メデイア古老譚(1)本屋さんの巻


昔、新宿に紀伊国屋書店の田辺茂一という店主がいて、書店に訪れる文学者との交流で、有名人になった。70年代までの新宿は、喫茶店の町で、青蛾とかランブルとか風月堂といった喫茶店には、紀伊国屋で買った本を読みふける若者たちが多くいた。

DIGや木馬といったJAZZ喫茶でも、音楽が鳴り響いている中で、こむづかしい本を若者たちが読んでいたさ。新宿は早稲田大学の町でもあり、早稲田の学生が多かったな。茂一さんは銀座で飲んでたんだが。

紀伊国屋のすぐそばにアメリカ屋靴店という靴屋があり、多いに繁盛していたものだ。

この靴屋の店主が、いつも納得がいかなかったのは、同じ商いをしていながら、紀伊国屋の田辺つあんは文化人として雑誌にもよくとりあげられているのに、自分のところは儲けてはいるが、文化人になれない。

それで、ある時、思い切って自分も書店をはじめることにしたんだ。それも銀