女性と男性の温度の感じ方の違いはどこからくるのでしょう? 前回は、そのメカニズムについて、マーストリヒトにある体温生理学・代謝研究グループを率いる生物学者ウーター・ファン・マルケン・リヒテンベルトさんに聞きました。今回もその謎を紐解きつつ、寒い冬を快適に越える方法を紹介します。
身を寄せ合うと温かくなる?
image via shutterstockここで、体温調節に関する興味深い研究をご紹介しましょう。
ヒューマン・ペンギン・プロジェクト(The Human Penguin Project)、人の体温調節に社会がどう対応していくか、つまり「社会的体温調節」に関するです。フランスのグレノーブル・アルペス大学の社会心理学者で、主任研究員のハンス・アイザーマンさんに話を聞きました。
「動物界においては、体温の低下に対処するために、体温の維持をほかの動物に頼って行うことがあります。有名なのは、ペンギンは寒くなると群がり集まります。これは基本的にすべての恒温動物が行うのですが、社会性を持たない動物でさえも、恒温動物は温度が低下すると、こうした群がる行動を取るのです」
このプロジェクトでは、人間が寄り集まって物理的に温め合うということではなくて、そのほかの社会的行動が深部体温に関係しているのかどうかに注目しています。「人間は体温を調節するために、もはやほかの人に頼る必要はないかもしれません。衣服や暖房を発明していますから」と、アイザーマンさん。
進化論的に言えば、以前は寒さから逃れる場所にいる必要がありましたが、今では少ない時間で熱を得られています。ただ、「今も私たち人類は、温度を調節するために他人に頼っている部分はあるのでは」と、アイザーマンさん。
ヒューマン・ペンギン・プロジェクトから分かったのが、社会的なネットワークが多様になるほど、体幹の体温は高まるという関係でした。さらに、赤道から遠く離れて生活するほど、社会的なネットワークが多様になる傾向があるという発見も。おそらく寒い環境でも、それが深部体温を高く保つための手段のひとつである可能性があるのです。
恋人同士で体温を補完しあっている
image via shutterstockアイザーマンさんは、社会的な体温調節には興味深い側面が多いといいます。過去の研究によると、怒っているときは肌が熱くなり、悲しむときは肌が冷たくなることが示されています(体がぽかぽか温まったり、ぞくぞく寒くなったりするケースのひとつ)。
アイザーマンさんの研究室では、恋人同士などロマンチックな間柄では、一方が悲しそうなとき、もう一方の体表面体温が上昇し、互いに補い合っているという研究結果が出ています。
アイザーマンさんは、さらに研究していく必要があるというのですが、体温差から2人の関係まで推し量れるのではと言います。さらに、暑かったり寒かったりするときに手首に巻いたデバイスで体温調節ができる機器「エンバーウェーブ(Embr Wave)」を使って、体温を変化させて対人関係への影響を研究しようとしています。
寒い冬を快適に乗り越えるには?
体温をどのように調節するのか理解すれば、冬の間、もっと温かく過ごせるはず。体温生理学研究者が「冬の寒さの乗り越え方」を教えます。
1. 手足に気をつけます
image via shutterstock女性は小柄で、体積に対する体表面積の比率が高いため、冷えやすいのです。
指やつま先など先端部は問題になりやすい場所。研究によると、指先の温度は人の寒さの感じ方に影響を与えやすく、特に女性の場合は、手足が冷たいと不快になりやすいと分かっています。帽子や手袋を常に携帯するようにしましょう。
2. 夏と同じように運動します
image via shutterstock熱は非脂肪組織から発生します。特に、筋肉の役割が重要に。どうしても休日は不健康な食事になりがちですが、運動は控えないようにしましょう。
3. 秋は積極的に外出して体を順応させておく
image via shutterstock体温が下がり始めると、体は物理的に順応していきます。寒くなってきたら、何か理由を見つけて、外に出て楽しむように。2月になれば、そうしていてよかったと思えるはずです。
寒い時の工夫は?
冷え性対策グッズ5選。湯たんぽ・発熱インナー・しょうが入り参鶏湯
Kevin Dupzyk/My Partner Hates the Cold. I Love It. We Can't Stop Fighting. Whose Fault Is It?/STELLA MEDIX Ltd.(翻訳)