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私が自分の歯並びを気にし始めたのは、中学生のときでした。
教室で、私は友だちと机を挟んで椅子に座っていました。一緒に宿題をしていたのですが「ちょっと休憩」と言って雑談を始めたとき、友だちがいきなりこう言ったのです。
「◯◯ちゃんって、普通にしてたらかわいいのに、笑うと歯が変だから可愛くないよね」
私はそれを聞いて、びっくりして言葉も出ませんでした。
そのときは何も言い返すことはできませんでしたが、家に帰ってから、鏡で自分の顔、笑顔、そして歯をひたすらに見たのです。
鏡には見慣れた自分の顔が映りましたが、前歯が出っ張って、ガタガタの歯並びの醜さだけが気になります。その日をさかいに、私は鏡を見ることが怖くなってしまいました。
明るい光の下で鏡を見ると、自分のガタガタの歯並びが余計に目立つような気がして見ていられず、洗面所の電気はいつも消したまま。
これが私の歯並びに対するコンプレックスの始まりでした。
人前に出ることを避け続けてきた14年間
たったひと言の言葉がどうしても頭から離れず、自分の歯並びの悪さばかりが気になるようになってしまった私。
高校生になり、新しい友達を作るときにも、初めて会う人たちはみんな、私の歯並びの悪さに注目しているような気がしました。
そして、歯を出して笑うことを自然に避けるように……。笑うときも必ず口は閉じたまま。
大きな口を開けて笑う人を見ると、どうしても目で追ってしまうくらいにうらやましかったです。
また、人前に出るようなことも極力避けるようになりました。
今から思えば、ばかばかしく、笑ってしまようなことですが、私は自分の出っ張った前歯が少しでも奥に入らないかと、ときどきペンチで力をかけたり、ベッドの木枠に歯をこすり当てるようなことをしていました。もちろん何の変化もありませんでしたが……。
実家のベッドには、前歯の跡がびっしり。それを見るたびに、当時の苦しかった日々を思い出すんです。
社会人になり、歯列矯正を決意
ずっと自分の歯並びに密かに悩み続けてはいましたが、大人になるにつれ、自分のコンプレックスとも少しずつ向き合えるようになりました。
社会人になってからは、明るさを取り戻し、楽しく働いていました。
そんなとき感じた奥歯の激しい痛み。歯医者に行くとひどい虫歯になっていると言われました。
「もうここまで来たら、抜くしかないです。抜いた後、どうするか考えてからまた来てください」
抜いたあとどうするか、というのは歯を抜いてできた隙間をどうするかということです。
選択肢は4つ。最も一般的な方法である、ブリッジ。両隣の歯を支えにして、人工歯を埋めるというものです。2つ目は、費用はかかるものの、ほかの歯に負担のかからないインプラント。3つ目は部分入れ歯と呼ばれる取り外しのできる義歯を作ること。
そして4つ目が、空いた隙間を利用して、歯列矯正をし、歯を全体的に後ろに下げて隙間を埋めるという方法でした。
私はこのとき「歯列矯正をしたい!」と心から強く思いました。
虫歯で抜歯をしなくてはいけなくなったから、その隙間を埋めるための歯列矯正……。
見栄え以外の理由があることで、歯列矯正へのハードルが下がったような気がしました。
それまで、私はずっと歯並びが汚いことをまるで気にしていないように振舞っていたからです。
大人になってからは、誰にも歯並びのことを言われていなかったのに、歯列矯正をすることは、自分がずっと気にしていたことを周囲に宣言してしまうようで、なんだか恥ずかしいと思っていました。
コンプレックスを人の目に晒すのはやはり勇気がいるんです。
長い間歯列矯正に興味は持っていましたが、きっかけがなく、行動にうつせていませんでした。
幸い貯金もあったので、私は歯列矯正をすることを決意しました。
まずは病院選びから
抜歯をした病院が矯正専門の歯科ではなかったので、しっかり治療ができるよう、まずは病院選びから始めました。
職場から通える範囲内にある矯正歯科の病院をインターネットで調べ、気になった病院に連絡し相談。それを何度も繰り返しました。
費用も決して安くないし、治療期間も短くとも3年以上はかかると思っていたので、病院選びはかなり慎重に行いました。
2か月間くらいかけて、さまざまな病院へ。どこの病院も相談は無料だったので助かりました。
レントゲンを含む事前検査もしてくれる病院もあり、具体的な治療方針を聞けることも。
矯正医の先生のタイプはかなり幅がありました。先生との相性は重要だと感じていたので、信頼できる先生か、なんでも聞ける雰囲気の先生か、話しながら見極めていきました。
どこの病院へ行っても「歯列矯正はした方がいいですよ」「本当にきれいになりますよ」とアドバイスされ、今まで見て見ぬフリをしてきた歯並びは、やはり治療するべきなんだと改めて実感。
でも、なかには嫌な思いをすることもありました。ある矯正医の先生は、部屋に入った私の顔を見るなり「かなり突出していますね。せっかくきれいなお顔立ちなのに、歯並びのせいでもったいないですよ」と、まだ挨拶もしていないのに、はっきり言ったのです。
もちろん自分の歯並びの悪さを自覚したうえで、相談に行ったわけですが、そんなひどいことをいきなり言われるとは思わなかったので、ショックを受けました。
話してみると、サバサバとして頼り甲斐のありそうな先生という印象はありましたが、やっぱり患者の気持ちをくんでくれるような医師でないと、ずっと付き合っていくのは辛いと思い、その先生は選びませんでした。
私は、よく話を聞いてくれて、優しい物腰の先生にお願いすることにしました。
17年間、思い切り笑えなかった私を変えたひとつの決意[体験談](2/2)に続きます。
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