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男性より10年遅れてやってくる、女性の「不眠」対策
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男性より10年遅れてやってくる、女性の「不眠」対策

2020-09-04 18:00
    自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「動悸・息切れのメカニズムと対処法」について、お届けしました。今回は、「眠れない、寝つけない」といった睡眠の悩みについて、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

    女性は、男性より10年遅れて眠りの不調が出現!

    「疲れているのに、ぐっすり眠れない」「夢をよくみて眠りが浅い」など、コロナ禍で働き方が変わり、緊張が続く毎日の中、眠りに関する訴えが聞かれるようになりました。

    睡眠は、単なる休息ではありません。眠っている間に、さまざまなホルモンが分泌されていることがわかっています。

    それによって、脳だけでなく、体全体を休ませ、さらに傷んだ全身の細胞を修復しているのです。新陳代謝を促して、皮膚や髪の毛、内臓の細胞を修復、体重コントロールにも良質の睡眠がかかわっています。しかも、睡眠には性差があります。

    女性ホルモンによって、女性は、男性より10歳若いといわれています。寿命も男性より約10年長いのは、女性ホルモンのおかげという説もあるくらいです。

    そのため、女性は、男性に比べて10年遅れて、眠りの不調が現れます。そのタイミングが更年期です。更年期には、エストロゲンが急激に減少するため、さまざまな不調が起こります。

    そのうちのひとつが不眠です。更年期以降に、眠りの不調を訴える女性が増加します。不眠のほか、うつなどのメンタル症状が出るのも特徴です。

    女性ホルモンが低下すると、眠りの悩みが出始める

    女性ホルモンは、“眠気を誘うホルモン”でもあります。生理のある女性の約4割は、月経前、あるいは月経時に、眠気を訴え、過眠になると言われています。

    ところが、閉経で女性ホルモンを失うと一転、「眠れない、寝つけない」に変わります。

    女性ホルモンの指令を出す、視床下部と自律神経の司令塔は同じです。両者は、影響を受けやすいため、女性ホルモンが大きく揺れ動く更年期は、自律神経が乱れやすく睡眠の悩みが増えるのです。

    また、エストロゲンは、睡眠物質の“メラトニン”の材料である“セロトニン”などの増減や活性に関係しています。

    脳と眠りの関係も次々と明らかになり、研究が進んでいる分野です。眠りの悩みをこじらせると、うつや認知症のリスクも増えます。更年期ころからは、眠りのメンテナンスが必要です。

    体内時計の乱れが、成長ホルモンとコルチゾールに影響

    睡眠には、サイクルがあります。夢を見る“レム睡眠”と、ほとんど夢を見ない“ノンレム睡眠”が約90分周期で繰り返されます。

    レム睡眠とノンレム睡眠には、それぞれ大切な役割があります。レム睡眠は、全身の筋肉を弛緩し、心のメンテナンスをおこない、体を休める睡眠です。エネルギー代謝にかかわる“コルチゾール”が分泌されます。

    一方、ノンレム睡眠は、脳を休め、健康や美肌に欠かせない“成長ホルモン”を分泌します。身体機能の成長、回復を促す役割です。

    つまり、レム睡眠とノンレム睡眠、両方のバランスが大切なのです。

    ところが、自律神経系、内分泌系、免疫や代謝系などのリズムを支配している体内時計が狂うと、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスが崩れ、睡眠の質が落ちます。

    体内時計によって、夜、眠くなるのは、メラトニンが働くからです。メラトニンは、夜になると徐々に分泌が増え、夜中に最大になります。メラトニンが分泌されるためには、その材料であるセロトニンが、日中にしっかり分泌される必要があります。

    しかし、更年期からは、女性ホルモンの低下により、セロトニンの分泌も減りやすくなるのです。

    年を重ねるほど、眠りの質が低下するのは仕方ない……

    理想的な睡眠時間は、女性は70歳以降、男性は60歳以降、7時間が最も長寿という研究があります。7時間より長くても、短くても、死亡率が上がっています。また、7時間睡眠の人は、BMIが最も低かったという調査もあります。

