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【過去記事リバイバル】ミカド店長イケダミノロックの業務日誌「JAEPO2019奮闘記」
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【過去記事リバイバル】ミカド店長イケダミノロックの業務日誌「JAEPO2019奮闘記」

2020-04-27 17:00

     海外出張から帰るなり、溜まりまくった打ち合わせや仕事の山!! そこで今回は「JAEPO2019」の事前準備から終わるまでを記しておく。 

    ■1月21日 15:30〜@秋葉原
     協力いただいている基板屋・マックジャパンさんで打ち合わせ。筐体搬入や『exA』基板設置などの段取り、撤収の流れを確認。レイアウトがけっこうキツキツで、出たとこ勝負になりそうな予感……(汗)。

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    17:00〜@御茶ノ水
     吉川くんの会社であるシティコネクションにエリックと訪問。詳細は話せないが、話がうまくまとまった結果、翌日にシティコネクション所属のちゃんたけをエリックの会社へ連れて行くことに。ついでに吉川くんにバンドの音源も渡す。
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    19:00〜@池袋
     ミカドに戻ってファミ通さんと打ち合わせ。2月のファミ通さん主催のHMR出演ライブについて、セトリや権利処理、演奏時間、告知のタイミングなど確認事項をチェック。

    20:00〜@池袋
     ミカドグッズの通信販売サイト「Neophilia Labo」を運営してくださっているジャストスタイルの本田さん、WASi303さん、そして元ミカドスタッフである某氏を居酒屋に呼び出し、全員まとめて打ち合わせ。みんな知り合いだからこそ可能な強引な手段だが、これは相当な時間短縮になった(笑)。俺は打ち合わせをできる限り1日で終わらせたい主義なのだ。なんとか3人と話をまとめ、終電近くまで飲んで帰宅。明日も頑張ろう!

    ■1月22日 12:00〜@原宿
     ちゃんたけと明治神宮前で待ち合わせてエリックのオフィスへ。俺とちゃんたけは別々の用事だったが、一緒に来ればエリックも時短になるだろう(笑)。途中でマックジャパンの千賀社長と合流し、「JAEPO2019」のパスやトラックの入館証を受け渡し。前日搬入の確認。その後、ちゃんたけを置いて離脱。

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    15:30〜@高田馬場
     馬場ミカドに移動し、溜め込んだ事務処理メール処理をひたすらやっつける作業。ギリギリだが、JAEPOのブースで実施するイベント用備品の運送手配もバッチリだ。

    20:00〜@赤坂
     アニメ『ハイスコアガール』のBD/DVDの特典映像の解説コメンタリー収録。今回の4回目で遂に最終回となる。ところが、参加するはずのプレイヤーがなんとインフルエンザで2人欠席!! 『真サム』勢のD3D、『KOF95』勢DEB、そして俺の3名で収録に挑む。

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     アニメの画撮は『真サム』も『KOF95』も劇中の時代背景に沿ったテクニックで収録されているのが特徴だが、『KOF95』は本当に死ぬのが速い(笑)。なのにDEBくんが「2019年の今ならもっと早く殺せます」とか言ってるのがおかしくてさ、終始ゲラゲラ笑いながらダベってるだけで撮り直しナシの一発OKだった(笑)。

     しかし、自分で言うのも何だが、こんなミカド配信まんまなコメンタリーで本当に大丈夫なのだろうか? お客さんが喜んでいただけると幸いである(笑)。アニメ『ハイスコアガール』は本当に素晴らしい作品だった。いまさらすぎるが、関われたことを誇りに思うね。

     さあ、明日も仕事が盛りだくさんだ。

    ■1月23日 12:00〜@高田馬場
     ミカドに出勤して「JAEPO2019」出展用部材の確認。イベント用のマイク、ミキサー、配線類、『exA』をビューリックス筐体に繋げるために必要なタイトー製のJVS規格I/O基板、スタッフ用のTシャツなどなど、忘れ物がないかチェック。明日のお昼にトラックをチャーターしてこれらを会場まで運び込む手はずだ。

