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ペニオク事件から広告の現在を考える。橘川幸夫
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ペニオク事件から広告の現在を考える。橘川幸夫

2012-12-17 14:25
    ペニオク事件から広告の現在を考える。

    1.ペニオク事件
    2.広告とは何か。
    3.現代社会と広告

    1.ペニオク事件

    ◇2012年12月7日にペニーオークション(通称ペニオク)の「ワールドオークション」の詐欺事件に伴い、ギャラをもらって自分のブログにステマ記事を書き込んだ芸能人が問題になっている。ステマはステルスマーケティングの略で、消費者に分からないように宣伝する技術。この問題には、インターネット時代の根本的な問題が横たわっている。

    ◇ペニオクというのは、欧米で流行ってるオークションサイトで、商品はオークション側で用意し、入札単位で手数料がかかるので、1回で落札すれば激安で入手出来るが、購入希望者が多くて何度も入札すると手数料も多くなる。ワールドは、Botを使い、機械的に入札回数を多くして手数料を高くしていたようだ。

    ◇ほしのあきや小森純などは、自分のブログで30万から40万円のギャラをもらってステマ記事を書いていた。アメブロではブログを活性化させるために芸能人にシステムを提供していたから、アメブロを舞台にした場合が多い。芸能人もインターネットの効果を認識して以来、積極的にインターネットを活用していた。中には自らの表現衝動からブログやTwitterを始める芸能人もいるだろうが、多くの場合は、新しい宣伝ツールとしてしか考えていなかっただろう。ブログやTwitterは個人の性格や感性がそのまま出るので、事務所の人間に代筆させたら、すぐにバレる。アメブロの場合は、本人が書いて事務所の人間がチェックをしているのだと思う。

    ◇今回の事件は、事務所のチェックがなくて、タレント本人がブログの内容を管理している場合で起きたと思われる。タレントからすれば、財界人の宴席に呼ばれて、ご祝儀をもらってスピーチするような感覚だろう。事務所を通らない報酬で、請求書も領収書もない「とっぱらい」であれば税務署の調査が入るだろう。

    ◇インターネットはテレビのように電波枠の既得権益がないから、誰でも情報発信できる。だから本来であれば、テレビタレントのような価値は意味がないのだが、やはり、古い価値観はまだまだ強力で、テレビの有名人はインターネットでも吸引力があり、インターネットで有名になってテレビに進出する者もいる。

    ◇インターネットの情報は、基本的には全ての責任は発信した個人にある。テレビや雑誌などの旧来のメディアは、個人とプロダクションなどの事務所や発行媒体が責任を取る。タレントは純粋な個人ではなく、メディアビジネスのパーツの一つであり、個人の言動は事務所が管理している。今回の事件は、事務所に管理されていたタレントが個人の判断でビジネスをしてしまったことにある。

    ◇これは、今後、電子書籍の発行ソリューションの簡易化により、旧来の編集者がいないところで表現を開始するであろう、多くの著者が抱えるリスクに通じる。これまでは著者は好き放題に書いても、編集者がチェックをして社会的にまずいと思う箇所については制限を加えていた。しかし、電子書籍になって、著者がそのまま発行者の時代になると、ペニオクのような危ない情報を平気で発信する人間が増えてくるだろう。

    ◇しかし、だからといって、編集者や出版社が個人を管理する旧来のメディア体制が優れているとは思わない。組織の縛りを超えて、個人がインターネットや電子書籍で自分をあらわにしていく時代の流れは止めてはならない。その時に、旧来の組織や他の人間に守られていたタレント意識は捨てなければならない。単なるエンターティナーではなく、社会性を身にまとった表現者と編集者が一体となった存在が必要となるのである。アーティストとエディターを組み合わせて、アーディターとでも呼ぼうか。
     
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    橘川幸夫放送局通信
    更新頻度: 不定期
    最終更新日:2015-03-24 09:21
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