岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/08/24
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/07/22配信「戦後日本のおもちゃ産業と、『トランスフォーマー』の大出世!」の内容をご紹介します。
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2018/07/22の内容一覧
- 今日はトランスフォーマー学
- 『未来のミライ』、細田監督のやりたいことはわかるけど……
- 新しさが感じられない『エヴァ』予告編
- アメリカのおもちゃが最高だった時代
- 日本製品のイメージが最高になった理由の1つは、トランスフォーマー
- コールガールの人形から生まれた「バービー」がアメリカの玩具を変えた!
- バービーに刺激されて生まれた、男の子向けのGIジョーとキャプテンアクション
- 「リカちゃん」の大ヒットと「変身サイボーグ」
- オイルショックで大型フィギュアが作れない!
- ミクロマン誕生から、ケナーの『スター・ウォーズ』フィギュアまで
- 基地をベースに作られたフィギュア「ダイアクロン」
- 「トランスフォーマー」誕生までの歴史
- アメリカの子供の購買力をナメるな!
- プラザ合意がトランスフォーマーに与えた打撃
- トランスフォーマーがスピルバーグの手に渡った3つの理由
- 世界観にこだわったマーベル
- トランスフォーマーシリーズの生みの親、餘家英昭さん
オイルショックで大型フィギュアが作れない!
1973年に、ある事件が起こってしまいます。
何かというと、「第4次中東戦争」ですね。
(パネルを見せる)
はい、これが資料写真です。イスラエルに対して、エジプトやシリアなどのアラブ諸国が攻撃を開始して、第4次中東戦争が起こりました。
この戦争は「最新兵器の実験場」と言われ、当時のジェット機とか、ミサイルとか、もしくはミサイル戦車などの新型兵器がバンバン使われます。
これが、延々と今に至るまで中東の火種になっています。
この時に、石油輸出国機構OPECが、原油価格を段階的に4倍まで引き上げたんですね。4倍って、まあすごいです。
中東の石油価格っていうのは、それまでは「石油メジャー」と呼ばれるアメリカの石油会社の何社かが連合して決めていて、こいつらの支配力がすごく強かったんです。これに対して、中東の国々がアメリカの支配から脱出するために作ったのがOPECという組織なんですね。
しかし、そこには、アメリカのロビー活動が盛んに行われていた人工国家イスラエルというのが障害になっていました。このイスラエルという国は、他にも色々と、イギリスの変な約束とかがあって、もともと揉めに揉めてた場所なんですけども。まあ、ここと中東の国々が揉めていたんですね。
まあ、OPECというのは、アメリカの石油メジャーの支配をひっくり返すためにアラブ諸国が作った原油価格を調整する団体です。
さて、いきなり原油価格が4倍になったので、日本経済は大混乱しました。
この1973年には、デパートのエスカレーターは止まったし、TVの深夜番組も本当にいきなり11時過ぎくらいで、ガーッと終わっちゃうようになったんですよ。NHKなんかも終わっちゃうし、『11PM』とかも放送時間がすごく短くなりました。
他にも、「燃料を多く使う」という理由で、この時、JALは発注していたコンコルドをキャンセルしちゃったんですね。本当はJALは1970年代半ばか後半頃に超音速ジェット旅客機を使っての、東京-ニューヨーク線を就航させるはずだったんですけども。
あとは、「火力発電所から原子力発電所へ」というふうに日本の政治が大きく動いたのもこの時代なんですね。
日本の原子力発電所っていうのは、今のように、いっぱい作る予定ではなかったんですけども。この石油ショックのおかげで「いつ原油が供給されなくなるかわからない! もう、国策として原発をやるしかない!」と言われるようになったんです。
この当時の中曽根内閣とかが動いたというのもあるんですけども、原子力発電に国が大きく舵を取ったのも直接的な原因というのは、この第4次中東戦争とオイルショックと言われています。
玩具業界も、これによって大ショックを受けました。
この変身サイボーグって、ボディが透明なんですよ。これを作るための原料のプラスチックが、そもそも供給されなくなってきたんです。
原油価格が4倍に上がるということは、ただ単に「値段が高くなる」というだけではないんですね。そもそも日本に原油がこなくなるので、自由流通ではなくて「配給制度」に近くなっちゃったんです。
例えば「電力業界には優先して原油を振り分けます」とか、「重工業の石川島播磨とか新日鉄とか八幡製鐵所には原油をたくさん回します」とかするんですけども。出版業界は、まだ比較的マシではあったものの、急に少年サンデーとか少年マガジンのページ数が減ったりしたんですよ。
なぜ、原油価格が上がるとマンガ雑誌のページ数が減るのかというと、版下が作れないから、印刷が出来なくなるからなんですね。当時から、出版の版というのは光学的に作っていたんです。つまり、プラスチックで作った樹脂の上に光を当てて版を整形していた。
実は日本の出版社というのは、あらゆるものが石油で動いてるんです。これは「石油をエネルギーとして動いている」という意味ではなく、「石油資源で動いているものがすごく多かった」という意味ですね。
結果、マンガ雑誌のページ数も減らされることになりました。「出版社に対して割り当てられる原油は、これくらいです」というふうに、割合が決められちゃったからですね。
そんな中、透明なプラスチックで作られた変身サイボーグはというと……ここで、透明なプラスチックの概念図を説明します(笑)。
(パネルを見せる)
僕らはですね、「原油、原油」って言ってるんですけども。原油からは、アスファルト、重油、軽油、灯油、ガソリン、ナフサというものが作られます。
ナフサというのは、見た目はガソリンみたいなものなんですけど、こいつがプラスチックの材料になるんですよ。原油から6%くらい取れます。
このナフサというのから、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼンという物が作られて、さらにこのプロピレンからプラスチックの減量である、小さい粒のペレットというのが作られるんですよ。
プラスチックの中でも透明なものはアクリル成分によって作られます。普通のオモチャの原材料というのは、ポリプロピレンとか塩化ビニールなんですけど、アクリル成分の方がコストが高いんですね。
なので、透明な部品が手に入りにくくなってくるんです。繰り返しになりますが、「高くなる」んじゃないんですよ。「手に入りにくくなる」んです。
その結果、変身サイボーグというオモチャを作れなくなっていきました。特に、この変身サイボーグが持っているいろんなパーツとかも、すべて透明のアクリルみたいなもので作られていたので、どんどん生産しにくくなってきたんです。
石油ショックというのは、値段だけじゃなく、そもそも重要度が低い産業に、原油の素材が回されなくなるということが起きました。
「さあどうする?」ということで、タカラが考え出した方法が、「じゃあ、この変身サイボーグの身長を思い切って縮めてみよう」というもの。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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