    ところが残念ながら、女性も男性も年齢を重ねるほど“睡眠の質”が低下していきます。加齢による体内時計の変化により、年をとるほど早寝早起きになります。

    「若いころは、いくらでも眠れたのに、今は寝ていられない……」と感じる人も多いと思います。でも、赤ちゃん肌をいつまでも維持できないのと同様、睡眠の質を維持し続けるというのは、難しいことなのです。

    つまり、加齢で眠りの質が下がるのは自然なことです。だからこそ、それ以外の眠りを妨げる悩みは、できるだけ改善しておきたいものです。

    不眠を軽く見ないで! うつや病気が原因のことも

    心配ごとやストレスが溜まると、誰でも睡眠障害になりやすくなります。たまに起こる不眠は、誰にでもよくあることですが、今までになく頻繁に起こり、普段の生活にも支障をきたすようなら、不眠症かもしれません。

    不眠が続くと、昼間疲れやすく、だるさ、頭痛、イライラなどが生じて、思考力やいろいろな能力が低下します。逆に、眠りが改善されれば、ほかの不調は楽になることが多いです。

    更年期にうつ症状が出ていると、多くの場合、不眠も同時に起こります。また、うつの場合は、更年期でなくても不眠を起こしやすいと言われています。

    また、不眠に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることもあります。まずは、医師に相談しましょう。

    自分の不眠パターンを知りましょう

    不眠は、早いうちに医師に相談しましょう。

    不眠には、いくつかのパターンがあることが知られています。

    1. 入眠障害。寝つきが悪い。
    2. 中途覚醒。深夜に目覚めて、長時間眠れなくなる。
    3. 早期覚醒。朝方目覚めて、そのまま眠れない。

    これらが重なることもあります。また、これらに加えて、寝ても熟睡感がない(眠りが浅い)という場合もあります。うつでは、早朝覚醒型が多いと言われています。

    睡眠薬を処方してもらう場合も、これらの不眠パターンは、医師への大切な情報となります。

    更年期障害の治療でよくならなければ……

    不眠が更年期によるものと考えられる場合は、婦人科ではホルモン補充療法(HRT)など、更年期障害に対応した治療が選択できます。

    ホルモン補充療法では、あまり効果が感じられないなど不十分なら、睡眠薬など向精神薬が提案されることもあります。

    軽い場合は、更年期の治療とともに診てもらえますが、場合によっては精神科を受診したほうが良い場合もあり、婦人科から紹介してもらうこともできます。

    向精神薬などの服用は、信頼できる精神科医と相談しながらおこなうことが大切です。服用して心配なこと、不安なことがあれば、医師に遠慮なく尋ねましょう。

    向精神薬はよく効くことが多いですが、薬で少し元気になったところで、自分の生活を振り返り、無理していたこと、こだわりの強すぎたことをあらため、生活を変える作業が必要といわれています。

    医師、カウンセラーなどの専門家のカウンセリングを受けるのもいいでしょう。また、友人、家族などに話を聞いてもらうことも大切です。

    寝る前のリラックスタイムを上手に

    不眠が気になる人は、次のことも試してみましょう。日常生活のケアも思っている以上に有効です。

    夜寝る前の準備は大切

    就寝前に、ぬるめのお湯にゆっくりとつかり、体温を少し上げて、心身をリラックスさせます。入浴から1時間ほど経って、体温が下がってくるときが眠りにつきやすいときです。アロマオイルを湯舟に数滴たらして入浴したり、アロマオイルの香りで寝室を満たすなど、眠りのための準備を整えましょう。

    気にしすぎない、焦らない

    眠れないことを気にしすぎると、ますます眠りが妨げられます。横になっているだけで、体は休まると考え、気持ちをゆったり構えることで、不眠の悪循環から抜け出せることがあります。

    テレビやパソコン、スマホは早めにオフ

    パソコンやスマホのブルーライトは、良質の睡眠を妨げます。

    就寝前の飲みものにも配慮

    カフェインのある飲み物は避けて、温かいハーブティー(眠りを誘うカモマイル、セントジョーンズワート、パッションなど)をゆっくり飲みます。寝酒は、かえって眠れなくなるので控えましょう。アルコールは、夕食のときに、適度に楽しむ程度にするのがコツです。

    今日から快眠

    眠れない、心が落ちつかないときに。ぐっすり眠るためのメソッド4

    睡眠の質を左右する「朝の過ごし方」3つ

    増田美加・女性医療ジャーナリスト
    予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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