マイナンバーは日本で運営できるのか。(その2) はこちら。 


 もうすぐ導入されるというマイナンバー制度。しかし、日本年金機構から個人情報が漏洩した事件にみられるように、導入して大丈夫だろうかという不安もあります。

 私はアメリカにいたときに、SSNといういわゆるマイナンバーを持っていて、日常あらゆるところで使っていましたし、とても便利なので日本でもいずれは導入していろいろ効率化を図っていくのだろうなと思っていました。

 とはいえ、二つの国はいろいろお国柄も違いまして、このまま導入していいのかといろいろ不安もあります。私の体験も紹介しながら、日本のマイナンバーが抱えるであろう問題を考えようと思います。

問題1 日本は平和すぎていまだに写真なし身分証明書がある

 ある時、健康保険証を持ち歩くようにしたのですが、それを人に話したら「落としたら借金されるぞ」とダメだしを受け、止めたことがあります。写真付きでない身分証明書は悪用されやすいというわけです。

 アメリカには健康保険証はありません。そのかわり、IDが書かれたぺらぺらの紙を持ち歩いていて、病院でそれを見せると、病院はどこかに連絡して確認していました。アメリカにできて日本にどうしてできないのかいまだに不思議です。

 アメリカには写真のない身分証明書はないです。というか、運転免許証にほぼ統一されてます。「運転できひん人どうすんねん!」と思うとおもいますが、運転免許の試験所に行けば、運転はできない、身分証明書を発行してくれます。

 この仕組みには驚きました。さすが効率化の国アメリカ。日本だとその代わりに住基カードを作ったのだと思います。しかし、じゃあ写真付きでない健康保険証は廃止するかと思いきや、わざわざ写真なし住基カードを作って写真なしを増やす始末。そのせいもあって、身分証明書はぜんぜん整理されず、住基カードはほとんど普及しません。それどころか経費はかさむし、詐欺の温床になりかねません。住基カードを日頃から見てなければ、偽造されても偽物とわかりません。運転できない人も運転免許所で身分証明を取るというのは、経費も変わらないし、見た目は運転免許証と同じ作りなので、市民も確認しやすいことでしょう。

 逆に言えば、それだけ頑丈にしないと詐欺が大変な問題になります。アメリカに行ったばかりの頃、パスポートとトラベラーズチェックでデジカメ買おうとしたらなんかものすごいチェックが厳しくて、たかがデジカメにと仰天したことがあります。

 日本は逆に財布落としても返ってくるという点で海外にびっくりされる国。日本でも健康保険証落としたら借金作られるかもしれませんが、返ってくる可能性も高く、写真なし身分証明書なんてものがいまだに残ってしまう遠因になっています。昔々なら写真もそれなりに高価でしたから意味もありましたが、この時代、そんなものは悪でしかありません。どんどん廃止すべきなのですが、市民がそんなに困り果てないくらい、日本はとても平和なのです。

 そんな廃止もなかなか進まない日本で、マイナンバーまでいれて大丈夫か?という不安はあります。

 (2016/6/24 追記: 日本でも高齢で運転免許所を返納すると、運転経歴証明書をもらうことができて、それは身分証明書として使えるそうです。いずれ運転できない人にも出すようになるかもしれないですね。)

問題2 みんな柔軟だけど厳密運用が苦手

 アメリカのレストランだと、バスボーイと呼ばれる片付けだけする人とかがいて、その人は注文絶対取れないし、逆にウエイターがちょっと気を利かせて片付けたりなんてことも絶対してはいけないといいます。

 アメリカこういう厳密運用が得意です。だから、客からするとぜんぜん融通利かなくてすごく困ることもありますが、アメリカの従業員は職務規定以外なのでできませんとか、お客さんに普通に言えます。

 日本だとそういうとことても融通を利かすことができますし、いわゆる日本の「おもてなし」はそういう力が生み出していると言えます。

 しかし、この日本の特性は、残念ながら IT のセキュリティーとは相性が悪いです。