー監督が挑んだ長回しは、チョウ・ユンファとトニー・レオンが敵のアジトである病院に乗り込み、ひたすら撃ちまくるというシーン。このエレベーターで階を移動しているように見える場面では、実際に別の階に行っているのではなく、エレベターのドアが閉まっている20秒の間に、クルーがセットを掃除しているのだそうです。
■『ウイークエンド』の渋滞シーン(7分)
ジャン=リュック・ゴダール監督の悪夢のような渋滞シーン。変哲も無い渋滞風景から始まりますが、先に進むにつれ、道路わきの血まみれの死体が映し出されたりと、徐々に狂気じみた面を持っていることを映し出していきます。ブラックジョーク満載でフランスのブルジョア階級を皮肉るのはゴダールならではです。
■『つぐない』のビーチシーケンス(5分半)
1000人にも上るローカルのエキストラが参加したビーチシーンは、その予算の関係上、2日で撮影を終わらせる必要があったそうです。1日目と2日目の朝にリハーサルを行い、残りの時間で5回の撮影に挑むという想像以上に厳しいハードスケジュールでした。そんな中、この複雑な長回しを実現させたのは、ピーター・ロバートソンというステディカム・オペレーター。
彼は40キロに渡る撮影の為に、ゴルフカートを使い、歩いて野外ステージを撮った後、人力車に乗り、再び歩いてピアのバーに向かったのです。1日中撮影していたピーターは、4回目の撮影で、130キロのカメラを支えていた足に限界をきたし倒れてしまったそうです。
■『鏡』の納屋燃焼シーン(1分)
このリストに含まれるものの中で、最も短い1分程の長回しシーン。本作は、アンドレイ・タルコフスキー監督の幼少期を詩的に描いた自伝的作品で、この納屋が燃えるシーンは、父親が家族の元を去って行く前に起こった重要な出来事です。
■『トム・ヤム・クン!』のレストランファイトシーン(4分)
撮影期間は4日間、満足いくまで8回も撮り直し、トニー・ジャーの動きを上手く捕らえる事が出来ないカメラクルーを交代させてまでして、この4分間の階段ファイトシーンを完成させました。
Here are 12 of the best long takes in movie history[via Sploid]
(中川真知子)
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