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     今回は各種チラシ、インストカード類のデザイン、印刷はスプロケの安部さんに発注し、ブースに立つキャンギャルの手配はルパン小島さんの彼女(本職)にまる投げした。ビューリックス筐体はタイトーさんからのレンタルだ。

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     昨年とは違って出展タイトルがたくさんあるし、2コマといえども相当な人力とコストが掛かっており、ボスであるエリックもいい感じにテンパってきている(笑)。なお「JAEPO2019」出展にあたり、タノシマスさんにはゲームの開発に集中してもらった。昨年は木村社長や藤岡くんだけでなく、木村社長の奥様も巻き込んで何もかも手伝ってもらったのだが、今年は発売を間近に控えていることもあり、余計な心配ごとを増やしたくなかったのが本音。やはり『アカとブルー TYPE-R』は、我々『exA』ブースの主役であり、対応ソフト第一弾として『exA』の命運を握るキラータイトルなのだ。

    15:00〜@神谷町
     新宿で大塚ギチくんと待ち合わせ。ギチくんの会社倒産に関し、本人と担当弁護士の先生と俺の3人で管財人と話し合い。なぜ俺が立ち会うの?ってわけだが、ギチくんが経営していたアンダーセルの事務所を明け渡すことに関し、俺がいたほうが話が早いだろうという判断のためだ。

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     通常、アンダーセルに置き去りになった部備品は資産として計上され、債権者に分配される流れとなる。しかし、アンダーセルに残されたものは事務机や収納ラックなど、値段が付かないものしかない。はっきり言えばゴミなのだが、それをわかっていても手続きなしに勝手に捨てることができないのが倒産の難しいところだ。

     しかし事務所の明け渡しが長引くと家賃をはじめ、ずるずるとコストが嵩んでゆくし、物件を管理する不動産屋や大家さんに迷惑がかかり、管財人の手間も増えていくのも事実。なので、俺がアンダーセルが残した部備品をすべて買い取るという形でお話しをさせてもらった。そうすることで残存物を綺麗に廃棄でき、物件も素早く明け渡せる。要するに買い取りという名の廃棄費用を俺が払えば何もかも手っ取り早く次のステップに進めるわけだ。

     え? ギチくんに対してなんで俺がリスク負うの? なんかメリットあるの?

     バカやろう!! 金失うだけでなんにもねーよ!!!!

     すべては義理人情の話だ。俺はギチくんに今までしてもらった恩に対する「義理」と「人情」で動いているにすぎない。そこに計算なんて何もない! 吉川晃司のセリフではないが「じゃあ、逆に人から義理人情を抜いたら何が残るんだ?」と。同感だ。

     行動原理に金やメンツだけの奴が俺は大っ嫌いだし、助けていただいたみなさんの期待に応えるべく、大塚ギチにはとっとと復帰してもらわなければならん。遠回りしている時間はないのだ。

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     ……っつーことで話がまとまったので、今日はおひらき。次回は30日に三鷹の事務所で管財人と会うことになる。事務所を出てギチくんと遅めの昼食の後、タクシーで馬場へ。

    ■1月24日 11:00〜@自宅
     起床して幕張で宿泊するための準備。前年の反省を活かし、「JAEPO」開催期間中はホテルに滞在する予約を半年前に済ませてある。息子のゲーミングPC用のリュックを借り、4日分の着替えを詰め込み、高田馬場ミカドへ移動。備品類を幕張行きのトラックに詰め込んで、いざ「JAEPO2019」の会場である幕張メッセへ電車で移動開始!

