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いや、十二分に健闘していましたよMP3。 最近、ステキでビューティフルでブリリアントなサウンドを求める方はHD音源やDSD音源を楽しんでいるとのこと。CDの音質を超えるこれらのデジタルファイルは、いわば生の味。牧場で飲む牛乳や食べるバター、酒造で楽しめる生酒のように、楽器音やボーカルといった素材の味を隅々まで堪能できるとあって一部でブームが起きつつつつあります。 しかし、好きな曲がニコニコ動画やYouTubeにしかなかったり、CD内の曲をMP3にした際にCDを売っちゃった場合はMP3などの圧縮音源と付き合うしかありません。 「えーマジMP3!! MP3が許されるのは小学生までだよね!」 と世間で言われているのかどうかは不明ですが、よりよい音質の音源があるというならそちらで楽しみたくなるというのが人というもの。だけど不可逆圧縮ゆえにできないこの現実。ああん。 じゃあステキな再生機器を使えば、圧縮音源でもドキドキワクワクのリスニングを楽しめるんじゃない? といったところで今日の本題です。ハーマンインターナショナルさんにご協力いただき、560万円のスピーカーで128Kbps、192Kbps、320KbpsのMP3ファイルを聞き比べしてきました。残念ながらハイビットレートのデジタルファイルが見つからなかったので、ライバルはCDの音質そのままのWAVということで。 さあ、実聴です。
【大きな画像や動画はこちら】
と、その前に。再生時に使う選手をご紹介しましょう。
第一走者のプリアンプはマークレビンソンのNo32L。現在は一線を退いたモデルですが、電源別体型のスゴいヤツ。336万円という凄まじいお値段にも圧倒されます。
第二走者のパワーアンプは同じくマークレビンソンのNo532。本体質量55.3kg、定格出力(400W)時の消費電力1731Wというモンスターです。1700ワットって。お値段は280万円。こわいっ!
そしてアンカーはJBLのProject EVEREST DD66000。ブラッシュアップモデルのDD67000がリリースされましたが、JBL60周年記念モデルというDD66000の魅力は今なおピカリ。1台280万円、ステレオペアで560万円なので買えませんけどね!
■第一コース →Pia-no-jaC←/組曲『 』
・MP3 128Kbps
さすが総勢1000万円超えのシステムです。128KbpsのMP3でもダイナミックレンジが広くて小さい音と大きな音、両方ともはっきりとした輪郭をもっています。...だけれども、カホンの響きが潰れてますね。ハットも薄い。「かしゃーん」ではなく、「かちゃ」で終わっちゃってる。 ・MP3 192Kbps
お、お、見えてきた聴こえてきた。左右のパンなど、ミキシングの効果がグッと前に出てきてステレオ感アップです。軽くふるわせてるハットの音が入ってきたし、低音の伸びもよくなってきた。 ・MP3 320Kbps
カホンいいねえカホン。カホンの響きがいいですよ。ハットも消え入るまできちんと聴こえてきていますよ。 ・WAV
ピアノの音にも分離感が。耳コピできそうなくらいに1鍵1鍵の音が聞こえてきます。音場も広く聴こえる。かっこいー!
