食欲の秋の訪れと共にやってくるジビエのシーズンを楽しみにしている人も多いと思います。実は近年、ジビエの食材である野生鳥獣が社会問題になっているのをご存知でしょうか?

高山植物や山林の樹皮を食べるなどの山林破壊、農作物を食べて田畑を荒らすなど、農作物の被害額は200億円を超え、解決策に頭を痛めている地自体も多いのです。

ジビエを広く知ってもらいたい

そこでジビエについて、長野県在住の特定非営利活動法人日本ジビエ振興協議会理事長 藤木徳彦シェフからお話を伺いました。

1998年に長野に移住してお店を始めてから原材料であるシカによる農作物の被害のあまりの多さに驚いたそうです。

そして、自分の目で確かめようと狩猟の現場にも足を運ぶ程、深く関わるようになっていきます。「いくら有害な野生動物でも捕獲している猟師さんはみんな、無駄な殺生はしたくないと感じています。そこで、獲った肉を少しでも食べてもらえれば、気持ちが救われ、猟師さんのモチベーションも上がります」と話す藤木さん。

ご自身も都市と山間部での意識の違いを肌で感じるようになり、様々な体験や現実をふまえて、ジビエをもっと広く知ってもらい食べてもらおう、と奔走するようになりました。

地域と連携したプロジェクトがスタート

弾力のある鹿肉のパテと長野県産の大きなあわび茸を、鹿肉の出汁と赤ワインのソースが味を引き締めて美味。

そんな藤木さんと共同で商品開発している取り組みの一つが、JR東日本の地域再発見プロジェクトです。地域と連携して、地元と共に知恵をしぼる戦略で長野のシカ問題に着手し、2013年から「信州ジビエ料理」の販売を関連レストランでスタートさせました。

体脂肪率が0.6%という驚異的な数値の信州ジビエ(鹿肉)は脂分が少なく、高タンパク低カロリーのうえ「ヘム鉄」が多く含まれるのでアスリートの食事にも取り入れているなど、機能的にも優れた食材です。初年度はカレー、シチュー、パスタソースなど数量限定で販売を始めると予想以上の大人気に。

ジュワーと滲み出る肉汁が食欲をそそります。ジビエバーガーのトングは普通のバーガーとは別にするなどしっかりした衛生管理体制で調理されるベッカーズの厨房。より手軽にジビエを食べてもらおうと、2011年より信州ジビエバーガーの販売をしているベッカーズですが、商品が出来るまでには長い道のりがありました。

大苦戦のハンバーガー計画

信州ジビエをより手軽に食べてもらおうとハンバーガーの計画が上がりましたが、家畜動物の肉と違い野生の鹿肉の取り扱いが難しく、初めての年はハンバーガーのパテを作る工場がなかなか見つからず大苦戦。

そんな時に上田市の福祉施設が名乗りを上げた事で話は進展。2013年の秋に販売をスタートすると物珍しさとニュース性、おいしさで多くのメディアに取り上げられ、たちまち売り切れ店続出という大ヒットとなりました。

今年も「信州ジビエ THE★鹿肉バーガー」(720円・税込)は首都圏のベッカーズで販売されています。駅ナカで気軽に食べられるジビエは食べることにより社会貢献的な意味もある美味しく、環境に優しいバーガーなのです。

ベッカーズ

<信州ジビエ THE★鹿肉バーガー>2015年11月30日まで販売(数量限定のためなくなり次第終了)首都圏17店舗にて販売中

(写真・文/石黒美穂子)

[藤木徳彦シェフ,地域再発見プロジェクト,ベッカーズ]

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