1.女性の飲酒率が増えている
ここ数年、男性の飲酒率に目立った増減がないのに対して、女性の飲酒率は増加傾向にあるといわれます。
管理栄養士の河村桃子さんが注目するのは、「生活習慣病のリスクを高める量のお酒を飲んでいる女性」が増えているという事実。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、平成22年の調査では7.5%でしたが、平成29年には8.6%まで上昇していました。
2.男性よりアルコール性肝疾患を起こしやすい?
このデータを河村さんが問題視するのは、女性の体質によるところが大。
「女性は男性に比べてお酒に弱い傾向にあり、アルコールを代謝する能力は男性の3/4程度しかない(「Diet Plus」より引用)」ともいわれています。その結果、アルコールによる障害、とくにアルコール性肝疾患を起こしやすいというのです。
女性は男性よりも少量の飲酒、または短期間の飲酒でアルコール性肝疾患を発症し、また男性よりも10年以上早く肝硬変へ移行するとの報告もあります。
(「Diet Plus」より引用)
アルコール性肝疾患とは、お酒の過剰な摂取が原因で起きる肝臓の病気の総称です。具体的にはアルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎、アルコール性肝硬変などがあります。
アルコール性脂肪肝とは、フォアグラのように肝臓に脂肪が異常に蓄積された状態。これを放っておくと肝炎、肝硬変と、病状がどんどん進行してしまいます。
3.女性がお酒に酔いやすい理由
男性と比べて10年以上も肝硬変への移行が早いケースがあるというのは、かなりショッキングな報告です。個人差があるとはいえ、女性の体はなぜ男性とくらべてアルコールに弱いのでしょうか。
その理由を、河村さんは次のように説明しています。
男性に比べて肝臓が小さい 体重が軽いため血中アルコール濃度が高くなりやすい 女性ホルモン「エストロゲン」はアルコール分解を抑制する(「Diet Plus」より一部引用)
アルコールを分解する肝臓の大きさは、体格に比例すると言われていると河村さん。体格の小さい女性は肝臓も小さいため、そもそもアルコールを分解できる量が少ないのです。
さらに、男性と比べて体重が軽いため血液量が少なく、血中アルコール濃度が高くなりやすいのも特徴。男性と同じペースで飲むと、女性の方が早く酔ってしまうのは当然です。
4.生理周期で「酔いやすさ」が変わる?
そして意外なことに、女性ホルモンの働きも関係しています。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がありますが、エストロゲンには肝臓でのアルコール代謝を抑制する作用があるのだそう。
アルコールの代謝を抑制するエストロゲンの量が増える排卵前と月経前は、酔いやすい傾向にありますので、自分の生理周期を把握しながらお酒を飲むことが大切です。
(「Diet Plus」より引用)
「美のホルモン」とも呼ばれるエストロゲンが高まる時期は、心身ともに快調でついお酒が進んでしまいます。しかし、そんなときこそ要注意! 悪酔いしやすくなっていることは、しっかり認識しておく必要がありそうです。
5.お酒の一日あたりの適量は?
それでは、「節度ある適度な飲酒」とはどれくらいの量を指すのでしょうか。
国民の健康に関する課題や目標を示した「健康日本21(第2次)」には、「1日平均純アルコールにして約20g程度、女性は20gよりも少ない量が望ましい(「Diet Plus」より引用)」と記載されています。
一般的なお酒の「純アルコール20g」の目安は次のとおり。女性の場合はこの量よりも少ない量が1日の適正量です。
ビール、発泡酒(5%)……中瓶1本(500ml) 缶チューハイ(5%)……約1.5缶(500ml) 日本酒(15%)……1合(180ml) 焼酎(25%)……ロックグラス1杯強(100ml) ワイン(12%)……グラス2杯弱(200ml) ウィスキー(43%)……ダブル1杯(60ml)(「Diet Plus」より引用)
お酒類のパーセンテージ(%)はアルコール度数を指しています。アルコール度数が高いワインはグラス2杯弱で目安をオーバー。フレンチのコースに合わせて飲んでいたら、あっという間に突破してしまいそうですね。
楽しい席で会話が弾み、いつの間にか飲酒の適量を超えてしまう……というのはよくあるケース。お酒を長く楽しむためにも、適量の目安をぜひ知っておきましょう。
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河村桃子(かわむら・ももこ)さん
管理栄養士として病院やクックチル(食材を調理加熱したあとに急速に低温冷却しチルドの状態で管理する調理法)のコンサルティング、栄養専門学校講師の業務に携わる。現在はフリーランスの管理栄養士として、「今日の食事で明日の自分は変わる」をモットーに、コラム執筆や特定保健指導、レシピ提案、食事講座など働く大人の食事サポートを行っている。ブログ
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