    13:00~
     京葉線に乗車中、エリックよりメール。

    「『exA』基板のグラフィックボード認識不良が改善できない。今日は3台しか準備できない」

    ……イベントにトラブルは付き物だが、大丈夫かな?(笑)。

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    14:00~
     幕張メッセに到着。

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     サファリゲームズさんのブースでヤグラが設置されるを待つ。

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     設置完了後、タイトーさんからお借りした10台のビューリックス筐体をブースに設置。

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     せ、狭い……これ10台は無理じゃねーか?!(理論上は10台設置できるが、配信スペースやお客さんの待機列を考慮すると空間が狭すぎるのだ)。

     なんとかエリックを説得し、ひとまず8台の設置とする。このタイミングで高田馬場ミカドから部備品を積んだトラックが到着。ブースに入り切らなかった2台のビューリックスを27日の搬出時まで預かってもらえないかどうか、ドライバーさんと交渉。そして無事に成立。

     しかし、搬入日にこのやりとりはないだろ! マジで綱渡りだ……。

    15:30~
     タイトーさんからお借りしたビューリックスは「ダイア」という新しいモデルで、搭載されているI/O基板はNESiCA用の高速I/O基板となっている。協力会社のマックジャパンさんとミカドの在庫から引っ掻き集めたビューリックス用JVS I/O基板を全台分入れ替え、3台分の『exA』基板をインストール。残り5台分については、エリックがスタッフを総出し、明治神宮前の事務所で不具合解消と組み込みを徹夜でやるようだ。エリックはここで一時、撤収。

    16:00~
     新作発表会用のイベントステージを設置するも、やはり狭過ぎて撤廃(涙)。図面を見ていても、現実に設置してみないことには本当にわからないことばかりだ(涙)。ここでタノシマス勢が到着する。

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    17:00~
     ミカドから運びこんだビューリックス用の椅子がなぜか足りない……。10脚を積み込んだつもりが、なぜか5台分しかないことに気づく。前日、あんなに確認したのにこの体たらく。仕方がないので、ダメ元でタイトーブースに出向き、NESiCAxLiveのトップである菊池さんに頭を下げ、椅子が足りない旨を伝えたところ、快くビューリックス用の椅子を貸してもらえることに(号泣)。菊池さん……あなたは神か、お釈迦さまか!? ただただ感動……ありがとうございます!!

    19:00~
     スプロケの安部さんより、仕事の都合でフライヤーとインスト類の前日搬入・設置が不可能になったとの連絡を受ける。ちなみに搬入は20:00がタイムリミットで、それ以降は作業するのにコストが掛かってしまう。サファリゲームズさんのブースを間借りしている立場の我々がタイムリミットを破ることは不可能だ。

    ・残り5台分の『exA』基板インストール
    ・インスト、ポスターの設置
    ・配信スペースの確保
    ・配信コンテンツを固める

     こうした作業を残したまま、無念のタイムアップ。

     ……明日は本番だぞ? 本当に大丈夫なのか? という状態で搬入日は終了となった。

    ■1月25日 6:30~
     起床して身支度を済ませる。朝飯はホテル併設のコンビニでおにぎりやらサンドイッチやら食す。「JAEPO2019」1日目のビジネスデーは、店舗関係者(オペレーター)、販売関係者(ディストリビューター)といったアミューズメント事業を行なっている方々が訪れる日となる。

     昨今のゲーム系ショーについて、一般日はただのイベント会場になってしまったと俺は思っている。ゲーセンが好きな人というよりも、むしろイベント好きな人が集まる空間と化しているのはすごく興行的だし、協会は大儲けであろう……(実際のところ、ゲーセンファンって一般日は『exA』ブースにしかいなかったんじゃないか?と思っている)。

     なので「『exA』を買いたい!」と思ってくれる業者のみなさまは今日しか来ない! 頑張ろう!

    8:00~
     印刷物を任せていたスプロケの安部さんが到着。幕張メッセの駐車場から『exA』関連のポスター、フライヤー、インストカードなどをブースに運び込む。ブースに到着すると、昨日は3台しか稼働していなかった『exA』基板が8台フル稼働! エリックをはじめ、総出したスタッフが完徹でなんとかしたようだ。

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    9:00~
     切り出されたインストカードのパネル組み込み、ポスターのフレーム組み込み、装飾、配布用フライヤーのセット、ビューリックスのキャスター下げ、イベント用のアンプとマイクのセッティングなどなど、総出で作業開始。昨年7月のCAXから帰国してすぐさま、この日のために準備をしてきたのに、すべての準備が終わったのが「JAEPO2019」入場開始30秒前とか(笑)。ふぅ、なんとか間に合ったぜ……!

