イタリア全土に16万軒もあるバール
どれくらい好きかというと、イタリアの喫茶店といえば立ち飲みスタイルのバールが有名ですが、それがなんと全国に16万軒もあるのだとか。人口は日本の半分なのに、喫茶店の数は4倍なのです。(ちなみにイタリアにはスターバックスコーヒーがまだ1軒もありません。)
お店では、機械で高い蒸気圧をかけてコーヒー豆のうまみや香りを一気に抽出しています。小さなカップに入った30㏄ほどのエスプレッソは、きりりと苦くてコクがあり、その上にほのかに甘いクレマというなめらかな泡が浮かぶのが特徴。これに砂糖をたっぷり入れて飲みます。
砂糖を入れずに苦さを和らげたい私は、少量のミルクを加えたカッフェ・マッキアートを注文することもありますが、こういうのはごく少数派で、ほぼ全員がただの「カッフェ」を頼んでいます。ちなみに日本で人気のカッフェ・ラッテやカップッチーノといったミルクが多くて重いドリンクは朝に飲むものとされています。
カッフェ・マッキアート(左)とカッフェ(右)
ピットであり、コミュニケーションツールである
私の住むレッジョ・カラブリアでは、カッフェ1杯がだいたい0.8ユーロ(約100円)。安いですよね。みんなカウンターで立ったままキュッと飲み干して、知人や店員とちょっと会話したらサッと出ていきます。短時間でリフレッシュする様子はまるでF1のピットインのようで実にスマート。テーブル席もあるのですがたいていガラガラで、長居をする習慣もないらしく、ノートPCを開いて仕事という姿も見かけません。
あまり大きな街ではないので中心地を歩けば、ばったり知人に出会うこともしばしば。そんなときは「カッフェでも飲もうよ」とどちらからともなく誘って近くのバールで一杯、となります。ほんの数分のおしゃべりでも、カッフェがあるとリラックスできて話も弾むというわけです。
一家に一台。マッキネッタで淹れるカッフェ
一方、家庭ではどうしているのでしょうか。実は、淹れ方も味もまったく別ものといえるカッフェが飲まれています。使うのは2階建てのやかんのような、直火式エスプレッソメーカー「マッキネッタ」。「モカ」とも呼ばれ、イタリアではどの家にも必ず1つはあるといわれています。
このサイズで3人分できます。
これを直接コンロにかけて淹れます。1階部分に入れた水が沸騰して蒸気になり、コーヒー豆を詰めたフィルター(中2階)を通過してコーヒーとなって2階に出てくる、というしくみ。つまりお店と同じく蒸気圧で抽出するのですが、圧力がずっと低いため、できあがったカッフェは苦みが少なくマイルドです。砂糖を2さじ溶かせばまるでチョコレートのような味わいになります。
大きいサイズのマッキネッタなら、5~10人分を一度に作ることができるのもいいところ。家族が揃った食事の後や、ホームパーティでも大活躍です。また最近は、家庭でお店の味が出せるエスプレッソマシンや、より手軽なカプセル型のものも浸透しています。
イタリア人はこう言います。「お店のカッフェと家のカッフェは別もの。でもどっちも欠かせない」と。あまりに生活に密着し、愛されるカッフェ。朝の眠気覚まし、食後の消化促進、そしてなにより家族や友人と過ごす和やかな時間のために、今日もまた小さなカップが運ばれてくるのです。
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