• このエントリーをはてなブックマークに追加
『FOREST 島人通信』2015.6.10号
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

『FOREST 島人通信』2015.6.10号

2015-06-10 21:00

    ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ▼ 2015.6.10号
    ▼ 『FOREST 島人通信』
    ▼ FOREST ISLAND
    ▼ http://ch.nicovideo.jp/morishimachannel
    ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    ***********************************************************

    ▼ご挨拶 


    みなさま、いつもFOREST ISLANDをお楽しみいただきありがとうございます。


    今夜、この後は、二宮歩美さんが心霊スポットから生放送でお送りいたします!


     

    今回は一体、何が彼女を待ち受けているのでしょうか!?


     

    どうぞお楽しみに!


    http://live.nicovideo.jp/watch/lv223666688


     

     

    ─────────────────────────────


        FOREST ISLANDホラー劇場『山小屋の学生たち』②


     

    北原が連れて行かれたのは、転げ落ちた斜面からそう遠くない山小屋だった。


    若者たちに半ば担がれるようになりながら、北原は山小屋の奥まで入り込むと横になった。


    枝の刺さった脇腹は、時間を追うごとに痛みを増していた。


    「どうだ? 痛むか?」


     先ほどと同じ男が尋ねてきた。どうやら彼がリーダーのようだ。


    「死にそうだ」


     正直に答える。


    「内臓をやられたのか?」


    「わからんな、そこまでは深くなさそうだが」


     話し声が聞こえる。話し方はずいぶん落ち着いていた。


    「俺は○○大学の岩瀬だ。ここにいるのはみんな大学は違うが、仲間たちだ」


     リーダー格の男が、メンバーの大学と名前を紹介する。


     どこも有名大学ばかりだ。サークルのようなものか。北原は思った。


    「俺たちもこの雨で身動きが取れないんだ。下山は、雨が収まるまで待つしかない」


     岩瀬の言葉に緊迫感を感じられないことに、北原は苛立ちを覚えた。

    「携帯で助けを呼べないのか?」


    「携帯?」


    「携帯だよ。持っているだろう?」


     彼らは、顔を見合わせた。ややあって、


    「持っていない」


     岩瀬が答えた。


    「何を言っているんだ。携帯を一人も持っていないなんて、あり得ないだろう!?」


     思わず、非難するような口調になる。


     しかし彼らは、困ったような口調で、お互いの顔を見合わせるばかりだった。


    (こいつら、何を考えているんだ?)


     北原の中に疑問が湧きあがった。


     学生たちが嘘を言っているような素振りは見られない。携帯電話の存在を隠すにしても、その理由が分からない。


     学生たちの表情は心なしかぎらぎらしているように見える。


     今時の学生たちにしては、少し痩せているようだ。


     自分の正体が知られてしまっているのか。いや、それはない。


     全員が全員、遭難者が死ぬのを見たいがために、携帯電話の存在を隠しているとも思えない。


     考えれば考えるほど混乱してきて、北原は両手で顔を覆った。


     その動作を傷みのせいだと解釈したのか、一人の女子学生が桶に水をくんで持ってきてくれた。


     後ろ髪を束ねただけの、古風な、と言えば聞こえはよいが、ずいぶんと野暮ったい髪型だ。


     北原の服を脱がせ、傷口の周りを丁寧にタオルで拭う。


     他の学生たちはしばらくその様子を眺めていたが、やがて岩瀬と手当をしてくれている女子学生を残して、どこかへ行ってしまった。


    「痛っ……!」


     激痛が走った。手当をしてくれていた女子大生が、誤って枝を突いたのだ。


    「気をつけろ!」


     怒鳴ってしまってからハッとなる。


     女子大生はびくりと体を震わせ、恐れを抱いた目で北原を見つめていた。


    「いや……すまない」


    「三宅、もういい。向こうへ行ってろ」


     岩瀬が声をかけると、三宅と呼ばれた女子大生はタオルを置くと、そそくさと部屋を出て行った。


    「せっかく手当てしてくれたのに……」


    「気にするな。あいつは鈍くさいところがあるから」


     岩瀬の言葉に引っかかるものがある。三宅という女子学生と恋仲なのだろうか。そんな風に北原は感じた。


    「とにかく、ここは電話もないし、外はこの嵐だ。助けが来るまで、ここにいた方がいい」


     岩瀬の言葉は、何かを隠しているように聞こえる。本心から心配しているようには感じられない。


     しかし、現在の状況では、北原には岩瀬の言葉に従う以外に選択肢はなかった。


    「……わかった」


    「ゆっくり休め」


     そういうと、岩瀬もゆっくりと部屋を出て行った。



                                  <続く>



     

    =====================================================================

    あなたの質問やご要望をお寄せ下さい!

    ご意見、ご質問、ご要望をお待ちしております。
    もしかしたら、動画や配信に反映されるかも知れません!?
    全てにおいてご期待に添えない場合もありますので、あらかじめご容赦願います。

    =====================================================================

     


    ★◇◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆★
                  2015.6.10号
                  発行 FOREST ISLAND
                  発行者: FOREST ISLAND
    ★◇◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆★

    チャンネル会員ならもっと楽しめる!
    • 会員限定の新着記事が読み放題!※1
    • 動画や生放送などの追加コンテンツが見放題!※2
      • ※1、入会月以降の記事が対象になります。
      • ※2、チャンネルによって、見放題になるコンテンツは異なります。
    ブログイメージ
    FOREST島人通信
    更新頻度: 毎週水曜日
    最終更新日:
    チャンネル月額: ¥550 (税込)

    チャンネルに入会して購読

    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。