岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/10/03
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/09/16配信「神になったサル『ホモ・デウス』は、何を目標に生きれば良いのか」の内容をご紹介します。
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2018/09/16の内容一覧
- 世界的ベストセラー『ホモ・デウス』
- 現代人はパンがないからお菓子を食べる
- 現代人はパンデミックを克服した
- 今さら戦争を始めても損なだけ
- 「夏休み」に入った人類は神を目指すことになる
- アメリカ軍が開発中の「集中力が増すヘルメット」
- 野生に生きるより家畜のほうが幸せ?
- ケンブリッジ宣言、動物には知性もあるし感情もある
- すべては「人間様からどう見えるか」に委ねられる
- 神になる人間と、無用となる人間
- 神になること」は本当に幸せなのか?
- 『ホモ・デウス』という本をどう受け止めるべきか?
現代人はパンデミックを克服した
『ホモ・デウス』上巻の第0章、次は、感染症と疫病の話。歴史上もっとも有名な疾病についての話です。
これは、ウィーンの「ペスト塔」というものです。
(パネルを見せる)
大理石と金属でできた、10数メートルもある立派な建物です。
こういったペスト塔って、ヨーロッパに行くと、結構、街のそこらへんに建っているんですよ。
僕も、最初に見た時は、これが何かよくわからなかったんですけど、要するに「ペストが終わってくれてありがとう」という塔なんですね。それも「戦って勝利した」ではなくて、「なんとか通り過ぎた! 良かった、良かった!」という記念塔なんです。
これは、1679年にウィーンで猛威を振るったペストの流行が終わたことを記念して、マリア・テレジアの祖父である当時の皇帝レオポルド一世が建てた塔です。
最初は木で作られたんですけど、あまりに嬉しかったので、14年掛かりで建て直して、93年にメチャクチャ立派な塔に生まれ変わりました。
さっきの飢餓の話を覚えてますか? 1693年というのは、フランスで大飢饉があった年です。つまり「ペストが終わって14年掛かりで塔を立ててたら、それと同時期に大飢饉が始まって、また人口の4割ぐらいが死んじゃった」ということなんですよ。
皮肉なことに、17世紀の末というのは、そういう時代でもあったわけですね。
(中略)
しかし、歴史上最悪のパンデミックというのは、実は20世紀に起きたんです。
それが第一次世界大戦です。フランス北部の「塹壕戦」では、世界中から物資が集まっていました。
(中略)
狭いフランス北部の塹壕の一部に、世界中からの物資がバーっと集中して、さらに、そこで使った空の容器や、それを運んだ人間が、またバーッと世界中に散っていく。
その結果、この塹壕で流行っていた悪性のインフルエンザ、通称「スペイン風邪」というのが、世界中にばらまかれることになったんです。
間の悪いことに、第一次世界大戦って、みんな「すぐ終わる」と思い込んでいたんですよ。ところが、そんな意に反して、ものすごく長期化したんですね。
(パネルを見せる)
これは「第一次世界大戦の戦場でクリスマスツリーを作っている」という写真なんですけど。
最初は、「第一次世界大戦は2週間で終わる」と言われてたんですよ。アメリカでも「早くしないと戦争が終わってしまう」ということで、志願兵がいっぱい集まったんですよね。というのも、2週間しかしない戦争だけど、とりあえず現地に着いちゃえば勲章を付けて帰れるし、あとは一生、英雄として暮らせるわけだからです。
なので、みんなこぞって参加したんですけど、蓋を開けてみると、これが半年掛かっても終わらない。そして、ついにクリスマスを迎えることになってしまいました。
で、そんな中で流行ったスペイン風邪だったんです。
僕は、ドイツの戦争博物館に行った時に、壁一面に引き延ばされた塹壕戦の写真を何枚も何枚も見たんです。
今言ったような話は、それ以前にも、もちろん知識としては知っていたんですよ。
ただ、実際に現場に行ったわけではないにせよ、巨大な壁と同じサイズに引き延ばしたこの写真を見ただけで、その恐ろしさに震えたんですね。
なんせ「第一次世界大戦というのは、世界で初めて写真や映像に撮られた戦争」ということもあって、朝もやの中とか、日の光の中とか、いろいろなシチュエーションのモノクロ写真が残っているんですけど。その映像とか写真で見る限り、本当に地平線まで、木がひたすら枯れているのが見えるんです。
木がひたすら枯れていて、その中に、掘られた細い塹壕が、どこまでもどこまでも続いている。そんな中、砲弾が雨あられのように落ちてくる。まさに地獄の風景なんですね。
この前まで豊かな森があったところが、地獄の戦場に変わってしまった。そんな光景がずっと続いているんです。
そこら中が穴だらけで、さらにそこに雨が降るので、すべての土地が湿地帯みたいになっているんですよ。そんなところにずっといるんだから、靴の中はとにかくビチョビチョで、伝染病になるしかないような場所だったんですよね。
そして、そんな戦場で流行ったスペイン風邪が、物資を通じて地球全体に配給されることになってしまいました。
今から、ちょうど100年前の出来事です。
この第一次世界大戦におけるスペイン風邪というのは、今からちょうど100年前の1918年の秋から世界各地で流行り始め、数か月のうちに地球人口の3分の1に伝染しました。
インドでは全人口の5%が死んで、タヒチでも15%の人が死にました。さっきも話した、砲弾や弾丸の先端に使うための銅を採取していたコンゴにも、この病気は流れていって、コンゴの銅山の労働者の5人に1人が死んでしまいました。
日本でも、全人口の4割が感染して、総人口の1割が死んでしまいました。これが100年前の出来事です。
このスペイン風邪は、たった1年で1億人を殺しました。これは当時の世界人口20億人の5%に相当します。
『アベンジャーズ・インフィニットウォー』というのをみなさん見ましたか? あの映画の中に、「宇宙の人口を半分殺す」という、究極の悪党「サノス」というキャラクターが出てきます。
こいつは、みんなが思いつくSF映画に出てくる一番悪いキャラクターなんですけども、スペイン風邪というのは、それとほとんど同規模のことを100年前に実際にやっているわけですね。
この100年前のとんでもない出来事を思うと、『アベンジャーズ・インフィニットウォー』は絵空事ではないなと思いました。地球人口の3分の1に伝染しましたからね。
ちなみに、「第一次世界大戦は歴史上最悪の戦争」と言われたんですけども、この戦争での死傷者は、5年間で4千万人です。
この数字は、スペイン風邪が1年間で殺した人数の半分にもなりません。
ところが、さっきの飢餓の話と同じように、その後の50年で感染症の発症率も、その影響も、劇的に減りました。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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