そのメソッドを気軽に暮らしに取り入れる方法を研究しているのが、スリランカ政府認定SLAMAのアーユルヴェーダインストラクターであり、オイル美容家の川崎雅代さん。今回は心と体を整えるアーユルヴェーダ美容の第一歩として、その人の心身の特徴を知る「ドーシャチェック」の方法と体質別のコンディショニング・メソッドをうかがいました。
「アーユルヴェーダ」は、コンディショニング・メソッド50代にはとても見えないしなやかなスタイルと、長い黒髪、つややかなすっぴん肌が印象的な川崎さん。体脂肪は17~18%で、体重計での体年齢は30代をキープ。アーユルヴェーダに出合い、身体のバランスを整えて人生をポジティブに捉えられるようになったと語ります。
川崎さん:「アーユルヴェーダは、古代インドを発祥として生まれた伝承医学。サンスクリット語で『アーユス』は命・寿命、『ヴェーダ』は科学・真理を表す言葉なので、『生命科学』という意味になります。
アーユルヴェーダはとても体系的な学問で、内科学や外科学など、8つの分野があります。私が注目しているのは、そのなかでも『強壮学』、いわゆる若返り療法です。現代人が日常生活に取り入れやすいように、そのエッセンスをお伝えしています」
アーユルヴェーダの第一の目的は、健康維持と病気の予防。そこには、体のコンディションをよりよい状態に保ち、人生をもっと前向きに楽しむための知恵(生活術)や若返りのテクニックも含まれているとのこと。
世界のセレブや富裕層が、ダイエットや美容、ライフスタイルにまでアーユルヴェーダのメソッドを取り入れているのは良く知られるところ。ケミカルなものや高度な医療に頼らずに、日常生活のなかで実践できる方法であることも、支持される理由のひとつです。
簡単ドーシャチェックで自分を知るアーユルヴェーダを取り入れた生活は、自分の「ドーシャ」を知ることから始まります。人体の生理機能は「ドーシャ」と呼ばれる生命エネルギーから制御されている......というのが、アーユルヴェーダ哲学の基本的な考え方。
その生命エネルギーとは、
「ヴァータ」=空・風(運動エネルギー)
「ピッタ」 =火・水(変換エネルギー)
「カパ」
=水・地(結合エネルギー)
の3種類。人にはそれぞれ働きやすいエネルギー(ドーシャ)があり、ドーシャのバランスを保つことで、心地よく、よりよい人生が送れるようになるのだそう。
まずはざっくりと自分の体質傾向を知るために、下記の10問で、ABCのうちどの回答が多かったかをチェックしてみてください。
体質傾向が分かる「ドーシャチェック」
①体型
A 痩せている、または痩せていた 太りにくい
B 中肉中背
C 食べると太りやすい
②髪
A 髪のパサつきが気になる
B まっすぐな髪の毛・茶色・若白髪
C しっとり、フサフサな髪の毛
③肌
A 乾燥肌でかさつきが気になる
B 赤み、あるいは黄みがかった肌
C やわらかくなめらかな肌
④気質
A 気分や気持ちが比較的ころころ変わる
B 情熱的。気に入らないことがあるとカッとなる
C 気分が安定していて、めったに怒らない
⑤食欲
A 食欲にむらがある。食事の時間も不規則
B 食欲旺盛。おなかがすくとイライラする
C 食欲はほどよくあるが、一食くらい抜いても平気
⑥睡眠欲
A あまり熟睡できない。夜中に起きやすい。夢をみる
B ベッドに入ればすぐ寝付く
C 眠ることが大好き。朝までぐっすり
⑦コミュニケーション力
A 誰にでも話しかけすぐ友達になれる
B 気の合うタイプなら話しかけ、仲良くする
C 人見知りしやすく自分から話しかけることはしない
⑧話し方
A おしゃべり。どちらかといえば早口
B 論理的で明快な話し方。声が大きい
C 落ち着いた声でゆっくり話す。声に艶がある
⑨集中力
A いろいろなことに興味が分散する
B 自分の好きなことなら集中力を発揮する
C 集中力はあるほう。じっくり取り組む
⑩他人との関わり
A 周りに影響を受けやすい。流行に左右されがち
B 他人を変えたり、支配・リードしたい
C 皆についていくほうが好き
自分にふさわしいものをチェックして、ABCのうちもっともチェック数の多かったものが、あなたのドーシャタイプです。
Aが多かった人...「ヴァータ」
・明るく楽しい芸術家・アーティストタイプ。風と運動のエネルギーを持ち、「乾燥・軽い・冷たい」といった性質があります。
・「乾燥」する性質のため、髪・肌・爪・眼が乾燥しやすく、パサつきがち。
・「軽い」性質のため、動作は軽やか、素早い行動でアクティブ。気持ちがコロコロ変わり、落ち着きがなく情緒不安定になることも。
・「冷たい」性質のため、体の手足は冷えやすく、血行が悪い人が多い。
Bが多かった人...「ピッタ」
・情熱的で責任感が強い経営者・リーダータイプ。火と変換のエネルギーを持ち、「熱い・鋭い・流動」といった性質があります。
