良いアクション映画の条件とは何でしょうか? ヒーローがマッチョで重機を軽々と持ち上げたり、銃を撃ちまくる? 愛する家族のために猪突猛進?
実は、良いアクション映画にはそういった大まかなコンセプト以外に、必要不可欠なレシピがあるそうです。
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良いアクション映画のことを語る前に、この文章での「良い映画」の定義に触れておきます。「良い映画」とは娯楽性が高くて良質な作品。それは面白いストーリー、良く練られた親近感の持てるキャラクター、そして適格な撮影技術で構成されています。ここにホラー、コメディ、ラブストーリー、アクションといった、ジャンル毎のスパイスが加わっていくというわけです。
では、以下からMoviePilotのデビッド・チャールズ記者が考える「美味しいアクション映画のレシピ」をどうぞ。
■勢いと休憩
突っ走り続けることを前提にメリハリをつけて
観客がアクション映画に求めるものは、言うまでもなく「アクション」。大雑把に言えば「動き」です。
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勢いを失ってしまうと取り戻す方法はありません。勢いを持ったまま突っ走る良い映画の例は、フランスのアクション映画『この愛のために撃て』とリーアム・ニーソン主演の『96時間』でしょう。前振りは短く、動き出したら止まらない。完結するまで小気味よく進んでくれます。両作品ともにちょっとした休憩は入りますが、それでも次のアクションが始まるまでに20分以上間を空けません。
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アクション映画にも関わらず説明的なシーンがやたらと入っていたり、主人公が休憩しつつ語り始めてしまうと、スピード感を失うだけでなく、映画のテイストまで変わってしまいかねません。内容が良ければそこも重要なシーンとカウントされますが、観客のテンションを維持するのは難しいと言えるのではないでしょうか。
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休憩の使い方が素晴らしいのは『96時間』。リーアム・ニーソンが女性を助けて静注薬物を打った後、彼は腰を下ろして一旦体を休めます。そこにダイアログはなく、息をして、ほんの少し休憩するだけ。このシーンを見た観客は、無双に見える彼も本当は疲れているのだということを理解します。そして、説明的なセリフが一切ないにも関わらず、キャラクターデベロップメントに成功しているのです。これは、映画全体のスピード感を失うことなく、数秒で効果的に主人公の状態を伝える見本的な休憩の使い方でしょう。
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■生身の人間がスタントをこなす
体を張ってこそ
何でもかんでもCGが一般的になってきている映画業界ですが、CGのキャラクターによるアクションの多くは無味乾燥に感じられます。「ジャッキー・チェン映画が面白い理由」でも書いた通り、リアルな人間の肉と肉のぶつかり合いだからこそ、アクション映画の感動は大きいのです。
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ジェームズ・ボンドシリーズはリアルな人間がリアルなスタントをこなすということにこだわっています。例えば、『ゴールデンアイ』のダムからのバンジージャンプシーン。あれは危険なスタントですが、CGで描いていたら随分とお粗末な絵になっていたでしょう。当時のCG技術であれば尚更です。アクション映画の中でハッキリと分かるくらいのCGが登場するとゲンナリしますが、反対にリアルなアクションを見ると、自分の体にも衝撃を受けるような感覚を味わえます。
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チャールズ記者は、YouTubeに投稿されているバンジージャンプやビルから飛び降りる系の動画を例に出し、「あぁいったリアルな動画を見た方が、素直に『スゲー』とか、オチによっては本気で爆笑できる」とも言っています。それは、全て本物だからです。そして、この「本物」こそがアクション映画に必要なのだと力説しています。
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スタントマンを使うよりも、俳優が自らアクションをこなしている方がより効果的でしょう。例えば、『ジョン・ウィック』でのキアヌ・リーブスの戦闘シーン。そして『ミッション・インポッシブル5』のトム・クルーズ。トムは実際に飛行機からぶら下がったのです。俳優が自分でアクションを行えば、スタントマンと俳優の切り替えに手を焼く必要もありません。
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■尺と倦怠
設定だけで十分緊張感がある
アクション映画にアクションを期待するのは当たり前です。しかし、だからといってアクションばかり延々と見せられ続けては、飽きてしまいます。好きな食べ物を食べすぎると見たくもなくなるのと一緒です。適量だから嬉しいのです。アクション映画におけるアクションも同じ。なるべく短く、ダラダラと見せずに勢いを持って決まるアクションが良いでしょう。
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『Kung Fu Killer(原題)』のラストのアクションシーンは最高です。たった1分程度の短い尺ながら、大型トラックが横を通り過ぎる際にトラックの影で行われる肉弾戦は、横に逸れてしまったら跳ね飛ばされてしまう......という緊張感も相まって大きなインパクトを与えます。
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では、派手で手が込んでいるにも関わらず、監督が力を入れすぎたせいでダメになってしまった作品の例はなんでしょうか?
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多くの人が『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』の最後の戦いに批判的なコメントをしています。理由は当然、その長さ。良いファイトシーンは10分以上もダラダラと戦いを見せ続けるのではなく、いかに効率よく印象に残るように見せるか、が重要なのです。
アクションシーンがあまりにも長く続くと、観客は「アクション倦怠」を起こします。爆発にもカーチェイスにも興奮することなく「まだ続くのか...」と辟易するようになるのです。その最たる例が、『トランスフォーマー』シリーズでしょう。
全作品が2時間越え。そして無機質なロボットがアクションをひたすら繰り返します。『トランスフォーマー3』のラストのアクションに関して言えば、約20分も続きます。刺激は与えられすぎると感覚が麻痺してしまうのです。
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反対に、良いアクションと良いラストシーンのある作品の代表は『ダイハード』なんだとか。『トランスフォーマー3』の20分にも渡る拷問に近いダラダラアクションと対照的に、ブルース・ウィリスを一躍スターダムに伸し上げた『ダイハード』の5分程度のクライマックスは、リズムよくスパッと決まっています。
また、ハンス・グルーバー演じたアラン・リックマンの落下シーンの表情は本物で、打ち合わせしていたタイミングよりも早く落下させた為、あの驚きに満ちた表情が収められています。
いかがでしたか?
皆さんの好きなアクション映画、そして皆さんの考える良いアクション映画の条件、レシピは何でしょうか?
訳者が好きなのは『プレデター』と『トゥルーライズ』と『ターミネーター2』と......。えぇ、シュワルツェネッガー・ラブなもので......。
[via MoviePilot]
(中川真知子)
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