手に取った瞬間、心がおどる繊細で華のある刺繍。柄というよりも一枚の絵画のような、そのたしかな手仕事が、いま日本で見ることができます。
伝統をまもる女性たち
展示会を開催するのは、手織物や手刺繍などグアテマラの手仕事を使った商品を現地先住民女性たちと一緒に制作するブランド「ilo itoo(イロイトー)」。グアテマラの青い空と豊かな自然、カラフルな手仕事と陽気な人たちに魅せられた2人の女性によって立ち上げられたブランドです。そのブランドに対する想いは、こんな言葉からも伝わってきます。
「私自身も小さいころから母に縫物を習ったり、祖母が編み物をしている姿を見て育ってきました。身につけている手仕事に誇りを持って、女性として生き生きと働けてそれが収入になる。作ったものを喜んでくれる人がいて、そしてそれが伝統の手仕事を守ることにもつながっている。こんなうれしいことはないと思います」。
機械ではだせない手刺繍の仕上がり
たとえば上の写真はグアテマラのマヤ系先住民の民族衣装ウィピルに手刺繍がほどこされているものだとか。なんとも鮮やかで女性らしい色彩が魅力的です。
とはいえ数十年前から機械刺繍も見られるようになっていると言います。そうなると時間も労力もかかる手刺繍はなくなってしまうのではないかという懸念がでてきますが、マヤの女性たちにとっては「立体感や細かさが全く異なる手刺繍と機械刺繍は完全に別の物」という認識なのだとか。
たしかにこの刺繍の鳥のような厚み、緻密さは機械ではきっとマネできません。なかでも良い刺繍と悪い刺繍の見分け方として教えてくれたのが、「密じゃない刺繍は引っかかりやすくてあまりよくない」ということ。
昔、裁縫仕事をしていた母が言っていました。「手仕事だと、手を抜くのは失礼だという思いやりの気持ちが込められるので、しっかりとした仕上がりになる」のだと。思いやりを込めて作られたものかどうかは、仕上がりに影響がでるのですね。
伝統とともに新しさを紡ぎだす
また「同じモチーフでも刺し手によって全く違うものができてしまうのは手仕事ならではのおもしろさ」だとilo itooは言います。さらにこんな想いも。
「マヤ先住民たちが潜在的に持つ技術やセンスはとても素晴らしいものです。それをより良く引き出しつつ、私たちが持つアイディアやデザインを共有しあい、彼女たちと一緒に新しいものを紡ぎ出していく。そうすることでより多くの人に喜んでもらいたいと思っています」。
そんなilo itooによる、グアテマラ伝統衣装ウィピルとオリジナル小物の展示販売会が開催されています。
経済の発展と共に効率化され手仕事がわずかになってしまった日本において、手仕事でなければ伝わらない想いにふれられる貴重なひとときを味わえそうです。
【日時】
①3月10日(木) 〜 12日(土)
②17日(木)〜19日(土)※いずれも13:00-18:00
【場所】
Bahar(バハール)
〒135-0023 東京都江東区平野1-9-7 fukadaso 203
03-3630-3670