現代人を悩ませるアレルギーや生活習慣病。その原因が、自分と共生している100兆個もの腸内細菌が“飢えている”からだとしたら……?

微生物学・免疫学の専門家が教える、腸内細菌を飢えから救う「MAC(マック)食材(腸内細菌の食べ物)」についてご紹介します。

腸科学の第一人者が語る、ヒトと細菌の関係

『腸科学 健康・長生き・ダイエットのための食事法』を著したジャスティン・ソネンバーグとエリカ・ソネンバーグ夫妻は、スタンフォード大学スクール・オブ・メディスンの微生物学・免疫学部で研究室を運営する腸科学の第一人者

本書が出版されたのは2016年ですが、ここ10年で飛躍的に研究が進んだ「ヒトとマイクロバイオータの関係」を紐解く入門書として高く評価されています。

100兆個の腸内細菌が飢えている

本書でいうマイクロバイオータとは、人間の腸内や皮膚、口の中などに棲む微生物たちのこと。

とりわけ大腸には、数百種を超える細菌が100兆以上も棲んでいるそう。その密度は、小さじ一杯あたり5,000億個にも達します。

私たち人間は彼らの宿主であり、彼らは私たちが与えるエサで生きているのです。

しかしソネンバーグ夫妻いわく、いま欧米など先進工業国の人々のマイクロバイオータは危機に瀕しています。

私たちの腸内細菌は絶滅危惧種のリストに載っているのだ。(中略)生活習慣や食習慣が初期人類に近い他の人類集団は、アメリカ人より多様な腸内細菌をもつ。いったい、なぜなのか? 過剰に加工された欧米の食事、抗生物質の乱用、殺菌が進んだ家屋などによって、腸内の住人はその健康と安全が脅かされているのだ。

(『腸科学』18ページより引用)

マイクロバイオータが不健康になると、その影響は肥満や糖尿病、さまざまなアレルギーとなって表れ、ときにはうつ病など精神疾患につながることもあるとのこと。

人間が健康に生きるためには、マイクロバイオータが健康であることが不可欠。マイクロバイオータが元気になれば、さまざまな病気から身を守ることができるのです。

食物繊維の摂取量が足りない!

マイクロバイオータがもっとも苦しんでいるのは、現代人の嗜好の変化による“食べ物不足”。

食品由来の微生物(善玉菌)が欠乏していることと、食物繊維の摂取量が足りないことが、マイクロバイオータを飢えさせているとソネンバーグ夫妻は述べています。

飢えたマイクロバイオータに唯一残された道は、宿主である私たち自身、つまり腸の粘液層に含まれている炭水化物を食べること。これが毎日繰り返されると、腸の内壁がどんどん薄くなり、大腸に炎症が起きてしまいます。

腸内細菌が好むのはマック食材

そこで夫妻が推奨するのが、マイクロバイオータが食べる、通称「MAC/マック(Microbiota accessible carbohydrates)」の摂取量を増やすこと。

マックは果物や野菜、豆類、穀物などさまざまな植物にふくまれ、マイクロバイオータによって発酵される炭水化物のことである。食物や食物繊維サプリメントに含まれる食物繊維には、マイクロバイオータのいる大腸まで到達せず発酵しないものもある。これらの発酵しない繊維質も便秘の改善にはとても効果があり、排泄物が水分を吸って嵩を増すので、良好な整腸作用が得られる。だがマイクロバイオータに食べ物を与えて短鎖脂肪酸を作ってもらうには、やはりマックを食べる必要がある。

(『腸科学』168ページより引用)

「マック」を含む代表的な食材は、全粒穀物、玉ねぎ、リンゴ、キノコなど。最近では小麦の外皮部分にあたる小麦ブラン(小麦ふすま)スーパー大麦(バーリーマックス)もマック食材として注目されています。

腸内細菌が喜ぶ食事を意識しよう

「腸活」の普及とともに、ますます注目度が高まる食物繊維。しかし近年の糖質制限ブームなどにより穀物を避ける風潮もあり、食物繊維の摂取量はなかなか上がりにくいという現状もあります。

本書の巻末には、マックと善玉菌を補給できる具体的なメニューや、一週間の献立例がくわしく紹介されています。「共生のためのスクランブルエッグ」など、ネーミングもなんだかユニーク。

私たち人間は“マイクロバイオータと共生している”のだと実感すると、毎日の食事に対する意識が変わってきそうです。

腸内環境、整っていますか?

「やせ菌」を増やし、太りにくい腸内環境へ。小麦ブランの健康パワー

医師に聞く、腸内フローラをととのえる食事と生活習慣

腸科学 健康・長生き・ダイエットのための食事法

image via shutterstock

RSS情報:https://www.mylohas.net/2018/11/179675intestine_mac.html