岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/09/19
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/09/02配信「君はまだ「本当のトトロ」を知らない!『となりのトトロ』のダークサイドとは何か!?」の内容をご紹介します。
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2018/09/02の内容一覧
- 子供に教えてはいけない『となりのトトロ』
- ネコバスとは何者なのか?
- ススワタリとは何か?
- トトロの正体は?
- なぜトトロ族は滅んだのか?
- 『もののけ姫』、『となりのトトロ』、そして『風の谷のナウシカ』は繋がっている
- 『火垂るの墓』ショック
- 地獄の『AKIRA』制作現場に遊びに行く宮崎駿
- 『となりのトトロ』は完全なるアニメ
- なぜ宮崎駿は『火垂るの墓』にショックを受けたのか
- 本当にエロくて論争になった風呂シーン
- 『トトロ』の商業的成功から始まった宮崎駿の苦悩
ススワタリとは何か?
じゃあ、次。映画の中では「まっくろくろすけ」と呼ばれている「ススワタリ」とは何か?
この、ススワタリは、初登場の時点で、いきなりメイに殺されます。
(パネルを見せる)
ススワタリが1匹、気を失って落ちてくるのを見つけたメイが、パチンと手で叩いて、そのままお姉ちゃんのところに持っていって、パッと開いて見せると、ススだらけになった手の平があるだけで、何もいない。
メイはここで「あれ? 消えちゃった」とか言うんですけど、そうじゃないんです。あのススワタリは手の中で潰れてしまっただけなんですよね。
だけど、いきなりメイに殺されたにも関わらず、このシーンには「悲壮感」というものが全然ないんですよ。
このススワタリとは何なのか?
実は、ススワタリというのは「付喪神」(つくもがみ)なんですね。
付喪神というのは、人間が生活することによって生まれた「妖怪みたいなもの」です。
妖怪とはちょっと違うんですけど、茶碗や下駄が人に使われる中で「命のようなもの」が芽生えて、妖怪みたいになった存在です。
「命のようなものを持った妖怪みたいな存在」だから、やっぱり命じゃないし、妖怪でもないんですよね。
室町時代の文献として『付喪神記』というのがあるんですけど、その冒頭に「『陰陽雑記』という書物によれば~」という前置きのもと、こんなことが書いてあります。……ちなみに、この『陰陽雑記』という書物はもう残ってないんですよ(笑)。
「陰陽雑記という書物によれば、作られてから100年経った道具には魂が宿り、人の心を惑わす。これを付喪神と言う」と書かれています。
なんか、化け猫と似たような話になってきましたね。
付喪神というのは、妖怪のようで妖怪でない。これって、つまり「ウイルス」みたいなものだと思うんですよ。
(パネルを見せる)
これは、高校とかで習う「バクテリオファージ」の模式図です。電子顕微鏡で見ると、本当にこんな形をしているんですけども。
このウイルスというのは、生物のようで生物ではないんですよ。
形としては、20面体の頭があって、その中にDNAが入っている。そして、足みたいな部分で細胞に取り付いて、その中にDNAを送り込む。すると、その細胞が新たなバクテリオファージに変化する。そんな、ものすごく不思議な存在です。
ウイルスと細菌とは違うんです。細菌が生物であれば、ウイルスというのは、どちらかというと「機械」に近い存在なんです。
そして、付喪神というのも、これと同じなんじゃないかと思います。妖怪ではなく、「妖怪のウイルス」みたいなものですね。
付喪神というのは、下駄とか茶碗などといった文明の利器に取り憑いたバクテリオファージのようなもの。このススワタリも、単なるススに、ススワタリウイルスみたいなものがくっついたことによって、新たなススワタリとして増えていく。
ススワタリは、一斉に移動するんだけど、1つ1つの個体には、知性もなければ目的もない。そんな「ウイルスタイプ」の妖怪なので、メイに殺されても悲壮感がないんです。まあ「ウイルスだ」というのは、僕が勝手に言ってるだけなんですけども。
だけど、明らかに付喪神であるとは思います。
つまり、このススワタリというのは、宮崎駿流の付喪神であって、やっぱり、あらゆる妖怪を人格化して目的とか動機を与えてしまう水木妖怪に対する「そうじゃないだろ! 妖怪っていろいろあるだろ!」という回答なんじゃないかと思います。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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