岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/09/20
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今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
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今日はDMMオンラインサロン【岡田斗司夫ゼミ室通信】から、9/8公開 特別講義をお届けします。
死地に向かうハモンはなぜ微笑んだか?
マゼラ・トップの中のハモン、真正面のシーンです。
タチ中尉の作戦注意を思い出しています。
「第一波の攻撃を敵の最も弱いと思われるところにかけます。」
この部分ですね、矢印指してる所。
「他には一切目を向けずただ一点を抜く。我々の生還は不確実でありますが、間違いなく木馬を撃破することが出来ます。」
この「我々の生還は不確実でありますが」
これは、軍人の建前っぽい用語です。
“我々はほとんど生き残ることは出来ませんが、間違いなくホワイトベースを落とすことが出来る”という意味です。
そのタチ中尉の説明を思い出してるんですね。
これが思い出しているハモンの顔です。
ほんの少し目が開いて、口の歯が見えてるのがわかりますか?
タチの言葉を思い浮かべて、ほんの少しだけ眉が下がって、歯を見せている。もちろん笑っているという表現です。
ハモン自身も笑っていることを意識してないです。
意識していないほどの、かすかな微笑みです。
前回說明した通り、この話は、ガルマに対する「イセリナ、恋のあと」のイセリナの仇討ちと、一瞬、同じ構造のエピソードに思えます。好きな男が殺された、だから憎い仇を討ちに行く。
仇討ちだから、自分と一緒に死んでくれる男に対して、イセリナは一切笑顔を見せない。
最後の最後、アムロを追い詰め、ホワイトベースを追い詰めるまで、ずーっと気を張った表情で、一瞬の笑顔も見せないままに死んでいくんです。
もし、ハモンにとっても、これがランバ・ラルのための仇討ちだとしたら、本来、笑顔は見せないはずです。
でも、ハモンは笑ってます。
富野監督はハモンに。「イセリナ、恋のあと」で描いた女の顔と、全く違う女の顔をさせてるんです。
仇討ちではないとしたら、この戦いは何なのか。
なぜハモンは、自分でも気づかずにいつの間にか微笑んじゃってるのか。
ハモンは、「やがて訪れる自分の死」が待ち遠しくて仕方がないからです。
ハモンが求めているのは、仇討ちではなくて、実は心中なんですよ。
自分自身と、自分を愛してくれたランバ・ラル、あと可愛く思うアムロとの無理心中、これがハモンの願いなんですね。
だからこのシーンのハモンは、誰も見てないところでいやらしく微笑むんです。
「いやらしく」というのは言葉の本来の意味のエロスです。
(中略)
ハモンは自分自身、自分の生き方がそんなにいいと思ってなかった。
そんな自分でも一途に思ってくれるランバ・ラルがいて、そして自分自身は次のいい男としてアムロを見つけている。
そんな中、ランバ・ラルが死んでしまった。
じゃあ仇討ちするのか。つまりイセリナみたいに生きれるのかというと、もう私はそんな純粋な女じゃない。
だからといって、ランバ・ラルのことは忘れてまたジオンに帰ろうかとか、あるいは、あの坊やを寝取ってみようかというような、そんなアバズレでもない。
女神でもなくアバズレでもなくて私は1人の女なんです。だからこそ、ここで無理心中できる。
あの男の子と無理心中できて、しかもランバ・ラルの一途な思いをちゃんと私は受け止めることができる。
そのために、残っている全ての部下を死地に追いやるという女のエゴが描かれているとも言えます。
機動戦士ガンダム第21話『激闘は憎しみ深く』より。
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