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    11:00~
     ルパン小島の彼女に手配してもらったコンパニオンさんが到着。軽く打ち合わせて、フライヤー配布をお願いする。

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    12:00~
     エリックとイベント配信の打ち合わせ。「これがスケジュールです!」と、エクセル表をいきなり当日に渡される(笑)。なるほど、これはぶっつけだな?(笑)。

    14:00~
     会場で「司会者・イケダミノロック業務」開始。株式会社TATSUJINの『exA』参入発表。社長の弓削(雅稔)さんとは面識があるからラクだ(笑)。東亜プラン時代の裏話を振ったり、弓削さんが過去に手がけたBGMにも言及。

    15:00~
     エリックと手分けし、興味を持っていただいた業者の方々(20件以上!)に『exA』基板の説明をさせていただいた。国内はもちろん、ベトナム、台湾の業者さんと名刺を交換することができた。みんな『exA』に興味津々で、やはり課金0円は魅力的なようだ。

     ここで語ることでもないが、ビデオゲームというジャンルが極端に減ってしまった原因は、大手メーカーがビデオゲームの新作をゲームセンターへリリースしても採算が取れなくなったというのが要因だ。

     では、なぜ採算が合わないのか?

    ・ハードの高性能化による開発費増加
    ・ゲームセンターの減少に伴う販売・売上の低下

     開発費は上がったのに、買う人が減っているという状況がまずベースにある。

     大手メーカーに限らず、ゲームメーカーは予算や売上目標という数字と日々戦いながら運営されている。ゆえに黒字にならなければどんな仕事でも実現できるというわけじゃない。どうせ時間と手間をかけてゲームを開発するならば、より売上の高い仕事を優先・実現していく。そうなると、自ずとアーケードビデオゲームの開発は優先度が低くなってしまう。

     業界紙の調査によると、ビデオゲームジャンルの日本国内全体の売上は1995年を頂点に下降したと言われているが、2000年代に入ると、大手ゲームメーカーはビデオゲームジャンルのあり方を今までの汎用筐体稼働ありきから、大型化への道を選択した。『ダービーオーナーズクラブ』からはじまったステーション型タイプのゲーム、『麻雀格闘倶楽部』『艦これAC』『FGOAC』も広く言えばビデオゲームジャンルである。

     しかし、大型機は導入コストが高いため、体力のあるゲームセンターでしか稼働することが難しく、先に挙げたタイトルのようにゲーム内容が完全に求める客への決め撃ちとなってしまう。そのため、ハズレたときのリスクは店舗側にとって非常に高くなっており、それを回避する手段もディスカウント以外にこれといってなく、近年この手法には限界が近づいているのではないかと俺は睨んでいる。

     大型化と同時に一部の大手メーカーが『exA』のように旗を振り、『NAOMI』『TYPE-X』といった汎用マザーボードをリリースしていく流れもあったのだが、90年代のゲームセンターを潤わせた大ヒット基板であるカプコンの『CPS2』やSNKの『MVS』といったマザーボードのように長くは続かなかった。

     その要因は新規格「JVS」の導入と、それによる筐体の買い替えを余儀なくされる点だ。コストも伴って跳ね上がり、それに見合ったゲームタイトルを開発できなくなったと考えられている。しかし俺自身が予測する一番の要因は、こういった基板・筐体をゲームセンターに販売するディストリビューターが2008年前後に相次いで倒産したことだと思っている。

     メーカーが多数の汎用マザーや16:9の筐体をディストリビューターに卸販売したものの、エイブル、AMI、PICといった大手ディストリビューターが連鎖的に倒産してしまい、卸した多額の債権を回収できなかったわけだ。

