アクション映画を鑑賞していて、「このアクションシーンはちょっと......」と感じたことはあるでしょうか? 実は、アクションシーンを作るのは非常に難しく、完成度の高いものが見られることは稀なのだそうです。
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そこで今回は、io9が取り上げたCorridor Digitalのニコ・ピューリンガーさんとサム・ゴルスキーさんの動画をご紹介。
アクションシーンをより深く知ることができ、良質なアクションシーンに必要な要素やダメなアクションシーンに見られる誤魔化し技術といったものが学べます。
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アクションシーンはなぜこうもダメなのか? 予告編のアクションシーンを見て「うわー、映像はいいけどこの映画はダメだなぁ」と思うことはありませんか? それは仰々しいだけで中身がないアクションだからではないでしょうか?
そういったシーンは、キャラクターの感情が反映されておらず、物語を膨らませることもありません。ただ見た目が「凄い」だけなのです。
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アクションシーンはアクションの動きだけに重点が置かれがちですが、例えば恋人同士が派手な喧嘩をしている~など、意味の凝縮されたシーンでなくてはならないと、Corridor Digitalの2人は語っています。
そして何よりも罪深いアクションシーンは、アクションそのものの質が低いものとのこと。では、クオリティの低いアクションシーンとは一体どのようなものでしょうか?
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悪いカメラワークやヘンテコな振り付け、目で追うのも苦労するような速すぎる編集といったアクションシーンは、クオリティが低いと言えます。反対に、良質なアクションシーンとは「ハッキリとアクションを見せる」ものを指します。粗を隠す為にカメラや編集技術で誤魔化すのではなく、正々堂々と全てを見せるものです。
キャラクターが何故その決断をしたのか? 何が起こっているのか? を観客へ伝えるために、ワイドショット、長尺で一連の動きをとらえ、全体像を見せているかどうかがポイントでしょう。殺されそうになっているから反撃しているのか、感情の赴くままに動いているのかといったことを観客に把握させるのです。
また、アクションとリアクションが同じショットに収まっていることも重要。キャラクターの決断や、危険な状況に陥った理由を知ってもらう必要があります。
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以前、上記と同じような内容をジャッキー・チェンも語っていましたが、こういった条件をクリアするには、膨大な時間と費用と根気が必要となります。そのため、予算削減が叫ばれるハリウッド映画では中々見られないのが現状のようです。
また、良いアクションシーンは「あけっぴろげ」であるのに対し、悪いアクションシーンは「ほのめかす」だけで観客の補正を頼りにしているとも言えるかもしれません。
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クローズアップ、邪魔する動き、アクションを隠す、ガクガクと揺れるカメラ。こういったものを多用するアクションを見ると、観客は何が起こっているのか理解はするものの、それがどのように起こっているのか? そして、アクションをしているキャラクターが何を考えているのか? といったことを感じられません。
アクションとリアクションを同じショットで一連の流れとして見ると、観客はより感動し、出来事をより受け入れるのです。
では、「ほのめかす」アクションシーンが常に悪いのか? 必ずしもそうではありません。
スティーブン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』は全体像を見せないことで、効果的なアクションシーンになっていると言えます。冒頭のノルマンディー上陸シーンは、スローになったり画面にブラーがかかったりと、瞬間ごとにショットが切り替わりますが、海から陸に上がり丘に登るという至って単純な流れのため、陳腐に見えないのです。
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続いての話題は「フィルムメーカーが陥りやすいアクションシーンの罠」。
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アクションシーンが「シーン」であるということを忘れているフィルムメーカーが多いように感じます。アクションシーンは壮大であると同時に、キャラクターを構築するシーンでなければいけません。この2つが組み合わさって初めて「アクション・シーン」となります。
一般的にアクションシーンは誰かが誰かをやっつけたい、もしくは死にたくないから生きるために戦うというものが多いでしょう。ここに感情が入らなくてはいけません。
例えば『キングコング』には恐竜が将棋倒しになるシーンがありますが、観客はあのシーンに何の意味があるのか? を理解することはないと思います。『バイオハザード』シリーズも同様です。どのアクションシーンにもキャラクターの血が通っていません。
映画における良いシーンとは、キャラクターの内面や価値観が描かれているものを言います。アクションシーンにも、当然、この「エモーショナルアーク」が必要なのです。
感情が描かれたアクションシーンの優秀な例は、『マトリックス』の地下鉄でのネオとスミスのフィストファイトでしょう。このシーンでネオは生き残るためにスミスと対峙しますが、それだけでなく、預言者(オラクル)に自分が救世主ではないことを知らされながらも、実は自分こそが救世主ではないのかと考え、最終的に救世主であろうがなかろうが、予言にある人物は人類を解放するのであり、自分がそうなるのだと覚醒するまでの感情の流れが含まれているのです。
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Corridor Digitalは感情を含む良質なアクションシーンの例として、『スター・ウォーズ』旧3部作も挙げています。それは、全てのアクションシーンが単なるライトセーバーのチャンバラではなく、キャラクターの感情を表現しているから。
ところが、『スター・ウォーズ』新3部作では感情が置いてきぼりになっているのだとか。
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アクションシーンには感情の流れが必要だと口を酸っぱく伝えていますが、だからといって壮大さは無くていいと言っているわけではありません。
アクションシーンにおいて、スペクタクルは非常に重要です。そして、キャラクターアークと視覚的娯楽のスペクタクルのバランスが必要になります。言ってしまえば、スペクタクルはキャラクターがなくては無意味なものになってしまうのです。
スペクタクルの中への感情の組み込みが難しいのが、ディザスタームービーでしょう。『カリフォルニア・ダウン』ではサン・アンドレアス断層が動いて街が崩壊、火山が噴火して巨大な岩石が人々を襲いますが、キャラクターの感情に重点が置かれて描かれているわけではありません。
一方『インディペンデンス・デイ』では、メインの崩壊シーンが来るまでにキャラクターがしっかりと観客の心の中に入り込んでいるため、「その瞬間」をより緊張感を持って悲劇的に感じることができるのです。
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Corridor Digitalは、もしキャラクターが観客の感情を揺さぶるだけの要素を持たずに画面へ登場するとしたら、それは俳優たちの時間を無駄にしており、言ってしまえば、それを見せられている観客の時間を無駄にしているとも主張しています。
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スペクタクルは必要ですが、根拠が必要で、さらにキャラクターの感情が垣間見えなくてはいけません。この感情という要素が裏にあり、スペクタクルとのバランスが取れてこそ、素晴らしいアクションシーンとなります。
ではおさらいです。なぜアクションシーンはどうしようもないものばかりなのでしょうか?
それは単純に難しいからです。素晴らしいチーム、セット、予算といった条件の他に、辛抱強さ、練習、根気強さが必要になります。そして、格好いい振り付けとそれを捉える撮影技術、レイヤーが素晴らしいストーリーテリングと活動的な動きに乗って、初めて素晴らしいアクションシーンは誕生するのです。
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Corridor Digitalの2人は、「次にアクション映画を鑑賞する時は、アクションが鮮明で何が起こっているのかを理解することができ、直感的で、キャラクターを意識しており、彼らが何をしているのか? そしてストーリーに深みを持たせているのか? ということに注目しながら、アクションシーンを見てほしい」とまとめています。
あなたの好きなアクション映画はいかがでしょうか? 訳者が好きな『エクスペンダブルズ』シリーズはクオリティが低いアクションの代表のような扱いをされていて残念な限り......。
[Via Laughing Squid via io9]
Why Do Action Scenes Suck?[YouTube]
(中川真知子)
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