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撮影裏に迫る『レヴェナント: 蘇えりし者』のメイキング
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撮影裏に迫る『レヴェナント: 蘇えりし者』のメイキング

2016-02-10 20:30
    撮影裏に迫る『レヴェナント: 蘇えりし者』のメイキング


    実在するアメリカ西部開拓時代の罠猟師、冒険家であるヒュー・グラスの体験をレオナルド・ディカプリオが熱演するサバイバル映画『レヴェナント: 蘇えりし者』。


    【大きな画像や動画はこちら】

    ゴールデングローブ賞を3部門受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた本作の撮影裏に迫る45分間のメイキング映像が公開されています。

    一部ネタバレがありますので、ご注意ください。



    こちらは20th Century Foxがアップしたもの。

    監督、スタッフ、出演者が語っている、撮影時に起きた出来事やどういった意図のある作品なのか? といった内容を以下でざっと振り返ります。

    まず、「このドキュメンタリーは『レヴェナント: 蘇えりし者』のメイキングであると同時に、失われた時代と今を比較するものである......」というテロップから始まります。

    アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の前には巨大な2枚のモニターが。そこに映し出されるのは目を見張るような美しい自然です。

    2014年10月からカナダのアルバータ州で主な撮影が始まった『レヴェナント~』ですが、主演のレオナルド・ディカプリオいわく、数年前に企画が進められ、1年前にはディカプリオに脚本が渡されていたにも関わらず、撮影方法があまりにも困難だったため、製作のゴーサインがなかなか出なかったそうです。

    ディカプリオが演じるのは、灰色熊に襲われた上に仲間に見捨てられ、たった一人で大自然の脅威と戦いながら、復讐心を胸に生き延びようと抗う男、ヒュー・グラス。彼は実在の人物で、アメリカの伝説的探検家であり罠猟師です。

    イニャリトゥ監督は『レヴェナント~』の中で、過酷な状況に立ち向かう人間の魂サバイバルの中で得た気づきといった詩を表現したかったのだと思うと、ディカプリオは言っています。

    製作中、ホークを演じたフォレスト・グッドラックと彼の家族はノースダコタ州にあるインディアン居留地を訪れ、彼らの歴史や先祖代々の土地に残る現実を学んだそうです。

    ダム建設のために水没した保留地、オイル発掘のために移転しなくてはならなかったインディアンたちは、オイルカンパニーが作る金額とは比べ物にならないほど低い金額で契約をかわしてしまったと言います。当時のインディアンはよそ者を歓迎しているようでしたが、それは彼らがそこに滞在すると考えなかったからでしょう。

    もちろん、そこに来た全ての企業が悪徳だったわけではなく、インディアンと友好な関係を築いていた企業もあったようです。しかし、オイルが原因の事故でインディアンが被害に遭うというのは決して珍しいことではなかったとのこと。

    『レヴェナント~』の中で、トム・ハーディ演じるジョン・フィッツジェラルド自分の理解できないものに恐れを抱いており、インディアンとのハーフであるグラスの息子に嫌悪感を示します。

    ジョンは人種差別主義者の男を演じていますが、監督は彼を悪役/ヴィランとしては描いていません。人種差別は無知がもたらしたものであり、ジョンもまた当時の歪んだ社会観の被害者なのです。歴史上の人物を今の価値観で批判することほど無責任なことはないということでしょう。

    歴史アドバイザーのクレイ・ランドリーは、本作の時代背景や当時の人々の価値観を深く学んだと言います。当時、1匹の動物につき200ドルが支払われましたが、一般の男性の給料が1月10ドルだったそうです。そのことを考えると、いかに動物が高かったのかがわかります。

    現代の経済、土地、私たちの生活が過去の人々によってどのように築かれていったのか? という歴史を学ぶことは非常に大切とのこと。当時、なぜこのような人々がいたのか? なぜこのようなことをしていたのか? どんなことを考えていたのか? を深く理解した上で『レヴェナント~』は作られているようです。

    コスチュームデザイナーのジャクリーン・ウェストは、17世紀以降に作られ、紳士の必須アイテムとなっていたトップハットについて語っています。

    紳士のステータスのシンボルであったトップハットは、ビーバーの毛皮で作られていました。このため、ビーバーの乱獲が行われ、20年ほどでアメリカのビーバーは絶滅寸前にまで減ってしまったそうです。

