こんにちは。7月最初のむしマガをお届けします。

・ロンサム・ジョージ死去

 1972年にガラパゴス諸島のピンタ島で発見された、ピンタゾウガメのロンサム・ジョージが死去しました。推定享年100歳以上です。

ガラパゴス諸島の「ロンサム・ジョージ」死す、ピンタゾウガメ絶滅

 ピンタゾウガメはロンサムジョージが最後の一頭として確認されており、他亜種ゾウガメのメスを一緒に飼育して繁殖させようと試みられていましたが、結局子孫を残すことはできませんでした。

 死因は心臓疾患によるものだと思われていますが、これを特定するために解剖されたとのこと。

 で、気になるのは、その後の死体の処理です。遺伝子工学技術、つまりクローン技術でピンタゾウガメを将来復活させるために、ロンサム・ジョージの組織を凍結保存しているのかどうなのか。

 そうなんです。クローン技術は、絶滅危惧種の保護にも応用できるんですね。

 意外と数年後には、ロンサム・ジョージのクローンがひょっこり登場するかもしれません。

 ところで、ロンサム・ジョージが死んでいるのを発見したのは、このカメが捕獲された1972年から40年間にわたって飼育を担当してきたというファウスト・ジェレナさん。

ロンサム・ジョージとファウスト・ジェレナさん
 
 ジェレナさんさんの胸中を想像すると、切ない気分になります。ちょっとしんみりした話題から入りましたが、クマムシトリビアをどうぞ。

★クマムシトリビア その13

 読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。

◆ 質問:

 クマムシは乾燥した仮死状態で何年くらい生きられるんですか?永久に生きられるんでしょうか?(その2)

◇ 回答:

 今回は、乾眠状態のクマムシが果たして半永久的に生き続けられるかは可能かどうかを論じていきたいと思います。

 結論から言うと、これは条件次第では可能です。

 では、なぜ可能と言えるのか。この理由を説明するためにはまず、乾眠状態のクマムシが時間経過とともに生存率が下がっていく理由を考える必要があります。

・酸化ダメージ

 乾眠状態のクマムシは、代謝がほぼゼロであると考えられています。つまり、通常の老化もおきていないとみなせます。

 それではなぜ、乾眠状態のクマムシは時間の経過とともに復活することが難しくなっていくのでしょうか。

 それは、クマムシの周りの空気中の酸素が悪さをすためだと考えられているからです。

 むしマガ Vol.26のクマムシ研究日誌でも書きましたが、乾眠クマムシは周囲の酸素によって酸化ダメージ受けて死んでしまうと推察されます

 クマムシを構成する生体分子が酸化されると、これらの分子が生命活動を営む上で必要な本来の機能を失ってしまうために、ダメージが蓄積して死に至る。そう考えられるのです。

 ということは、逆に考えればクマムシに酸化ダメージが起きないようにしてやれば、半永久的に生きることが可能になるはずです。理論では。

 つまり、クマムシの周りから酸素を取り除いてやれば良いのですね。通常、動物にとって酸素は無くてはならない元素ですが、この場合は無酸素状態にすることで永遠の生命体になれるというわけです。とってもSFチック。

 実際、クマムシと同様に乾眠能力をもつブラインシュリンプ(シーモンキー)の乾燥卵は真空で保存した方が、酸素のある条件よりも長く生存したという研究報告があります。