■第二コース 10cc/Une Nuit A Paris
・MP3 128Kbps
バイノーラルマイクを使ったかのような、サラウンド感あふれる前章部をチェック。やや音場が狭い印象ですが、普通に聞く分には満足です。 ・MP3 192Kbps
音色の印象は変わりません。音場はやや広がりを見せてきました。 ・MP3 320Kbps
お、金属音の響きに違いが。前後方向の立体感も増しました。サラウンド感の良さ、堪能できます。 ・WAV
立体感やや増し。響き成分のクオリティが向上したっぽい。
■第三コース Sting/Englishman In New York
・MP3 128Kbps
ボーカルの輪郭が多少ぼやけ気味。コーラスもつぶれちゃってます。とはいえメロディラインを楽しみたいならこれで十分ともいえるでしょう。 ・MP3 192Kbps
音はまだ平面的ですが、低域の質感がアップ。腰がでてきたってカンジ。 ・MP3 320Kbps
低音の伸びがいいデスね! ベース音に弾みがついてますし、時代を感じさせるエフェクト込みのドラムも気持ちいー。金物の表現力もバッチリです。 ・WAV
わずかですがコーラスの分離力がアップ。各音が個別に聞こえるようになってきました。
■第四コース Perfume/ELectoro World
・MP3 128Kbps
うわあ...音が平べったいです。ダマになりまくり。細かい音が幾層にも重なって作られたエレクトロ・ワールドは、どうにも圧縮音源向きではない曲のようです。 ・MP3 192Kbps
まだダマになっているのですが、ボーカルが前に出てきました。声にかけられたエフェクトの質感も味わえます。ボーカル重視ならこのクラスでいいのかも。 ・MP3 320Kbps
ボーカルの立体感がアップ。タイトな低音も入ってきて、弾力感ばっちりです。 ・WAV
しかし、この曲に関してはWAVの圧勝。ベースが入ってきても他の音がつぶれないし、上下方向および前後方向の立体感も再現。この曲...というかPerfume全曲、HD音源+ハイエンドなシステムで聞いたらどうなっちゃうんだろうか...。
■第五コース いとうかなこ/スカイクラッドの観測者
・MP3 128Kbps
ボーカルにややブレが見えるのと、ハイハットの音が「シャー」と無表情なのが気になります。 ・MP3 192Kbps
ハイハットはまだ平面的ですが、粒立ちがよくなってきました。いとうかなこさんのボーカルの魅力は十分に味わえますよ。 ・MP3 320Kbps
おや、聞こえなかった音が入ってきましたね。高域のクリアさもアップしたし、低域も締まってる。いいスピーカー・ヘッドフォンを使うのならこのクラスは欲しいところ。 ・WAV
さすがはProject EVEREST DD66000。音場がいっそう広がって、ボリューム感も出てきた。聞こえる音数に違いはないのだけど、ダイナミックレンジがさらに拡大したカンジ。これはとろけます。試聴室じゃなかったらきっと泣いてました。
■第六コース Keith Jarrett/The Köln Concert
・MP3 128Kbps
古くからオーディオ機器の品質チェックに使われているリファレンス中のリファレンス。冒頭部の観客の笑い声や、キースが踏むペダルの音もきちんと入ってますよ。128KbpsのMP3でも、信号レベルでは残っているんですね。ただしアタック感に欠けていて、音が重なると飽和して響きが悪くなります。 ・MP3 192Kbps
まだダマな感じはするなー。うん、ダマだ。 ・MP3 320Kbps
上下の立体感、ホール録音ならではの天井の高さを感じられるようになってきました。響きがよく、ペダルの音とピアノの反応がリンクして聞こえるのが楽しい。 ・WAV
細かいペダルワークがわかるほどの描写力に圧倒されます。...が、そう思えるシーンは一部。ところどころでつややかさや弾力が違ってくるのですが、通常シーンにおいてはMP3 320Kbpsと印象は大きく変わりません。ピアノソロということもあり、高ビットレートなら圧縮音源でもOKということなのかも。
■結論 やはりWAVはいいねえ。このシステムで聞くHD音源も素晴らしいんでしょうなー。 といいつつも、個人的にはMP3押しで行きたい。好きなアルバムや大好きな曲の高音質版が出たら即買いすること間違いありませんが、スマートフォンや携帯プレーヤーには、少ファイルサイズで音質も維持している320KbpsのMP3ファイルで満足できます。256kbpsでもいいかな? 192kHzだと厳しいか。128Kbpsは...。ごめんなさい。 逆に言えば、MP3ファイルでも再生環境を良いモノにすれば味わい深いものになるのだなということもわかりました。 中古のおうちが買えそうなこの価格帯のシステムを揃えられる人はまずいないでしょうけど、ヘッドフォンアンプ+良質なヘッドフォン・イヤフォンの組み合わせでも普段皆さんがお使いのMP3ファイルがよりつややかになるでしょうし、ニコニコ動画やYouTubeがより楽しくなること間違いありませんよ。絶対です。
[ハーマンインターナショナル] (武者良太)
RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2012/09/mp3-wav-dd66000.html