素敵なものは「チョコレート・バー」
この本の著者は、アメリカに住む8歳の少年、ディラン。本のタイトルを「チョコレート・バー」にしたのは、それが彼にとっての魔法の言葉だから。大好きなもの、お気に入りのすべてを総称して「チョコレート・バーみたいに素敵なもの」という意味をこめ、そう呼んでいます。
絵本のなかには、彼が大好きなものがたくさん。近所に住む大親友ジョナは彼にとって「一番大事なチョコレート・バー」だし、そして友だちを助けてあげること、それも「チョコレート・バー」なんです。
ジョナを元気にしたくて描いた絵本
この本をディランが描いたのは2年前、彼が6歳のとき。1冊20ドルする本を学校のバザーで売り出したところ、大人気になり、あっという間に6千ドルを集めました。
ディランが絵本を作ったのは、じつはジョナのため。ジョナは先天性の重い病気を抱えていたのです。
糖原病タイプ1B (GSDと呼ばれる)という、肝臓にかかわる非常に珍しい病です。明日はどうなるかの予測ができない、命にかかわるもの。
そしてジョナが元気になるための治療や薬・研究にかかわる必要な費用をどうしても集めたくて、ディランは絵本を描いたというわけ。
ディランがもたらしたのは「人を動かす力」
自分の親友を救うためにがむしゃらのディラン。彼がもたらした、募金以上に価値があるものとは「人を動かす力」のすばらしさ。自分が大事だと思うことに対し懸命に行動することで、道は必ず開けるということを教えてくれたのです。
病の存在を認知させ、世界中で苦しむ人たちの協力を呼びかけた1冊の絵本が人の胸を打ち、多くの大人たちも賛同、大きな輪が広まっています。そして売り上げのすべてはフロリダ大学の研究所へと寄付され続けており、治療に向けた病気の研究・解明が急がれています。
とくに印象的なのは、「ディランがどんな大人になるのか、本当に楽しみだ」と自分の息子のように優しく語るジョナのお母さんの言葉です。ディランのような子がどのような貢献を社会にするのかを見守ることは、誰にとっても「チョコレート・バー」だと思うのです。