今回は短い章なので、「ココマデ」はナシにして無料公開にしてみます。もう少し草薙君がモテる理由を「描写」すべきだった、というのが、ありがちな反省点。
高村と二人で中庭を横切る。
「……あのさ、あの地下室のことは」
「言わないわよ。生徒会には筒抜けだけど、一応機密事項扱いですから」
「FSBかGPUか、ウチの生徒会……」
「それにね、」
高村は僕より半歩前に出て、
「室見先輩の言うこともわかるの。三つくらい隠れ家が残っていたほうが精神衛生上いいわ」
「ムロさんがいても?」
「あんな人だけど、たぶん一線はわきまえていると思う。猫と遊んでいる感じなんじゃないかしら、室見先輩にしてみたら」
「だからあんなに無防備というか、アレなのか」
「猫にパンツ見られても害はないものね」
僕は仏頂面でペプシの残りを飲み干す。
「いったいどこまでヘタレスケベだと思われているんだ俺は」
「じゃあ女殺しと思われたほうがいい?」
高村が何やら楽しげに言う。
「思わないでくれ、是非とも。事実無根だし」
「事実その一。去年生徒会の書記だった水木先輩、白ちゃんがいなければあたし告るのになーって三回くらいこぼしてた」
「……マジ?」
衝撃の事実だ。あの二年連続で学園祭にメイド喫茶を出店した水木さんが。
「その二。今年のヴァレンタインの日、春香にチョコあげた西山さん、本当は草薙君にあげるつもりだった」
「はァ?」
「でもあなたたちの痴話喧嘩を見て無理だと悟り、代わりに憧れの先輩ではあった春香に渡した。先月の生徒会連絡会議で聞いた話よ」
あのときの、気弱そうで小柄な女生徒の顔を思い出す。
「俺の与り知らんところで巨大な陰謀が動いている……」
「その三」
「まだあるのか!」
「この二人と同じ理由で諦めた同級生が一人」
「それも超初耳」
げんなりとうめくと、
「ごく親しい友達にしか打ち明けてないらしいから。それに、むしろあなたたちの夫婦漫才を眺めているほうが好きだって言ってた」
「そこまでモテる理由がまるでわからん」
「一緒にいて楽しそう、とかそんなこと思ったんじゃない? あなたと春香を見ていて」
「……なんかヤな罪悪感覚え始めたよ」
足取りが重くなってきた。高村、立ち止まって僕を振り返る。
「別にあなたが気に病む必要はないわよ。彼女たち自身の問題だもの。それに皆、春香のことも好きだし」
「バカのくせにカリスマ性があるのが気に食わん」
「文字通り春の陽気みたいな子だものね。まあ、時々真夏日になるけど」
高村は再び歩き出す。
「ねえ」
「何だよ」
「ロリコン写真集見なかったの?」
ずっこけそうになった。
「そんなところから聞いてたのか! 天地神明に誓って見てねえ! 家族に見つかったら俺は社会的に死ぬ」
「家に一人だったとしても見ない?」
「見るか! 伊瀬と一緒にするな!」
「本当に見ない?」
「……」
「…………」
「………………自分がロリコンではないことを確認する」
高村がくすりと笑う。
「そういう正直なところが好感持たれるんじゃない? ……それじゃあ」
「今度は何だよ!」
「胸の小さい女の子が好きなの?」
「だからムロさんの言葉を真に受けるなよ! ……たまたま、俺の周りに貧乳女ばかりいるだけだな。春香といい、由紀といいムロさんといい」
「ふうん」
高村は腕組みした。そしてもう一回、
「ふうん」