ミライ: みなさんこんにちは。シリーズ「世界一わかりやすい経済活動の話」、(その1)に続いて今日は(その2)です。前回はお金とモノがぐるぐる回ってみんなに必要なものが行き渡る様子が示されました。今日はなんですか? フツクロウさん。


フツクロウ: 今日はいきなりこのシリーズの核心「景気」についてじゃ。景気がいい悪いとよく言うが、なかなかの謎ワードとは思わんか。


ミライ: 思います! 景気が悪くなると、みんな支出を控えて、だからモノが売れなくなって、給料が減るのでますます支出を控えるという悪循環は分かる気はしますが、なんか鶏と卵の話みたいで、結局何が悪いんだろうと。


フツクロウ: ホッホッホ。その通りじゃの。じゃが、前回の例を使って考えるとわかりやすいんじゃ。たとえば太郎くんに注目しよう。水1杯はコイン1枚で売って、リンゴ1個はコイン2枚で買ったの。


ミライ: はい、間に仕入れて売るおじさんがいたからですね。


フツクロウ: ホウじゃ。もしもじゃ。太郎くんが「水1杯だって、リンゴ1個だって、おじさんはコイン1枚で買っている。価値としては同じだ。リンゴ1個にコイン2枚払うのはもったいない。」と考えて、時間をかけて花子さんのところに行き、水とリンゴを物々交換したらどうなるかいの。


ミライ: 太郎くんと花子さんは必要な水とリンゴが手に入りますが、おじさんのすることがなくなりますね。


フツクロウ: ホウじゃ。前回の2番目の例でモノが仕入れの3倍の値段で売れることで、2倍の時より雇用が一人増えたが、物々交換になると雇用が一人減ることになる。


ミライ: そうですね。


フツクロウ: ここに景気の重要なポイントがある。最初の例はごく普通のお金やモノの動きのように見えるが、よく考えるとおかしくないだろうか。

 太郎くんは水1杯はコイン1枚を売って、リンゴ1個をコイン2枚で買う一方、花子さんは水1杯はコイン2枚で買って、リンゴ1個はコイン1枚で売っておる。同じモノなのに価値が逆転している。おかしいとは思わんか。


ミライ: でも、間でおじさんが運んでくれるわけだから、その手間賃は要りますよね。


フツクロウ: それは結果としてそうなっておるだけじゃ。花子さんは、手間をかければ太郎くんと物々交換することができる状況でも、普通は進んでリンゴより高い値段で水を買うんじゃよ。


ミライ: ??? なぜですか?


フツクロウ: それは花子さんにとって、リンゴはありふれたモノであり、水は簡単に手に入らない貴重なモノだからじゃ。リンゴはいくらでもあり、少なくとも自分が困ることはない。もし多く取りすぎてしまったら、腐らせるくらいなら通りすがりの人にタダであげることもあるじゃろう。

 でも花子さんにとって水は貴重じゃ。リンゴなんかよりずっと価値が高い。


ミライ: なるほど、逆に太郎さんにとってはリンゴの価値が水よりずっと高いんですね。


フツクロウ: ホノ通りじゃ。だから、おじさんから水より高い値段でリンゴを買うんじゃ。仮におじさんがいくつもの山を越え、猛獣に襲われる危険を冒さないとリンゴを届けられないとする。その場合手間賃いれて、1個コイン10枚で売らなければわりに合わないとしても、太郎さんにとってその価値がなければ、太郎さんは買うことはない。

 最初の例で太郎さんも花子さんもコイン2枚出す価値があると考えるから、おじさんとの取引に応じておるわけじゃ。


ミライ: ふむふむ。人それぞれ、モノに対する価値観が異なるからおじさんのような活動が可能になるんですね。


フツクロウ: ホノとおりなんじゃ! モノの価値が違う間をつなぐことで、別の人がお金を手にすることができる。いわゆるビジネスじゃ。

 そして、おじさんがお金を手にすることによって、このおじさんは自分にとって価値の高いモノを買う。そこにもビジネスが発生し、次の誰かがお金を手にする。

 この連鎖が「景気」になるんじゃ。


ミライ: ううむ。分かったような分からないような。


フツクロウ: たとえば、水とリンゴの物々交換のモデルがあったの。