    当時、人々はお金のために自然や動物、人間を犠牲にしていました。『レヴェナント~』は、フェアトレードがどういったものだったのか? そして、ネイティブアメリカンたちが苦しめられたという事実をリアルに描いています

    場所は現在のカナダへ――。ここではアーク・ドッグを演じたダーン・ハワードに焦点が置かれています。

    「自分たちが持っていた全てを盗んでいった。土地も、生き物も。契約は破棄され、全ての約束が守られなかった」というインディアンたちの抱える深い悲しみを静かに伝える重要な役を演じたハワードは、訪れた海辺の家で、金や所有権のために毒されてしまった土地をもとの姿に戻すべく、戦わなくてはならないと話しています。

    家から見える対岸には工場が立ち並び、かつて生息していた牡蠣も50年は姿を見せておらず、今では泳ぐこともできなくなってしまったそうです。

    イニャリトゥ監督は「私たちが知る資本主義とは、資源を使って生活を便利にしたり、利益を得たりするというものでしょう。自然や生き物といったものを犠牲にし、尊厳を踏みにじったとは考えていません。今でも穴を掘り、木を切り、資源を盗み続けていますが、その事実に気づいて後悔するのは最後の木を切った後、最後の動物や魚の一匹を獲った後でしょう」と言っています。

    お金を食べることはできないのに。でもこれが世界中で起きているんです」と笑う監督はとても寂しそうです。

    ヒュー・グラスはセリフが少ないキャラクターのため、レオナルド・ディカプリオは異なる言語で観客に状況を伝えなくてはなりませんでした。「映画を撮っている」というよりは「自然が与えてくるアクションに対してリアクションをとる、ドキュメンタリーを撮っているようだった」と振り返っています。

    スクリーンを見ていた監督は、あるインディアンの男性の話を語ります。スターライトをミドルネームに持つその男性は、ある土地に50年以上住んでおり、それまでは他の人々と同じように狩りをしたり、木を切ったりしていたそうです。しかし、1年前に息子が森に出かけたきり帰ってこなくなり、「息子を返してくれたら、今後は一切木を切らず、生き物も殺さない」と誓いながら、大自然にひたすら祈ったとのこと。

    彼の願いが通じたのか、息子は翌日無事に家に戻ってきたので、誓いを守るために殺生はしていないと監督に語ったそうです。この話を聞いた監督は、彼が自然を強大な力を持つ生き物として捉えていることに、いたく感動したと言います。

    クルーはカルガリーで撮影をしていましたが、そこで監督はたった1度の気温の上昇が自然にどのような変化をもたらすのか? を身をもって体験したのだとか。最後の川のシーンを撮影するにあたり、予定としては深い雪の中でという設定だったにも関わらず、雪が完全に溶けてしまったのです。

    にっちもさっちもいかない状況に陥り、2015年4月、前例のない気候変化によってカナダでの撮影は強制的に中止に。その5カ月後、クルーはアルゼンチンのウシュアイアに移り、撮影を再開させます。

    「グラスは痛みや怒りから復讐心を抱きますが、私はその復讐心を通して、キャラクターにあらゆる角度からの復讐よりも、もっと意味のあるものに気付かせたいと考えました。人は復讐を成し遂げた途端に生きる意味を失ってしまいます。それが生きる糧となり、相手を傷つけたところで、その糧を失ってしまうのです」と監督は話します。

    ドキュメンタリーのラストではインディアンの女性がフォレスト・グッドラックに「あなたの家はここだから、いつの日かここに戻ってくるかもしれませんが、その時、どんな環境になっていることを望みますか?」と問いかけます。

    それに対して「良くわからないけれど......失われてしまうかもしれない美しい自然、かつて豊富に存在した美しい自然があれば。僕が望むのは、全ての世代にとっての改善かな」とグッドラックは答えます。

    きょうび、エネルギー供給会社はカナダの北方森林の奥深くにタールサンド(油砂)のために資源を開発し、原住民のコミュニティを立ち退かせ、熱波を引き起こしているのです。

    資本主義の批判ともとれるテーマを持つ『レヴェナント: 蘇えりし者』を通して、監督は「今戦わなければ、私たちは将来動物になってしまう」と、今の世の中のあり方に警告を発しているようです。



    『レヴェナント:蘇えりし者』は2016年4月22(金)TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー。

    (c) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.


    The Revenant | "A World Unseen" Documentary[YouTube]
    映画『レヴェナント:蘇えりし者』オフィシャルサイト

    中川真知子

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2016/02/the-revenant-making.html
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