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私は幼い時、自分が他人と比べて汗っかきであるとは気づいていませんでした。

子供はみんな汗っかきでよく汗をかくものだと思ってもいました。

小学生の頃、砂場で遊んでいると自分だけやけに砂がつきます。

手足にはもちろんのこと、背中やお尻にもついていました。

トイレでよく砂を払っていました。

スカートを履いている時は下着にまでこびりついてなかなか落ちない砂が入り込んでいました。

前髪は何故かいつも湿っていました。

首筋にも髪の毛がまとわりつき邪魔で仕方なかったのを覚えています。

とても活発でおてんばだったので汗を大量にかくことに何も疑問を持たなかったのです。

子供の頃は周りにも指摘されませんでした。

何故か自分だけうまくいかない

小学校の高学年になると勉強のしづらさを感じるようになりました。

まず、ノートが書きにくいのです。

手の汗が染みこんだ紙は湿り鉛筆が滑りません。

用紙が波打ち、文字が真っ直ぐ書けませんでした。

テスト用紙も湿っている上に細い鉛筆で書こうとすると破れてしまいました。

鉛筆さえも汗で滑り持ちにくかったです。

何度も指の汗を拭きながら文字を書いていきます。

体育の授業でも汗で滑り、なかなか逆上がりが出来ませんでした。

運動神経は悪くはなかったのですが上手く鉄棒を握ることが出来ませんでした。

私は地面の砂を手につけ、汗を乾燥させて練習に励んでいました。

暑くもない時期でしたので、そんなことをしているのは自分しかいなかったのですが、特に気に留めていませんでした。

やっと自分が周りと違うと気がついた瞬間

「頭を濡らしでもしたの?」

クラスメートからそう言われ、私はやっと自覚することになりました。

冬場の縄跳びの授業の時でした。

私の髪は洗髪後かと周りから勘違いされるほど濡れていました。

元々顔周り、特に額には大量の汗をかくことは分かっていましたがクラスメートのあまりの驚きっぷりに自分が異常であることを知りました。

クラスメートは水道の蛇口で髪を洗ったのかと本気で思っているようでした。

私は自分の異常を知られたくなくて汗だとは言えませんでした。

それまで、自分はただの汗っかきであると思っていました。

人間の中にはときおり汗っかきな人がいて、自分はその中の一人であると単純に考えていたのです。

それが「ただの汗っかき」というレベルではないことを知りました。

自分が「異常な汗っかき」であると気がついた瞬間、「自分は周りとは違う」「隠さなければ」とっさにそう思いました。

気にすればするほど滲み出る汗

クラスメートに大量の汗を指摘されてから、周りの目が急に気になるようになりました。

誰かに見られているだけで額から汗が吹き出し、気づかれないように手の甲で汗を拭うことが多くなりました。

タオルで拭くことはしませんでした。

夏でもないのにずっとタオルで汗を拭いているわけにはいかなかったのです。

汗をかいていることも、それをしょっちゅう拭いているところも見られたくありませんでした。

それでも、汗をかく時期でもないのに額にかいた汗を他人が不思議そうに見つめていることを知り、余計に焦りました。

「暑いの?」

と聞かれ、

「さっき走ってきたから」

と言い訳をすることもありました。

「なんでこんなに答案が湿ってるの?」

先生が不思議そうに聞いてきたこともありました。

私の答案だけ湿り波打っていたからです。

私は何も答えられませんでした。

みんなの前で手の汗だとはとても言えませんでした。

まだ子供だったとは言え、私は女の子だったのです。

窓ガラスに手をつけると何故かガラスが手の形に濡れる。

私が触れた机は何故か手の形に湿り跡がつく。

私の周りで起こる怪奇現象にだんだんと周りが気づくようになりました。

私はそれが汗のせいだと知っていましたが、周りはそんなことを考えもつかなかったのでしょう。

私も言うことが出来ませんでした。

誰かに怪奇現象を指摘される度に額や手から汗が滲み出し、それを隠そうとする程噴き出してきました。

それが日に日に増していく気がしました。

学校ではよく机に手をついて話したりしていましたがそれをしなくなりました。

机が湿り手の跡がつくからです。

友達の下敷きを握ると汗がついてしまうのでそれも気をつけていました。

人の用紙に触れる際も、なるべく指先で持つようにして湿らさないように注意するようになりました。

冬に友達が私の手の平を触ってこう言いました。

「なんで手濡れてるの? 手洗った?」

冬の冷たい水道で手を洗ったまま、拭いていないのだと勘違いしたようです。

「○○ちゃんの手って、すごく冷たいのになんか汗かいてるね」

友達と手をつなぐとそう言われました。

それからは手を他人に触られるのがすごく恐怖に感じるようになりました。

周りからびっくりされるほど冷たい手。

しかも何故か濡れている。

とても「汗ばんでいる」とは言えないレベルだったのです。

私の手はいつも濡れたように汗をかいていました。

周りと違うと気付き、怪奇現象を指摘され、汗だとバレないように気を遣い、ウソを付く度に噴き出る汗。

気づかれないようにと物に触れる際には細心の注意を払い過ごしていくうちにそれがだんだんとコンプレックスやトラウマになっていきました。

汗がダラダラ、止まらない! 小学生のころから続く多汗症との闘い[体験談](2)へ続きます。

written by shirayuki


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