     その反省を活かし、在庫リスクのない『NESiCAxLive』や『ALL.Net P-ras MULTI』といった配信形式のゲーム供給システムが生まれた。ディストリビューターを介さず、1プレイ料金から課金を取ることで売上とするスキームのもと、ゲームメーカーとしては在庫リスクや生産コストがかからないうえに販売の手間もいらない。ロケーション的には「新作が発売日に供給される」という、一見するとメリットだらけのシステムだが、未だに全国的なヒットタイトルを供給できていないし、相変わらず開発費は上昇しているし、さらには店も減っている。最近では新作の供給もままならず「ありもの」(すでに家庭用でリリースされているタイトル)ばかり配信されるようになった。リリースの瞬間から、プレイヤーは家庭用でやり込んでるやつに初狩りされるし、課金があるので大会などの企画に制限もある。大手以外の店側はゲームを販促し、盛り上げることが不可能となってしまったのだ。

     「入荷しました!」とツイートすればインカムが上がる時代ではないし、課金があるからレンタル運用もできない……つまり、SC(ショッピングセンター)や駄菓子屋さんに『NESiCAxLive』や『ALL.Net P-ras MULTI』は設置できない。これでは若いプレイヤー、ゲームセンターファンも育てるのは不可能だ。

     大型化したのと同様に、課金型配信マザーボードのスキームは既に限界に達していると思う。開発する会社も導入したゲームセンター、遊ぶプレイヤー、誰ひとりとして得がないのである。2019年にもなって、ファミコンのディスクシステム書き換えサービスと同じ失敗をゲームセンターで繰り返しているに過ぎない。情けない話である。

     長々書いてきたが、上の文章の問題点とターニングポイントは――

    ・開発費高騰
    →エリックの会社が半分持ち売上をシェアする

    ・大型化
    →『exA』は汎用基板。ゲームだけでなく、キッズメダルやパチンコやスロットにだって使える

    ・買い替えを余儀なくされる
    →ブラウン管でも稼働します

    ・ヒット作が作れなかった
    →国内海外の大小メーカー問わず、門徒を開いて様々なジャンルのゲームを挑戦的にリリース

    ・販売会社が倒産
    →現在業界最大手の一部上場会社「共和コーポレーション」さんが販売元になってくれた

    ・課金
    →ねーよ、そんなもん! 買ったら利益はお店のものだ!

     こうした諸問題と徹底的に向き合ったのが『exA』基板なのだ。ベンチャーである我々にできることは限られているが、真剣にプレゼンさせてもらった。

    18:00~
     実りある商談がたくさんできた。明日は一般日だ。多数の『アカとブルー TYPE-R』ファンが来ることを想定し、筐体位置を再構築。列ができても大丈夫な準備をして会場を後にする。

    ■1月26日 8:00~
     起床してホテルから会場の幕張メッセへ。今日は一般日ということで「『exA』新作発表会」という配信イベントが朝から多数スケジューリングされているため、簡素ではあるが開場前にブース内に配信スペースを作って準備を進める。

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    10:00~
     開場。予想どおり『アカとブルー TYPE-R』を目当てに来てくれたお客さんたちが長蛇の列をなす。みんな楽しそうにプレイしてくれている。そんな最中、配信スタッフより「ケーブルが足りない」という報告を受け、近くのホームセンターにケーブルの買い出しに出向く。

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    11:00~
     タノシマスの木村社長と藤岡くん、効果音を担当した佐藤豪さんとトークライブ。俺は司会なので、自身の意見を述べるのは控えたが、ここでは『アカとブルー』について俺自身の所感を語る。

     前回のJAEPOの参考出展から一年、あっという間だった。『アカとブルー』というゲームは不思議なパワーがあるタイトルで、関わる人の人生を激動させる。俺はこの数年で「『exA』基板プロジェクト立ち上げ」「ディファ有明でのゲームミュージックライブにて、HEAVY METAL RAIDENはZUNTATAやイトケンらを向こうに回す」「JAEPO2018出展」「アメリカ、タイ、台湾出張」をこなし、音楽の仕事も死ぬほど増え、しまいにはネット上で実業家と呼ばれるまでになった。

     『アカとブルー』に関わって人生が変わった。あり得ないほどに。その不思議なパワーは一年経ってもまったく衰えていない。なぜならば、「JAEPO2019」でも『アカとブルー TYPE-R』には相変わらずの長蛇の列。こんなシューティングゲーム、今まであっただろうか?

