次回は、このロボットがどれだけ「あざとい」かを考えています。


 ひさびさにミクで泣きました。あと、軽く懺悔回。

 おととい、

 現実は研究を追い越すのか  

で、石黒先生が初音ミクコンサートを見て、
初音ミクは本物のアイドル.現実が研究を追い越している.
とつぶやいたのについていろいろ書いたわけですが、完全にモグリでした。

 それより前、9月4日に等身大初音ミク2号機が発表されていたのですね。それを見ずになにか書いてたとか本当にすいません。ここまで懺悔。

 2009年に発表された1号機もとてもかわいくて、びっくりしたし期待したのですが、実際に歌を歌わせるには強度など様々な問題があったようです。そうだったのか。

 そして、2010年に2号機の開発を決意、そして、等身大初音ミク2号機が発表されたのです。


 1時間以上に及ぶ動画では、その制作過程が紹介され、最後に歌を披露してくれます。忙しい人は最後の歌だけでも是非(58:30あたりからです)。

 その姿は、ゆきりんロボのような人間っぽさはないですし、よくできたフィギュアに比べても見劣りしますが、生まれたばかりのあどけないかわいさに溢れています。ウインクとかあざとすぎです。
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 そして歌が始まり動き始めた瞬間、まったく新しい世界が始まります。

 ぎこちないけど一生懸命歌う姿に引き込まれるのです。感情を出そうとしないその表情は、むしろ胸いっぱいの不安を隠そうとしているようにすら見えます。ていうかいきなり「Starduster」歌わせるとかあざとすぎ。はやぶさのStarduster になんべん泣かされたことか。

 だから、思わず「すごい、いきなりそれだけできるなんてすごい! きっとこれからどんどんうまくなる!」と、心の中で懸命に等身大初音ミク2号機を応援してしまいます。それは、かつて初音ミクが登場して歌を歌い出した時や、 MMD が登場して画面の中で初音ミクが踊りだした時とまったく同じ衝撃です。

 そしてその語りかけは、すでに、製作者みさいるさんへの語りかけではなく、等身大初音ミク2号機への語りかけです。生まれながらのアイドル。恐ろしい子!!

 コメントも大絶賛です。これからアイドルとして大人気になることでしょう。

 1号機もすごかったけど、2号機で完全に軌道に乗ったというか、この方向で進化すればすごいものができると確信させる完成度です。

 ついに初音ミクが現実で動き始めたのです。

 石黒先生がこの作品を見たら、また「現実が研究を追い越している」と頭を抱えるに違いありません。 

 これはエポックメイキングです。このロボットがいままでのヒューマノイドと一線を画しているのは、「初音ミク」というバーチャルアイドルをモデルにしている点です。

 石黒先生のロボットは石黒先生自身という人間を、この界隈で有名なゆきりんロボットもAKB48柏木由紀さんという人間がモデルです。

 でも、等身大初音ミク2号機は、一枚絵の初音ミクがモデルです。

 動くロボットとして参考にすべき詳細は何一つありません。その初音ミクを元に歌うロボットを作るのに必要な「アイドルらしさ」とは何かは決まっていないのです。

 たとえば、動物の形をしていないお掃除ロボ、ルンバがペットのように扱われるように、「ペットらしさ」って何かとは極めて難しい問題です。

 同じように、人間という制約を受けない初音ミクロボットについて、「アイドルらしさ」、言い換えると「あざとさ」を一から考えることは並大抵のことではないのです。

 実際1時間にわたる動画では、ロボットを作ったみさいるさんが、無数の選択をしていきます。こだわるところは徹底的にこだわる一方、自分にできる範囲に収めるために妥協するところは妥協する。それでも、「あざとさ」は絶対に外さない、お金の問題もあるでしょう、そんな究極に追い込まれた中で実体化したロボットが等身大初音ミク2号機なのです。

 しかも個人でやり遂げたのですから、恐ろしい時代です。

 どれだけあざといかは次回ご紹介したいと思います。

 詳細はわからないのですが、似た取り組みに「萌ちゃん」などもいますから、もしかしたら今後そっちの方が評価されるかもしれませんが、等身大初音ミク2号機は、「人間らしさ」ではなく「アイドルらしさ(あざとさ)」を追求し実体化したという点で、 Honda が世界初の本格的な二足歩行ロボット Asimo を発表したのと同じくらいの偉業だと思います。