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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『天空の城ラピュタ』のテーマは、機械文明批判ではない!」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『天空の城ラピュタ』のテーマは、機械文明批判ではない!」

2018-02-02 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/02/02

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2018/01/07配信「宮崎駿は超科学をどう描いたか。『天空の城ラピュタ』をとことん語る!」の内容をご紹介します。
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    2018/01/07の内容一覧

    押井守の『ラピュタ』批判

     たぶん、『ラピュタ』のテーマを文明批判だと思ってる人というのも、だいたい前田真宏と同じような意見だと思うんですよ。
     このオープニングに象徴されるような、「機械文明とは何だろう?」とか「人間は大地の上に立っていなければいけない」というメッセージをちゃんと受けとって、前田くんのようにすごい感動するんだと思うんですけども。
     ただですね、押井守は、それに関してすごい批判してるんですね。

     押井守は、『誰も語らなかったジブリを語ろう』という本の中で、「パズーの住んでいる炭鉱の町と、ラピュタには、本質的な違いなんてない。どっちも機械文明じゃないか。」というふうに断言してるんですね。
     「パズーが住んでる炭鉱の町を、まるで素晴らしい「人間のふれあいのある場所」として描いているけれど、そうじゃないだろう。あれだってラピュタと同じ機械文明だ。いや、こっちは人間の匂いが感じられる、なんて言っても、もっと超未来から見たら、ラピュタの科学力だって人間臭さが残るなつかしい技術だと思われるかもしれないだろ」というのが、まあ、押井さんの主張なんですね。
     反重力で空を飛ぶラピュタがダメだというならば、石炭で空を飛ぶタイガーモス号もダメということになる。それを、「こっちは良くて、こっちはダメ」と言うんだったら、それは「思想」ではなく、単なる「趣味の押し付け」であり、「公害がダメ」と言っている人間が煙草をスパスパ吸ってるのと同じだと。
     つまり、「ラピュタの中で描かれている文明批判は、ただ単に、宮﨑駿自身がが嫌いなものを、ダメというふうに否定しているだけだ」というのが、押井守さんの主張なんです。

     この押井さんの主張というのは、一定の支持を集めているんですけども。ところが、それだけで考えると、前田真宏の感動が説明できないですね。
     前田真宏だって、バカじゃないですから、押井さんが言っているようなことなんてわかっているはずなんですよ。そんなことはわかっていても、あのオープニングを見て感動しているんだし、僕らが『ラピュタ』をテレビで見て、「ああ、やっぱり、これいいよな」って思うのは、「それだけじゃないもの」が込められているからなんですね。
     あのオープニングの中には、「正しい科学と間違った科学がある」なんてことは出てこないんですよ。別に、「農業に使ってるから正しい」、「地面を掘っているから間違ってる」、「排気ガスを撒き散らしているから間違っている」というふうには描いてないんです。
     そうじゃなくて、全部シームレスに「一繋がりのもの」として描いているんです。「人間は空を飛ぶ楽しさを覚えた。しかし、同時に空を戦場に変えた」みたいな描き方になっているんですね。風はいつも吹いていて、人は思い上がって罰を受けただけで。「じゃあ、どこで間違えたのか? 間違いのポイントはなんなのか?」と問いかけるだけなんです。

     主人公のパズーという少年は「機械職人」になりたいわけですよ。
     「炭鉱で働いている」と言っても、炭鉱を掘っているわけでも何でもなくて、機械職人になりたくて、ボイラーを扱っている親方の所で弟子修行しているわけですね。おまけに、休みの日には、一人で飛行機を作ってる。それくらい機械が好きな少年なんです。
     「機械文明が間違っている」というテーマだとしたら、普通に考えれば、「パズーは、この映画が終わった後、シータと一緒に田舎に行って農業をやる」ということになっちゃいますよね? でも、そんな甘いことにはならないんです。
     なぜかというと、この映画の中には、同時に「シータという女の子が一人で農場を経営していた」という話が出てくるからです。お父さんもお母さんも死んでしまったのに、年端もいかない少女がたった一人で、どうやって農園を運営できていたのかというと、飛行石の不思議な作用というのがあったからなんですね。飛行石の不思議な作用のおかげで、いつも農作物が実ってるわけなんですよ。
     これについては、来週、詳しく話す予定なんですけど、飛行石の不思議な作用の中には「植物を生やす」というのがあるんですね。だから、ラピュタも発達しすぎた植物に囲まれてるわけですね。「ラピュタが上を通ると、その下で鉱物が騒ぐ」というのがあるんですけど、さらにその下では、作物が伸びていくんです。
     つまり、シータがやっていた農業ですら、機械文明の1つということなんです。ラピュタのものすごく不思議な機械文明のおかげで、彼女は、他所の人が貧乏なままにやっているのではなく、「ラクな農業」をやっている。いわゆる機械化農業をやってるのとまったく同じなんですね。
     なので、パズーが間違ってるわけでもなければ、農業が素晴らしいわけでもないんですよ。劇中の台詞では「大地に還れ」と言ってるんですけども、本当のテーマはそうじゃないんですね。「人は生きようと必死に努力して、そして、いつも間違える」というのが本当のテーマなんです。

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