岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/02/09
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/01/14配信「『天空の城ラピュタ』解説の決定版!人間:宮崎駿の面白さにまで迫る!」の内容をご紹介します。
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2018/01/14の内容一覧
- 『DEVILMAN crybaby』つまんないよね
- ちょっと頭のおかしいアニメ『ポプテピピック』
- 4タイプで言うと、宮崎駿は理想型、高畑勲は法則型、鈴木敏夫は司令型
- SFとしての『ラピュタ』
- ラピュタの超科学技術で作られたロボット兵と飛行石
- 『不思議の海のナディア』との関連
- ラピュタ本体の見せ方のうまさ
- 『天空の城ラピュタ』の幻の産業革命と、『ジュール・ヴェルヌの世界』
- パズーはエリートだった
- 石炭と蒸気の第1次産業革命と、石油の第2次産業革命
- 飛行機が存在しない世界
- 『ラピュタ』の主人公はシータ?
- バルスとは何か?
- なぜ宮崎駿は手塚治虫が気になるのか
『天空の城ラピュタ』の幻の産業革命と、『ジュール・ヴェルヌの世界』
僕は『ラピュタ』の中で描かれている世界を「幻の産業革命」と呼んでいるんですけども。
では、本当の産業革命というのは、どんなものなのか? 実は、産業革命という時代がどんなものかを端的に表したものを、我々はすでに知っているんですね。
それは何かというと、『ジョジョ』第1話です(笑)。
「19世紀! それは産業と貿易の発展が人びとの思想と生活を変えた時代だッ! 依然!食糧不足や貧富の差が激しいにもかかわらず、大人も子供も「自分もいつか金持ちと同じようなくらしができるッ」このような幻想をいだいていたッ! それは嵐のようなすさまじい渇きだったッ!」と。カッコいいですよね。
19世紀の産業革命の時代というのは、これなんですよ。つまり、根本に何があるのかというと、科学技術の発展ではなく、それによってもたらされた豊かさへの夢や可能性。そして、そのおかげで、すべての人間がものすごい欲望「渇き」を持つことになってしまった。ここが特徴なんですよ。
蒸気機関の発明によって社会のすべてが変わってしまった。貧富の差が広がったんですよね。
昔は、ごく一部の金持ちである貴族と、その他大多数の貧乏人である農民しかいなかったところから、みんなが一斉に「金持ちになれるかもしれない」という可能性に飛びついた。そして、ワーッと群がった貧乏人の中から、ちょっとだけ金持ち、そこそこ金持ち、すごい金持ち、というのが出てきたと思えば、逆に、より貧乏になるヤツもいた。
それまでは、全員、普通の貧乏人だったところに、階層が無限に生まれていって、結果、貧富の差がドンドン広がっていってしまった。
これが、産業革命の技術以外の部分についての大きなポイントの1つ目です。
(パネルを見せる)
このラピュタの最初の方で描かれる、エレベーターを覚えていますか?
親方から「お前がやってみろ。出来るな?」と言われたパズーが、シータのことを気に掛けながらも、なんとかエレベーターを操作するというシーンがありました。このエレベーターは、「ケージ」(檻)というふうに言われています。
(中略)
パズーが機械工の見習いとして働いていたというのは、すごく幸運なことなんですよ。
僕らは、パズーを見て、「あの時代の鉱山で働いている平均的な子供なんだな」って思っちゃうんですけど、実は、パズーというのは、鉱山で働く子供たちの中では超エリート組だったんです。
(パネルを見せる)
これは、産業革命の時代の炭鉱での子供達の働きというのを絵にしたものなんですけども。鉱山の炭鉱というのは、地下の深い場所に、子供たちしか入れないような細い坑道が縦横無尽に走っています。そこで働く子供たちというのは、その中で、かろうじて敷いてあるレールの上で、トロッコを何キロもの距離、押したり引いたりしていました。
鉱山で働く子供達は、栄養不足によって背が低く、にも関わらず、あまりの重労働で、筋肉だけがすごくムキムキになっていたんですね。なので、当時は鉱山の子供達というのは一目見ただけでわかったと言います。全員、背が発育不良みたいに小さくて、そのくせ肩がすごい盛り上がって筋肉隆々だったそうなんです。
イギリス人の語る昔話の中に出てくる「コボルト」とか「ドワーフ」っていうのがあるじゃないですか。「鉱山で働いている小人で、背は低いんだけど筋肉がムキムキ」っていう人たち。あれは、おとぎ話でもなんでもなく、あの当時、鉱山で働いている子供達や大人を見たら、みんな、そんな感じの体型になってるんですね。
ラピュタの原作小説の中で、ポム爺さんから「鉱山の下で働いている馬は、一度降りたら、一生外に出てこれない。俺たちもそのようなものじゃないか」と言われたパズーは、だからこそ余計に、地上で働ける嬉しさや、運の良さを実感するんです。
(中略)
炭鉱で働いているポム爺さんというのが、なんであんなに小柄で、なのにがっしりしていて、いつも腰をかがめたように立っているのかというと、子供の頃からずっと、すごく狭い坑道の中を移動しているからなんですよ。
だけど、僕たちは、それを「そういうキャラクターなんだな」と見てしまう。
産業革命の時代というのは、全員が欲望に向かって走っているんです。
なので、スラッグ渓谷で働いている親方達というのは、単に貧乏で可哀想な人達じゃないんですよ。全員、「豊かになりたかった人達」なんですね。
軍艦島で働いていた人達の平均所得は、現在の金額に換算して月給80万円というふうに言われているんですよ。つまり、スラッグ渓谷で働いている人達というのは、この5年か10年は、もう鉱石が取れなくなってしまって、貧乏なんですけど。その前は「もっともっと金持ちになってやる!」という欲望で集まってきた人達なんです。
だけど、宮﨑駿は「そんな部分はアニメの中では描きませんよ。でも、炭鉱に集まってきた人がそんな人だなんてことは、言わなくてもわかるでしょ?」と描いてくれない(笑)。
だからこそ、みんな貧乏なのに、銀も、錫さえも採れないのに、スラッグ渓谷を離れられないんです。だから、ストライキをしちゃうんですよ。かつて、バブルのような生活をしていたという記憶があるからこそ、あの渓谷を離れられない。決して、貧乏で可哀想な人達というだけじゃないんですね。
でも、それはラピュタの本題ではないから、宮崎駿はあえて描かないわけです。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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