     東亜プランのショット&ボンバーのシューティング、セイブ開発の『雷電』シリーズ、ケイブの弾幕シューティングと進化してきた縦スクロールシューティングの系譜は、『アカとブルー』で次の段階に入ったようだ。弾幕シューティングの次の段階は、関わる人とプレイする人を幸せにするサイコフレームみたいな人知を超えた力を持っているシューティングゲーム(笑)。冗談みたいだが本当の話だ。そのくらいのパワーがなければ、今の世の中、ゲームセンターで新作リリースなど叶わないのは事実だ。なので、みんなもこのムーブに乗っかって欲しい。一緒に「さあ、行こうか」だ。

    12:00
     粛々とトークライブをこなして行く。台本もなければ、まだゲーム自体もないメーカーさんとのトークを繋ぐのは本当に大変だ(笑)。そんな中、シティコネクションのトークライブはちゃんたけ、WASi303さんと付き合いが長いので、気楽にやれた気がする。家庭用で大ヒットした『サイヴァリアデルタ』も『exA』でリリース決定。「奮闘記(その2)」を読めばわかるが、あの日にちゃんたけをエリックのオフィスに置いてきたのは、『サイヴァリア デルタ』を『exA』に実装するためだ。

     WASi303さんとのトークで印象深かったのは「よく言われんだよな。『いつまで"雷電”、"サイヴァリア”と言ってるのか?』って」。この問いに対し、俺とWASi303さんには共通認識がある。

     アーケードシューティングゲームは我々の原点であるゆえ、みんなが人生で辛い時、大変なときにいつでも帰って来られる場所としてシューティングゲームを作りつづけ、シューティングゲームの話題を発信し続けなければならない。

     実際、俺たちはたくさんのアーケードゲーム、シューティングゲームに幸せをいただき、その思い出は仕事をするうえでの原動力や糧となっている。なにか人生で迷いが生じたとき、子供の頃にゲームセンターに出向いて感じた思いに立ち返り、今まで何度も困難を乗り越えてきた。これはノスタルジーとは違う、我々の絶対ブレない原点なのだ。

     アーケードゲームは遊んで楽しいだけではない。その時その時に出会った人、空気、感じた思いもセットになって完成する。ゲームセンターという場は、大型レジャー施設とは異質だが、それでもやはり大切で重要な場所だ。そういう意味でWASi303さんはアーケードゲームの本質を理解し、語り、開発できる数少ないクリエイターかもしれない。と、同時に今、40代である我々世代にしかそれはできないことなのだ。『exA』を通じて、アーケードゲームとゲームセンターをアップデートし続け、紡いでいかなければならない。そんな思いが我々にはある。

    18:00
     締めのトークをタノシマスの木村社長と実施。『アカとブルー TYPE-R』はアーケード版しか出さない!あの日のサファリゲームズのブースは、アーケードゲームとビデオゲーム愛のゲージを振り切ったとてつもなく濃い場所だったと思う。

     そのほか明確になり次第、共和コーポレーションやサファリゲームズさんに販売情報が全国の販売店やゲームセンターに流れます。また、個人向けの限定版販売なども予定。

    以上。

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     さぁ、「JAEPO2019」も明日で最後。食堂のカツカレーも食い納めだ。

    ■1月27日 10:00~
     いよいよ一般最終日、前日飲みすぎたせいで起床が遅れ、10時少し前にホテルをチェックアウトして会場入り。かつて俺が在籍していたアイモの後輩が遊びに来てくれた。現在ラウンドワンの課長で店舗統括マネージャーを務めている、後輩陣の出世株のひとりである。もちろんエリックに繋いで『exA』を営業だ!!

