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プロレスリングBASARAの木高イサミが、11・26BASARA成城ホール大会で関根龍一を下してユニオンMAX王座初防衛に成功した。
残念ながらこの試合をニコプロで見ることは出来ないのだが、イサミが11月29日の『ニコプロ一週間』にゲスト出演が決定したので、恐らくこの試合についての話も出るだろう。それ以外にもタンク永井とのタッグでSTRONGEST-K TAG王座に挑戦した、KAIENTAI DOJOの11・12千葉BlueField大会も12月に放送する。


大日本プロレスにも参戦しているし、BASARAが放送出来ないとはいえ、いまさらイサミについて説明は不要だろう。そこで今回取り上げたいのは、そのイサミに対して上記のBASARA成城大会で対戦要求をした若手選手、阿部史典についてだ。
阿部は2015年に名古屋のスポルティーバ・エンターテインメントでデビューした選手で、現役僧侶という顔を持ち、ファイトスタイルが澤宗紀さん(引退)にそっくりなことで注目を集めた。最近ではどインディーからメジャーまで様々な団体に参戦している売れっ子レスラーなので、ニコプロで試合が流れる機会もかなり多い。

よく「若いうちは経験を積んでナンボ」と言われるが、阿部の場合はとにかく経験を積みまくり、“売れる速度”に追い越されないように必死で成長しているような感じだ。
実際、阿部の成長は各団体で“結果”を残しはじめたことで分かる。HEAT-UPではシングルリーグ戦『灼熱王』の中で兼平大介から勝利をあげた。ガッツワールドではTORUとのコンビでGWC認定タッグ王座を奪取。ちなみにこの阿部、初戴冠となった11・14新木場大会は近日ニコプロで放送される。


ハッキリ言って、いま一番勢いのある若手選手と言っても過言ではないだろう。そして阿部は上記の通り、イサミに対戦要求した。阿部からしたらイサミは様々な団体に参戦する売れっ子レスラーの大先輩だ。しかも挫折を味わいながらも、己の体ひとつで現在の地位を築いたイサミに対して、「超えたい選手」という思いを抱くのも当然だろう。
勢いのあるいまだからこそ、自分はどこまで通じるのか。いや、勢いに乗っているいまならイサミの首を獲れるのではないか。そう思ったからこその対戦要求だろう。イサミもそんな阿部に対し、自らベルトを懸けると言ったのは期待をしている証拠だ。BASARAの12・14新木場大会でおこなわれるイサミvs阿部のユニオンMAX選手権が楽しみだ。

しかも阿部のチャンスはそれだけではない。阿部は佐藤光留が主催するハードヒットにもほぼレギュラー参戦している。阿部はハードヒットに対して思い入れが強い。光留はよく「蛍光灯を使うデスマッチや二階から飛んだりするのもプロレスならば、格闘技としてのプロレスがあったっていいじゃないか」と言っているが、阿部もそういう考えを持つレスラーだ。
普段から鈴木秀樹らと“強いプロレスラー”になるための練習をし、ハードヒットは「自分にとって大切で大事な場所」だという。そんな阿部は12・30ハードヒット新木場大会で、青木篤志との対戦が決定している。阿部の先輩である岩本煌史がロッキー川村を破って大躍進したように、阿部にだって……いや、それ以上に阿部には光留が「Uの末裔」を自称してこのスタイルを継承したように、ハードヒットを光留の一代で終わらせることなく継承するくらいの存在になってもらいたい。

イサミに対戦要求した際、阿部は「やっぱりレスラーである限り、超えたいっていう人間が何人かいて。もちろん澤さんがいて、イサミさんがいて、自分はそんな人をごちゃ混ぜにしたハイブリッドになりたい」と言った。
阿部史典というレスラーは澤宗紀さんの影響を大きく受けながらも、木高イサミ、佐藤光留といったレスラーの影響も受けている。その辺がある意味で“澤さんのモノマネ”で終わらず、徐々に独自の阿部スタイルを築いている要因かもしれない。

イサミと光留、そして多くの関係者やファンが期待をしている阿部だが、阿部本人は実に貪欲な男だ。坊主のくせに(失礼!)。阿部が理想としている“ハイブリッドレスラー”になるためにはイサミ超え、そして光留超えが必要かもしれない。しかもただ試合に勝つだけでなく、イサミのようなカリスマ性を身に付け、光留にようにUの精神やスタイルを継承していく。なかなか過酷な道のりだと思うが、選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にありだ。

文●佐瀬順一