岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/03/19
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/03/11配信「『ルパン三世 カリオストロの城』最後の解説(前編)」の内容をご紹介します。
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2018/03/11の内容一覧
- 今夜は『カリオストロの城』
- アバンタイトルは、「アニメーションの教科書」
- なぜルパンは札束を捨てたのか?
- 「ルパン三世」とはなにか?
- 東京ムービーの誕生
- 受け入れられなかった大人向けのアニメ
- 宮崎駿の転換と、近藤喜文の存在
- 『リトル・ニモ』という夢の顛末
- アニメ制作経験のない若者が集まった、テレコムというスタジオ
- 『オネアミスの翼』を手伝ってくれた伝説のテレコムスタッフ
- 最小の手間で実現された最高のオープニング
- 白いワンピースの女の子への思いやり
- メチャクチャすごい空のシーン
- 時間の経過を見せる
- ルパンと次元の関係を、セリフなしで表現
- 宮崎駿が本来描きたかったこと
- ブラカリ城「矛盾なく設定されている物語の舞台」
- カリオストロ城の裏側
- カリオストロ城のモデル
- 「1968年」の謎
- 「なぜルパンはニセ札を捨てたのか?」の謎が解けた
『リトル・ニモ』という夢の顛末
1978年に『未来少年コナン』が放送された後、宮崎駿はテレコムに移籍。『夢の国のリトル・ニモ』に参加。高畑と共に日本側の監督候補になって日米を往復。
その後に『カリオストロの城』公開になるんですね。
この1年間に何があったのか?
僕はこれを「歴史の歯車が動き出した」というふうに呼んでるんですけども、ついに、ハリウッドが宮崎駿という巨大な才能に気がついたというのが、この『夢の国のリトル・ニモ』事件なんですね。
実は、宮崎駿は「ルパンは第1シリーズでやり尽くした」というふうに言ってたくらいで、『ルパン三世 カリオストロの城』という映画の監督をするつもりはまったくなかったんですよ。それよりも『夢の国のリトル・ニモ』という、ハリウッドとの合作アニメの監督をする予定だったんですね。
この『ニモ』というのは、予算はなんと55億円、プロデューサーにはジョージ・ルーカス、脚本はレイ・ブラッドベリという、とんでもない作品だったんです。
さっき紹介した敏腕プロデューサーの藤岡さんは、『長くつ下のピッピ』の原作者にNOと言われた時から、もう次の作品というのを準備してたんです。
「日本でいくらアニメを作っても、日本の社会の中では、こんなに視聴率を取っているのに、全然評価されない。誰も金持ちになれない、これは間違っている! アメリカに行って、ハリウッドで成功しよう! ディズニーはちゃんと成功しているじゃないか!」ということで、ハリウッドに行こうとします。
まあ、こういう発想自体は、特別に珍しいものではありません。この時期、手塚治虫もタツノコプロも、あとは講談社の『AKIRA』にしても、みんな同じことを言ったんですよ。「ハリウッドに行って日本のアニメを認めさせてやる!」って。
ただ、歴史上、本当にハリウッドに行って、大豪邸を借りて、そこに住んで、アメリカ側のスタッフと何年間も交流して、実際にアニメ製作までこぎつけたのは、今の所、歴史上この藤岡豊という、茶色のサングラスの細い目の怪しいオッサン、ただ1人なんですよね。
その上、彼が取ってきた原作というのが『夢の国のリトル・ニモ』だったんですよ。
『夢の国のリトル・ニモ』というのは、ニューヨークに本社のあるヘラルド・トリビューン紙の日曜版に毎週掲載されていた漫画で、1ページのカラー漫画です。
(パネルを見せる。『リトル・ニモ』の1ページ)
一番上に細長く「Little Nemo in Slumberland(夢の国のリトル・ニモ)」と書いてあります。これがタイトルです。
どんな話かと言うと、毎回毎回、主人公のニモが不思議な夢を見るんです。
例えば、これは「ベッドに脚が生えて、それがどんどん伸びて、外に出るんですけど止まらずに脚は高くなっていき、ついにはビルを乗り越えて、長くなりすぎた脚がこんがらがっちゃって、最後はベッドから落ちて目が覚める」というお話。こんな単純な漫画なんですけども、メッチャクチャ人気があったんですね。
実は、「アメリカの漫画の歴史上、最も人気があった作品」と言われています。一話完結で、毎回毎回ラストシーンはニモがベッドから落ちて目覚めて「この不思議な世界はニモが見ていた夢なんです」っていうオチになるんですけども。まあ、とにかく、あらゆるバリエーションの話があって、「これがアニメ化されたら、ミッキーマウスよりもよっぽどヒットするだろう」と言われてたんですね。
この時の藤岡豊さんの活躍は、本当に神がかっていたんです。
何がすごいかって、この原作を取ってきただけではなく、技術スタッフとしてディズニーの『ファンタジア』とか『白雪姫』の時代のアニメーションを作った「ナイン・オールドメン(9人の老人)」と言われる名アニメーターの中からフランク・トーマスと、オリー・ジョンストンという2人を連れてきたんです。「9人の老人」とか聞くと「白雪姫か!」って思うんですけど(笑)。
次に、プロデューサーにジョージ・ルーカスを呼んできて、脚本をレイ・ブラッドベリに書かせて、おまけに日本側のスポンサーとして、サラ金のアコムを連れてきたんですね。このアコムが、事実上「金の蛇口」と化して、ナンボでも予算を出してくれたんです。
そして、「アメリカのアニメーション技術を教える」ということでナイン・オールドメンを出したアメリカに対して、日本側が用意した、実際にアニメーションを作るスタッフというのが、宮崎駿と高畑勲と、さっき紹介した近藤喜文たちだったんです。
そんな、「今考えたら本当にありえないような日本のクリエイターたちを全員ハリウッドに連れて行って、ナイン・オールドメンが彼らに向けて授業をする」という嘘のような話があったんです。
この時、藤岡さんは、アメリカ側に高畑・宮崎の実力を知らしめるために、ようやっと完成した『カリオストロの城』と『じゃりン子チエ』の字幕版をハリウッドに持って行って、現地のスタッフたちや、ハリウッドの業界人たち、映画作家たち、ついには、アニメーションに関心があるテレビのプロデューサーとかに向けて上映会を開き、見せて見せて見せまくったそうです。
その時のアメリカ側のパニックになり方がとにかくスゴかったそうなんですよ。
ナイン・オールドメンは、『カリオストロの城』を一目見て「これを作ったやつらに俺達が教えることが本当にあるのか?」と言ったくらいですし、そこで偶然にも『カリオストロの城』を見ることになったスティーブン・スピルバーグは、いまだに「俺がカーチェイスシーンを撮らないのは、『カリオストロの城』に勝てるはずがないからだ」と言っている。
後に、ピクサーを作って大映画監督になりプロデューサーにもなるジョン・ラセターも「ディズニーに入社してアニメーションを作りたい」と思っていた時に、この上映会に巻き込まれたそうです。そして、これを見た瞬間に「もう俺は宮崎駿の弟子になる!」というふうに決めてしまったそうです。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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