・「熱い」性質のため、基礎代謝が高く食欲旺盛。燃える火の質は怒りやかんしゃく、批判的性格につながる傾向があります。
・「鋭い」性質のため、消化力が強くおなかがすくとイライラ。胃腸だけでなく脳の代謝も良いため、知的判断力に優れています。
・「流動」の性質のため、関節や筋肉はしなやか。汗をよくかき、排尿・排便は多く、軟便気味。
Cが多かった人...「カパ」
・落ち着きがあり献身的な研究者・看護師タイプ。水と結合のエネルギーを持ち、「油・重い・冷たい」という性質があります。
・「油」の性質のため、油っぽくしっとりしたきめ細かい肌。
・「重い」性質のため、安定感があり、ひとつのところにどっしり落ち着きます。動作も食事ものんびり。骨太で太りやすいのが特徴。
・「冷たい」性質のため、発汗を抑え、体を冷やし、停滞しやすい傾向が。眠るのが大好きで、怠惰や無精になりがちです。
複数のドーシャを持ち合わせている人もいるし、同じドーシャでも表れ方は人それぞれです。とはいえ自分と身の回りの人で試してみたところ、かなり当たっている......というのが実感。心と体の動きの傾向が一致していることにも、改めて驚かされます。
ドーシャに合った暮らし方を工夫するつづいては各ドーシャごとに、どんなアンバランスの原因があるのか、アンバランスの兆候や、バランスを整える方法を教えていただきました。
「ヴァータ」
アンバランスの原因
働き過ぎ、食べ過ぎ、不規則な行動、騒音、食事抜き、睡眠不足、排泄を我慢する、冷たいものや乾燥したものの摂りすぎ、風を受け過ぎる
アンバランスの兆候
肌荒れ、爪がもろくなる、血色が悪くなる、便秘、眼や唇が乾く、神経痛、痛風、悪寒、不眠
バランスの整え方
油質を与え、温める。毎日の食事や就寝、トイレタイムなど、規則正しい生活を心がけること
バランスがとれると働くエネルギー
熱意にあふれ、積極的。新しい状況にも臨機応変に対応し、機転を利かせて創造することができる。芸術の感性にあふれた人生のアーティスト
「ピッタ」
アンバランスの原因
辛い食事、イライラすること。精神的なストレスからやけ酒ややけ食いをすること。過剰な消化力が体のバランスを崩してしまう
アンバランスの兆候
湿疹、灼熱感、肝臓が弱る、消化不良、炎症。イライラして怒りっぽく、かんしゃくを起こしやすくなる。批判的になる
バランスの整え方
冷やして落ち着けること。心地よい空間で、体も心も落ち着け、リラックスして満ち足りた気持ちで就寝すること
バランスがとれると働くエネルギー
エネルギッシュで満足・調和・幸福を感じる。食欲旺盛で消化も順調。太陽の光のように周囲を暖かく照らし、優れたリーダーとして世の中を変革に導く
「カパ」
アンバランスの原因
食後すぐの昼寝は病気の原因に。ほかに食べ過ぎ、動かなすぎ、寒くてじめじめした気候、運動不足も避けること
アンバランスの兆候
怠惰になり、やる気が失せ鈍重感が増す。消化不良、代謝の悪化、肥満、むくみ。呼吸障害やアレルギー、精神的にはうつ的感情が高まる
バランスの整え方
軽く、温かく、乾燥させること。早起きを心がけ、腹八分に食事をコントロール。食後はウォーキングなどの運動をし、積極的に外出を
バランスがとれると働くエネルギー
忍耐強く、情け深く、勇敢で情緒が安定している。大地の母のように慈愛にあふれ、献身的な愛の人
川崎さん:「人にはドーシャのタイプによって、それぞれ働きやすいエネルギーがあります。特定のドーシャだけを使い過ぎてバランスが崩れると、体のあちこちに症状が出たり、精神的にも乱れが生じます。ドーシャに合った暮らし方を工夫することで、体調も心のバランスも整うはず」
ドーシャ別の「バランスの整え方」を見ていくと、体調不良や気分が下がる原因が、「自分がついやりたくなること」「していてラクなこと・流されやすいこと」にあると知り驚きました。自分の本質を知って、行き過ぎないように律し、欠けている部分を補うことでバランスを整える。アーユルヴェーダは、まさに心と体のインナービューティー対策なんですね。
川崎雅代さんに聞くアーユルヴェーダ美容。後編ではアーユルヴェーダの考え方に基づいた、自宅でできるオイルマッサージのメソッドをご紹介します。
川崎雅代さん
シムシムジャパン代表、株式会社しむら代表取締役社長。日本アーユルヴェーダ協会理事。
出産を機に実家の株式会社しむらの手伝いを始め、江戸時代から戦前まで油屋として繁栄していた先祖に目を向けて『油』を使って復興しようと決意を固める。インド伝承医学であるアーユルヴェーダの若返り学に着目し、スリランカ・インドでアーユルヴェーダ学ぶ。2007年5月にスリランカに渡りスリランカ政府認定(SLAMA)アーユルヴェーダインストラクター取得。セサミオイルを商品化した『シムシムジャパン』ブランドを立ち上げる。