岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/11/08
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2017/10/22配信「2049公開記念!『ブレードランナー』は、35年前の『シン・ゴジラ』だった?!」の内容をご紹介します。
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2017/10/22の内容一覧
- 本日のお品書き 岡田斗司夫名言集
- 書評と映画評は違う
- 『ブレードランナー』あるある
- 24歳の岡田斗司夫と『ブレードランナー』の出会い
- ブレードランナー「映画化の始まり」
- 原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』あらすじ
- 『アルジャーノンに花束を』の映画化権
- ハンプトン・ファンチャーとは何者か
- 電気羊から離れていった『ブレードランナー』
- ファンチャー版のラストシーン
- 蚊帳の外に置かれていた原作者フィリップ・K・ディック
- 【捨ておもちゃ】『ブレードランナー』のスピナー
- シド・ミードによって完成したビジュアルイメージ
- 最初の主演候補は、ダスティン・ホフマン
- 「レイヤリング多重層表現」で未来の世界を作った
- ハリソン・フォード以外演技できない問題
- 役者の演技に期待しなかった黒澤明
- なぜロイ・バッティはデッカードを助けたのか?
- デッカードはレプリカントだったのか?
- 本当のエンディングは?
- 最初は売れなかった『ブレードランナー』
- フィリップ・K・ディックとの和解
- リドリー・スコットのやりたかったこと
- オタクは二次元嫁の夢を見るか?
「レイヤリング多重層表現」で未来の世界を作った
81年の3月、2か月遅れでようやっと『ブレードランナー』の撮影が開始されます。
この時期から、セットも組みはじめました。車だけを描くという約束だったシド・ミードが、なぜだかずーっと現場にいて、仕事してくれたんだよ。
最初はロンドンでロケをする予定だったんだけども、諦めて、カリフォルニアのバーバンクにある「オールドニューヨーク・セット」っていう場所を使うことに決まります。
ここは映画業界の人がよく使っているオープンセットなんだよ。映画界の人だったら、誰でもお金を出せば使えるところ。
まず、美術監督が、このオールドニューヨーク・セットのいろんな部分を写真で撮りまくる。次に、その写真をポスター大に引き伸ばして、その上に、直接、シド・ミードがチューブとか箱とかの装飾を、「ガッシュ」っていう塗料でガーッと描き足していって、それをそのまんま作っていったんだ。
そうやって未来の世界がどんどん出来ていったと。
シド・ミードがやった、この辺の、コストを抑えつつ未来世界を作る表現っていうのは、すごかったらしいよ。
例えば、道路の脇にどこにでもある駐車ポストを見て、「あの上に、こういう箱をかぶせると未来の世界っぽくなる」とか、他にも「信号機の上にちょっとこれを乗っけると未来の世界になる」とか、「ビルの壁にこの箱をつけたら、急にすごい格好良くなる」っていうのが、あいつ、一瞬でわかるんだよね。
そういうイメージを、実際の写真の上からアクリルガッシュでガーッと描いちゃう。すると、これから作るセットの完成図がその場で出来上がるようなものだから、もう、美術監督にしたら、そのまんま再現するだけでいいんだよ。
そうやって、本当に、箱とかをいっぱい作って貼っていっただけで、あっという間にオールドニューヨークが未来の世界になっていったんだって。
さて、やっとこの話に入るんだけど。
『エイリアン』というのは、リドリー・スコットが開発した「レイヤリング多重層表現」というのを映画史上で初めて使った作品なんだけど。『ブレードランナー』は、その完成形だと言われている。
じゃあ、そのレイヤリング多重層表現というのは何か?
あのね、それまでのSF映画の作り方っていうのは、こうだったんだ。
(パネルを見せる。『スターウォーズ』の画面)
これは、ほぼ同じ時代に作られた『スター・ウォーズ』のワンシーンなんだけど。この時代のSF映画の作り方っていうのは、「未来っぽい乗り物を作って、キャラクターにいろいろかぶせて、後ろの建物とかに、ちょっと手を加える」という作り方だったんだよ。
ところが、リドリー・スコットっていうのはCM畑の人間なんだ。CMの人間というのは、画作りにまったく妥協しないんだよね。
例えば、これがレイヤリング多重層表現の実例なんだけども。
(パネルを見せる。『ブレードランナー』の画面)
やってることは、さっきの『スター・ウォーズ』と基本的に同じなんだよ。車があって、その手前に人がいて、バックにちょっと未来的に見えるものが置いてある。だけど、こっちの方では、とにかく、いろんなものを「層」として考えているんだ。
「一番手前にはプロペラをつけて、くるくる回そう」、「その奥には、目を奪うようなネオンで照らして、車の上にもパトランプみたいなものを光らせよう」、「上から雨を降らして地面を濡らして、この光っているものの照り返しとかをやろう」、「おまけにスモーク焚いて~」というように。ある画面を作る時に、「未来の世界なんだから、未来っぽい服着せて、未来っぽい乗り物に乗せて、未来っぽい建物を建たせればいいや!」ではなくて、「その間の空気はどうなっているのか? 光はどうなっているのか?」っていうことを、一つ一つ、レイヤー構造みたいに考えて重ねていく。
これ、今考えたら当たり前なんだよ。なぜかって、こんなのは、デジタル表現でいくらでもできるから。
でも、リドリー・スコットがすごいのは、アナログな撮影手段しかない時代に、そういうイメージをはっきりと持っていたところなんだよね。
最近の『プロメテウス』とか、『エイリアン:コヴェナント』とかを見ても、お話はダメダメなんだけども、リドリー・スコットの作る画面って、めちゃめちゃキマってるんだよ。
それはなぜかというと、アナログの頃から、こういうレイヤー構造で画面を作ることをずっと考えてた監督だったからなんだよね。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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