体をコントロールしている甲状腺
症状のくわしい説明に入る前に、まずはすこしおさらいをしてみましょう。甲状腺とは内分泌腺でT3とT4という二種類のホルモンを作っています。このホルモンが、体がどのくらいエネルギーを燃やすか、ストレスホルモンへどう反応するかなどをコントロールしています。
アメリカ内分泌学会の会長も努めたR.マック・ハレル医学博士によると、この甲状腺が正しく機能しなくなっておきることがいくつかあるそうです。そのうち、ひとつは甲状腺機能亢進症(ホルモンが過剰に生成されている状態)です。そしてもうひとつは反対のホルモンが十分に分泌されない甲状腺機能低下症です。では甲状腺による症状はどういったものがあるのでしょうか。
肌がうすくなったり、がさがさしたりする
image via Shutterstock「甲状腺は肌の新陳代謝を制御しています。甲状腺ホルモンが過剰分泌されていると、肌のターンオーバーがすこし早くなり、多くの場合なめらかだがうすい肌になります。甲状腺のはたらきが悪いと今度はターンオーバーが遅くなり、肌がざらつく感じになります。甲状腺機能亢進症によるそれ以外の肌の症状としては、肌がしっとりしたり、あたたかく感じられることや、手や顔が赤くなるなどがあります。一方で、甲状腺機能低下症の場合は肌が白く冷たく感じられることや、傷の治りが遅くなったりします。また、カロチン血症によって肌がオレンジっぽく見えることもあります。これは甲状腺が正しく機能していないため、カロチンをビタミンAに変えられず起きるものです。
体重の変動がある
image via Shutterstock甲状腺機能が低下している場合は、大幅な体重増加にはつながらないということがわかりました。「たとえば45キロ太ったなどの場合は、甲状腺機能低下だけが原因ではありません。一般的な体重増加は2.2キロ程度なのです」とハレル医師は話します。
一方で甲状腺機能亢進の場合は、かなりの減少が見られるそうです。(ただし、ハレル医師はこういった形で体重を減らすのは安全な方法ではないと警鐘を鳴らします)。甲状腺機能と体重の増減の関係は常に一定というわけではありません。甲状腺は食欲をコントロールするホルモンにかかわってきているため、甲状腺機能亢進は体重減につながるといわれていますが、食欲の増進ともつながっています。
つまり、代謝がよくなっているのにもかかわらず、食べすぎによって太ることもあるのです。この反対が甲状腺機能低下の場合には起こります。甲状腺機能低下の場合は体重の増加と食欲の低下が関連していて、代謝が悪くなり、食欲も減るため、体重が減ることがあります。
体温調整がしにくくなる
つまりここまで読めばわかってきたとは思いますが、甲状腺機能亢進は体の働きを早め、新陳代謝も高くなります。そして、エネルギーをより早く燃焼しているため、体が熱くなったと感じる人もいます。だから甲状腺機能亢進の人は、エネルギーをたくさん燃やすので、心拍数が上がって寝ている間に汗をかいて起きてしまうこともある、とハレル医師は言います。その反対で甲状腺機能低下は、代謝が悪くなって寒くなるため、もう一枚余分に着たくなるかもしれません。
感情に大きく影響する
image via Shutterstock過剰な甲状腺分泌は気持ちにも大きく影響します。一般的に甲状腺機能亢進は不安や過敏になり、場合によっては精神病につながることもあるそう。そして、反対の甲状腺機能低下の場合は、うつ状態や引きこもりモードになりがちといいます。さらに、認知機能にも影響をおよぼして忘れやすくなったり、運動能力が低下するなどにもつながるとか。実は甲状腺機能が低いと酔ったときと同じような気持ちになるともいわれています。
エネルギーが失われてしまう
甲状腺機能亢進や甲状腺機能低下は、形はまったく違うが、どちらもエネルギーを使います。たとえば甲状腺機能が低下していると、なにもする気力がなくなってしまいがちです。テレビや動画を一日中見ることが天国に思えるかもしれません。反対に、甲状腺機能亢進の場合も代謝が一日ずっと高い状態なのでエネルギークラッシュを起こしやすくなります。甲状腺機能亢進の場合は心拍数を激しく上げるので、疲れやすくなってしまうそうです。そして、エネルギーが低くなると夜の生活にも影響してしまい、睡眠や性欲なども左右されてしまい、疲れて寝たいのでセックスをしたくなくなってしまう、といったことが起きてしまいます。
トイレが近くなる
甲状腺機能亢進がすべてのスピードを早くするので、お腹の動きも早くなります。つまり、一日数回よりも多くトイレに駆け込むことになるかもしれません。その反対の甲状腺機能低下の場合は体の動きが遅くなり、お腹の動きもゆっくりになるので便秘になりやすくなります。
生理が乱れる
image via Shutterstockホルモンの指標として一番敏感なのは、生理です。すこしの変化で大きく乱されてしまいます。しかも生理周期は甲状腺機能が過剰でも、低下していてもどちらの場合も影響され、生理周期が短くなったり、反対に長くなったり、出血の量も多くなったり、少なくなったりいろいろな形であらわれます。甲状腺機能に問題があった場合、病院で一番に「生理周期になにか変化があったか」と聞かれるはずです。「もし、生理周期も安定していて、量も普通なら問題はありません」とハレル医師。でも、もし乱れているのなら、なにか体に問題があるかもしれないので、すぐに病院に行くことをすすめています。生理の乱れはホルモンの問題を示唆する一番のものなのです。
髪の毛がうすくなる
甲状腺機能に問題があると抜け毛が気になるかもしれません。甲状腺機能亢進の場合は、髪の毛が細くなり、頭皮や体に一律に起こります。外側の眉毛もなくなるかもしれません。もしこういったことが起きているのなら今すぐ病院に行きましょう。大切な眉毛のためにもすぐに医師にみてもらったほうがよいでしょう。
目に変な症状が起きる
インターネットで目が飛び出ているような人の画像を見たことがあるかもしれません。これは、甲状腺機能亢進の一種、バセドウ病のせいで目を見開いているように見えるのです。眼球の後ろの組織がはれてボリュームが大きくなり、目が前へ押し出されて目が飛び出ているように見えるのです。
Amber Brenza/9 Thyroid symptoms to look out for
訳/Noriko Yanagisawa