    11:00~
     今日の新作発表会は配信機材の調子が悪かったため、トークを配信ではなく録画して公開することになった。マインドウェア社も発表していたが、4人同時プレイ可能ゲームは『exA』の真骨頂のジャンルだ。会場でも話したとおり、最近は4人で遊ぶのに4枚の基板を買わなくちゃならないし、トライアングル・サービスさんの『ゲーセン ラブ。』なんかは課金が4倍かかる。大会設定であっても毎試合に課金だ。これではせっかく藤野社長が良いゲームを開発してくれても、店舗で盛り上げようがない。そこにきて『exA』ならば1枚の基板で4人から最大8人同時プレイが可能で、おまけに課金もない。海外で主流のBARCADEなどでは酒で盛り上がった連中が知らない人同士で多人数プレイのゲームに興じているという。今後、4人以上で遊べるベルトスクロールアクションなどが揃ってくれば、ゲーセンの強力なアシストコンテンツになりそうだ。

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    12:00~
     最終日ということで、昨日よりもゆったりしたペースではあるが、『アカとブルーTYPE-R』には常にプレイヤーがいる好調ぶりだ。

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     近年のJAEPO一般日は大手メーカーが完全に販促イベント、興行と振り切っているため、2日目は引き上げてしまう業者も多い。俺はこの流れが気にくわない。この2年は出展側として会場にいるが、ここ10年以上足を運ぶことを拒否していた理由はそれだ。ゲームセンターに通う客を増やすために新作発表、品評会、購入思案という趣きがショーの原点だ。そこにお笑い芸人や声優ライブやゲームの大会って必要か? そんなものはそれこそゲーセン店舗でやればいいのではないか? ショー会場にゲーセンファン以外を呼んでもまったく未来に繋がらず意味がないし、本質が濁され品定めもままならない状態で昨年の『ソウルリバース』みたいなへっぽこ筐体を掴まされるオペレーターはたまったもんじゃない。あの『exA』の小さいスペースだって300万円くらいの予算を捻出しなければならないわけだし、ブレた近年のショーにそんな金を落とす気にはどうしてもなれない! 間違っとる!

     ……思わず、熱くなってしまったが、その点『exA』ブースに集まってる連中は涙が出るほどゲーセンファンばっかりだ。このお客さんたちのためなら俺はなんでもできる! どこまでも行ける! と、思った次第。

    15:00
    ここでチラシ配布用クリアファイルが在庫切れ。チラシを『アカとブルーTYPE-R』と『exA』基板に絞って配布するよう、コンパニオンさんに指示。3名の皆さんは本当によく働いてくれた。感謝しかないね。

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    17:00
     長かった「JAEPO2019」も終了。最後まで遊んでくれたタノシマスの少年ファンにスタッフTシャツをプレゼントして撤収作業へ。木曜日の搬入時作業の逆回し作業、撤収は昨年の反省から少し早めの時間から手際よく段取っていた。18時の時点で片付けは完了。チャーターした高田馬場ミカド行きのトラックに部材を積み込み、追いかけるようにチーム『exA』、タノシマスのみんなと挨拶し、京葉線に乗り込む。

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    19:00
     高田馬場でトラックを待ち、部材をミカドへ運びこみ、無事作業終了!! お疲れ様でした!!

     かくして、『exA-Arcadia』と『アカとブルーTYPE-R』は2019年の夏、ついに発売となる。発売まで、これからも様々な問題や障害が立ちはだかると思うが、4月にはスペイン、夏にはアメリカ、9月は中国、タイと台湾にもまた営業に出向かなければならない。俺はクリエイターではないが営業・サービスマンだ。俺は俺の任務を執行するだけだよね。

     最後に「JAEPO2019」サファリゲームズブースにお集まりいただいた、お客様と関係者のみなさまに最大級の感謝を! ありがとうございました!!

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