1月3日、2016年の最強戦予備予選が始まった。
2016年最強戦の皮切りは、女流プロ出場枠争奪戦。これは、3月12日に予定されている「女流プロ代表決定戦」に出場する権利を争うものだ。
ちなみに、3月12日の女流プロ代表決定戦は、A卓には清水香織(プロ連盟)、和久津晶(プロ連盟)、豊後葵(プロ協会)、B卓には二階堂亜樹(プロ連盟)、石田亜沙巳(プロ連盟)、高宮まり(プロ連盟)、東城りお(プロ連盟)の出場が決まっている。
今回の「女流プロ出場枠争奪戦」はA卓の残りひとつの椅子を目指す戦いで、出場者は
愛内よしえ(プロ協会・第12回野口恭一郎賞)
上野あいみ(プロ協会・第9期麻雀女王)
松岡千晶(プロ連盟・初代最強戦ガールズ)
菅原千瑛(プロ連盟・2代目最強戦ガールズ)
の4人。半荘2回で、トータルポイント首位の1名が、女流プロ代表決定戦への参加資格を得る。
1回戦は起家から上野・愛内・菅原・松岡の並びでスタートした。
最初のアガリは愛内。
7巡目にをチー、8巡目にをチーして純チャン三色の聴牌。同巡菅原もテンパイしたが、上野が愛内にで3900を放銃した。
このときの上野の手牌は
ツモ ドラ
このイーシャンテンからの放銃について、上野は「親なので前に出た感じ。が暗刻になることはないだろうから先に切ってリャンメン固定しておこうと思った。愛内がどこでテンパイしているかとか考えていなかった」と。
(左は今年の最強戦ガール東日本担当優月みか、右は上野あいみ)
ピンズを二つ鳴かせて、チャンタも三色も警戒していなかったとは、愛内のことを甘く見すぎているのではないかと思うが、その後の上野は東3局の菅原のリーチなどには丁寧に対応して、手堅い麻雀を見せる。
しばらく小場の展開が続くが、1回戦の決め手となったのは南3局2本場。
スコアは
菅原31.2
松岡24.9
上野12.6
愛内30.3
親の菅原は5巡目に高め一気通貫のテンパイでリーチ。
ドラ
自風のポン含めて3フーロしてテンパイしている愛内が、菅原リーチの一発目にドラを打って真っ向勝負を挑むが、菅原が高めを一発ツモ。6000は6200オールで、一気に他の3人との差を広げた。
のちに松岡はこの局について「愛内が切ったドラをポンできたのに、声が出なかった」と語る。
菅原のリーチを受けてとりあえず字牌を切った下家松岡の手は
「親の菅原のリーチと、そのリーチの一発目にドラを迷わずツモ切る愛内に向かっていけなかった」と唇をかむ松岡。「東場での手順ミスを引きずっていたのかもしれません。345の三色を見ないといけない時にをツモ切ってしまい、自分でも緊張していたと、反省しています」。
その東3局の松岡の手牌は
ツモ ドラ
をツモ切った直後、おでこに手をやった松岡のしぐさはとてもかわいらしくて、
見る者にも「すぐ失敗に気が付いたんだな」とわかったのだが、その失敗を南場まで引きずっていたとは意外だった。
1回戦はこのまま菅原のトップで終了。順位点とオカを加算して
1位 菅原+72.1
2位 愛内+4.1
3位 松岡▲19.4
4位 上野▲56.8
2回戦は起家から松岡・菅原・上野・愛内。菅原を追う愛内が北家で、時間打ち切りなしとなると、俄然、愛内逆転の可能性が高まる。
2回戦では3人とも「とにかく菅原の点棒を削りたい」と思っているのに、東2局流れて1本場に親の菅原がまた一気通貫をアガる。
菅原は配牌でドラのがトイツ。まず10巡目でこのテンパイ。
ドラ
13巡目にとを入れ替え、嵌のテンパイ。
14巡目にを引き入れと入れ替え、次巡、ツモ。
ツモ ドラ
4000は4100オールでトップに躍り出た。
追う愛内は東4局の親番で10巡目にテンパイ、松岡の切ったを見逃す。
ドラ
そして見逃した後すぐにリーチするも、流局。
さらに東4局1本場でも12巡目にテンパイするがダマ。
アンカン ドラ・
そして松岡のを見逃し、17巡目にリーチするも、流局。
「なぜすぐにリーチしなかったのか? なぜ見逃したのか?」と愛内に聞くと
「最終的には1対1の戦いになるが、あの時点でまだ他の人の点棒を減らして1対1になりたくなかった。リーチしなければ菅原から出るかもしれない。ただ、ワキから出たらリーチしようと決めていた」と。
この愛内のダマと見逃しについて、一緒に観戦していた優月みかプロ(プロ連盟・2016年最強戦ガールズ)のコメントが印象的だった。
「北家スタートは追う立場として有利だけど、東4局と南4局は違うと思う。オーラスは本当に1対1で、ワキの二人は勝負を決する牌をなかなか打たないので、苦しくなるのは目に見えている。ワキからアガリ牌が出てくる東4局に点棒を増やしておいてもよいのではないか」。
68ポイントを追うときに北家に座ってどう戦うのか、選択肢はいくつかある。そこで愛内が「追う立場ならこう打とう」と決めていて、その通りに打ったのはわかる。ただそこに、相手3人を見たうえでの柔軟性があってもよかったのかもしれない。
南入して局が進み、のちに菅原が「一番苦しかった」と言った南3局。菅原は「愛内に放銃しないこと、親にも放銃しないこと、戦える形にならない以上、無謀なことはしないこと」と、自分に言い聞かせ、序盤から親の現物を手に残すなど、完全な守備体制に入る。
ところが親・上野が必死の粘りを見せ、点棒移動は小さいものの局が進まない。南3局3本場、愛内がリーチ。その直後、菅原は松岡が切ったをポン、自ら決めに行く姿勢に転じる。
愛内のリーチは
ドラ
菅原は
ポン
この勝負は愛内がをツモって2000・4000は2300・4300。ついに愛内がこの半荘トップめに立ち、南4局へ。
しかし南4局はをポンした菅原が上野のをとらえてアガリ切り、愛内に追撃の機会を与えないまま勝ち上がりを決めた。
ポン ロン
勝者の菅原は、2014年の最強戦ガールズをつとめ、2015年全日本プロ代表決定戦でも健闘した美女。今回、「女流代表決定戦A卓」への参加が決まり、その活躍に期待が高まる。
興奮がさめやらぬ状態の菅原に、今の気持ちを語ってもらった。「1か月前にこのお話をもらった時、自分が最強戦ガールズだった時のことを思い出して、ぜひ頑張りたいと思いました。このチャンスを生かせてうれしいです。今日当たった3人とは、打ったことがありました。愛内さんとは八王子の京王で一緒に働いていましたし、上野さんとは池袋のキングダムの同僚です、松岡さんはプロ連盟の半期先輩なので、女流の勉強会や女流桜花でも打つ機会があります。じつは、対松岡さんの成績がよくなかったので、今日は勝てて本当に良かったです」
3月12日の対戦相手についてはどうだろう?
「プロ連盟の先輩の和久津さんとは打ったことがありますが、豊後さん、清水さんとは打ったことがないんです。でも、映像の対局はよく見ています。2か月後の決定戦に備えて、最強戦ルールのセットを数多くやって力をつけたいです」
2016年の最強戦はまだ始まったばかり。今後も熱い戦いを期待したい。